富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十八日(火)曇。昼まえ電話で相手に「午後はどうされてます?」と尋ねられ打合せでもしたいのかと思いスケジュールは開いていると照会すると「いや、そうじゃなくて、観戦するのか、って思いまして」と(笑)。もうW杯しかないのか。W杯の日本対土耳古戦が始る一時間ほど前から世の中が静まり返っている。電話もかかってこない、メールも来ない。1945年の8月15日、陛下の玉音放送を聞き終わって野原に出て時もこんな静けさ、か。明日逮捕されるムネオもこの対土耳古戦を見ているのだろうか、と思う。日本負ける。これで韓国が勝てば日本は韓国の応援へと向かうわけで、こうなれば歴史的なことだ。これで日韓に友好が生まれればよし。夕方昨日に引き続き芸術中心にて台湾映画祭林正盛監督の特集で『美麗在唱歌』を看る。映画館の切符売場の小さなブースで働く二人の偶然美麗と同じ名前の少女二人。この二人は日がな一日この隔絶されたブースの中から外界を眺めつつ男の話題などしているが生理や失恋の話を通して二人はお互いを愛しく思うようになる。たった二日のことなのだがこの映画館の切符売場のブースなんてそういう世界を設けるだけでこの林監督の凄さ。そしてこの二人は同衾するのだが一人の少女はあくまでこの愛を通過儀礼のように早朝自宅に戻りかつて夫に捨てられ姑に買春宿に売られたという辛い過去をもつ祖母、死を豊かに迎えようとしている、を看取ることから人生の素晴らしさを感じているが、この少女を愛して忘れ去ることのできないもう一人の美麗は去っていった美麗にもう一度会いたくてこの少女と老婆の住む家へと向っていく、というところで映画は終わる。地味だが設定がきちんとした作品。昨日の十名ほどの客に比べかなり盛況で驚かされたが台湾のレズ映画といえばそれまでで女同志少なからず。佐敦の彌敦粥麺家にて熟客と店員がサッカー談義。日本がまさか前半にあそこで得点を許すとは思わず、と。前半は0-0で後半日本が1得点といふ賭け方をしていたらしき某男無念そう。「チャンスをつくったし攻撃はよかった。でも負けたのは何かが足りないということでしょう。いい経験をした」と中田(英)。何かが足りない、って攻撃は良かった「でも」なら……防御、ってこと?。中田サイトは「このホームページ上のすべての文章の無断転載・引用は一切お断りいたします。以後、無断転載・引用があった場合、中田英寿本人のメール掲載を中止しなければなりません」と引用すら赦されないほどなのだが(宮内庁より厳しいぞ!)、中田日記、文章が本人のクールさに比べ文章は稚ひながらやはり凄い選手である。日本の勝利よりも日韓の決勝トーナメント進出を喜び伊太利の出場チャンスの乏しいDELPIEROが決勝ゴールを決めたことを喜び「監督トルシエが早くも動いた」と(あっ、引用してしまった……笑)この監督をまるで手下の如く見据えた表現、やはり偉大だ、中田先生。次回のメールは18日だそうである。明日か、期待。韓国が伊太利に逆転勝利。マンションの階上の韓国人K氏のところで絶叫あり。先日エレベータで一緒になり韓国がまだ決勝トーナメント進出確定せぬ時期にてK氏に「日本は凄いが韓国はダメだ」と落胆されたが、勝負というのはわかならないものだ。K氏宅に赴き祝賀を述べる。K氏は韓国の礼節か自らの大騒ぎがきっと日本敗れ落胆しているであろう私に障ったかと思ったようで「うるさくして申し訳ない」だの「地元の利で審判の裁定など韓国に有利だったことは否定できず。伊太利に実力で勝ったとはいい難い」などと。いいじゃない、勝ったんだから、おめでとう。応援するよ。朝日新聞には日本惜敗のあと静寂の後「ありがとうニッポン」コール、と。記事からは「ありがとうニッポン」なるコールが実際にあったのかどうか不明ながらいずれにしても横浜市の会社員森岡巨博さん(28)の「ああ、終わってしまった」とかさいたま市南中丸無職橋本純さん(25)の「ずっと一緒だった日本。終わってしまったことが寂しい」とか神奈川県綾瀬市の公務員小坂仁さん(25)も「いい時間を過ごさせてもらった。満足しています」と言うが、「いい夢、見させてもらった」などと浄めてはならぬ。楽しいこと、嬉しいことは夢などと潔く祓ってしまってはいけない。いい夢を現実にするべし。伊太利だってセネガルだって毎日楽しんでいるのだ。あー楽しかった、また厳しい現実、とせぬこと。余暇などもうけるな。現実が楽しいことが一番なのだ。楽しくなければ改革すればいい。余暇で改革に向うべきエネルギーを発散させてしまふこと(ガス抜き)は19世紀英国にてブライトンが観光地化されロンドンから週末庶民がブライトンに向うことになって以来の資本主義によるレジャー政策の悪しき<システム>なり。それにしても伊太利まで撤退してこれでますますブラジルだ、イングランドとの次戦が天王山だ。英国の某ブックメーカーイングランドvsブラジルはイングランド3.0倍、ブラジル2.25倍とブラジルが有利。優勝はW杯開催以前に7.0倍で四位だったブラジルが3.4倍、西班牙4.0倍、英国4.33倍、独逸4.5倍。ブラジル頑張れ! もしかするとブラジルは本当に勝つかも。××が××だ(凄い)。W杯興味ないと斜に構えつつなんだかんだいってW杯のネタばかり(笑)。
▼築地のH君よりみすず書房よりサイード『戦争とプロパガンタ2』が発売と知らされる。『戦争とプロパガンダ』が予想以上の反響だったのか(二月二十六日の日剩参照)。1,200円という最近では廉価に属する価格設定がいかにも網上で読めるものを活字にして出したことへの気の咎め?、1,980円だったら「ばかやろう、ネットで全部読めるんだぞ」とお叱りがある(笑)。いずれにしてもサイードは日本で読まれるべき。サイードは昨日発行されたAl-Ahramでも熱い。イスラエルパレスチナ交渉というとオスロ合意が挙げられオスロ合意が理想的な共存の道のように思われているが、サイード曰く「オスロに返ってはいけない」と。オスロ合意は成果のようでいてそれはイスラエル側の譲歩だけに依存した暫定的共存であり、問題はそれに守られて存続し得るアラファトパレスチナ自治政府が実は張り子の虎であること。それじゃ全く意味がない、というのがサイードの視点。フランス革命であるとか南アフリカの改革を見ればわかることで最も大切なことはパレスチナ人自身の名での合意による唯一の、根本的な正当性が必要なわけで、これを確立するためにアラファトや欧米諸国、アラブが何か手を貸すのを待つ必要も意味もなく、必要なことはそれの確立のためパレスチナ人が真摯にパレスチナ人の自治社会を建設すること。周囲がお膳立てしてパレスチナに暫定自治が生まれても意味はない。実際のパレスチナ社会がない脆い状況では状況だからこそ世界がイスラエルを支援しパレスチナは窮地に追い込まれるのであり、パレスチナ人がみずから社会を組織しイスラエルや他の諸国に立ち向かえるだけの精神性がないと(フランス革命南アフリカでの自由や平等といった信念に値するもの)到底パレスチナは存続できない。政治があり経済があり学問があり文化があり、そういった全ての総体としてのパレスチナ社会を建設するために労働者、教師、農民、弁護士や医者、そして全てのNGOがこの改革に取り組むべき、というのがサイードの主張。
ネッスルがアイスクルーム大手のDreyer'sを買収。高級アイスといえばDreyer'sかHaagen Dazだが実はHaagen Dazもネッスル傘下であり高級アイスはもはやネッスルの独占となりぬ。ちなみに星克巴珈琲もネッスル系列なわけで「あーん、どうしよう、スタバで珈琲?それともハーゲンダッツにするぅ?」なんて悩んでるギャルもしくはオネエがいても実はネッスルの掌上にて弄ばれているが如し。