富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月二十六日(水)晴。市街某所にて伯剌西爾土耳古観戦。順当に伯剌西爾勝ち昨日の独逸勝利と×××し××していたため喜びも一入なり。太子の彌敦道は寶發餐廰にて鹹肉粽。あとは伯剌西爾優勝を期すだけながらつい韓国の三位決定戦、決勝戦も××にて伯剌西爾の勝利に××す。
文楽太夫竹本越路大夫死去。89歳。89年5月に東京国立劇場にて菅原伝授手習鑑の桜丸切腹の段の引退興行、仕事サボって見たことも懐かしき思い出。引退するのも惜しまれるほどの腹から渾身の義太夫語りはいまだに耳に残る。
▼韓国にてノート型パソコンと現金の窃盗容疑で身柄拘束された少年(16)に対して地裁が「深く反省しており、W杯で韓国代表を懸命に応援すると思われる」として、検察当局の逮捕状請求を却下。判事曰く「国全体がサッカーの熱気で満ち、ベスト4にまで進出しており、国民の和合という意味から逮捕状請求を却下した」と。美談(笑)。かりに「韓国なんて応援してたまるか!」とでも少年言えば少年刑務所送りだったのか。ついでにW杯恩赦で大統領の愚息たちも放免?。大統領といえば金大中氏といえば生死を賭けて韓国民主化のため闘った人物、それがいざ権力の座に坐れば汚職に紛れ政治権力とはまさに麻薬のようなもの。大麻解禁して政治を非合法化するとか……あ、政治はもっと汚濁するだけか(笑)。
横浜市議会にて本会議場での日の丸掲揚に反対して議長席などを占拠した会派「市民の党」の市議二名を「除名」可決し両市議は議員の資格を失った。市民団体と共産党が「市民の負託を受けた議員の身分を奪う除名には同意できない」と反対したが市議会の懲罰特別委員会が「除名は妥当」との結論。議長席占拠などの「暴挙」を理由にしているが所詮は非国民議員の排除。国旗を掲げたいオトーサンたちの気持ちもわかるが(悲しきサガ)日の丸に反対する市民もいるのが自然。ただ思想信条の合わぬ者を排除しては社会は不健全になるばかり。
▼昨日の朝日にて加藤周一夕陽妄語』にて曰く。30年代の日本にて他人を罵る言葉として「それでもオマエは日本人か」が流行ったこと。宋左近(詩人)が語るに依れば宋が召集令状受けその歓送会にて故・白井健三郎(当時海軍軍令部に勤務)が友人に「君、それでも日本人か」と言われ白井は「いや、まず人間だよ」と答えた、と。非国民扱いに屈せぬこの白井の態度に加藤は感銘を受ける。この「それでもオマエは日本人か」という翼賛体制が生んだ戦争の悲劇であり、その反省にたって戦後、日本国憲法が誕生したのであり「まず人間だよ」という発想があってこそ憲法が活かされ人権が尊重され日本が平和と民主主義の道を歩む、と加藤。加藤周一ほどの碩学が今このやうな些か青臭いヒューマニズムを語らねばならぬほど加藤にしてみれば日本は危うい。W杯も日本を応援しなければ「それでもオマエは日本人か」となりかねず、横浜の市議も「それでもオマエは日本人か」となる。しかし、である、「それでもオマエは日本人か」などと問ふ輩に「まず人間です」などと答えても所詮土俵違い、むしろ「それでもオマエは日本人か」「そうどぅぇ〜すぅ!」とでも答え相手を更に逆鱗モードにするほうが一興か。もしくは「是的、我也是日本人!」とでも。