富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十九日(水)久々の競馬なき水曜日。香港大図書館にて台湾総督府熱帯産業調査会編『明治初年に於ける香港日本人』(昭和12年刊)を複写。一冊丸々複写のため国会図書館のように複写業務を請け負うかと思えばさういった提供はなく司書は寧ろこの貴重なる書籍が開架になっていたことに驚き痛みもひどく製本の上閉架資料とするべきだろうと判断(その通りだ)するが複写は認めるので自分でと言われる。この本は戦前の香港国民学校から香港市民図書館に寄贈されそれが戦後香港大図書館に移贈されたもの。大学の複写機もOctopus Cardが使え便利。香港大博物館急ぎ足にて参観。芸術中心にて台湾映画祭『白棉花』(監督・季幼喬/2001)。季幼喬の監督第一作は50年代の大躍進時代の大陸、陝西省か何処かの棉花工場を舞台にウブな青年(蘇有朋)を主人公にその青年が恋い焦がれる姉貴分(寧静)などとの単調ながら過酷な紡績工場での日々の中での葛藤を描く。この時代なのに「毛主席万歳」と壁面に書かれているのは間違ってないか?。画面にはずっと白い棉花が山のように積まれ、この若者たちの暮らしは棉花を運び紡績し恋人との逢引も山と積まれた棉花の中、この白い白い世界が対比されるのが『紅高梁』(赤いコーリャン)だが映画終わって資料を見れば原作は『紅高梁』と同じ莫言と知りさもありなむと思う。蘇有朋演じる無垢な青年を暗示する白い棉花といふわけか。Z嬢来て続けて林正盛監督『放浪』視る。李康生が主演、雨の台北、安ホテル……それだけで蔡明亮監督の世界だが林正盛。軍役を終わって帰郷する弟の帰りを楽しみに待つ姉、だが執拗に姉を避ける青年は父親からカネを盗み安宿で売春婦相手の日々。姉を避けるのは自分が11歳のときに姉と同衾せし過去あり理想的な姉からの乖離を試みるのだが、仕事もせずサクスホーンでバンドマンとして生計を立てようとしつつも無職のまま、売春婦だった彼女との結婚まで決意するのだが、この彼女は偶然にも姉の携帯電話を拾っており(軍役を終わる弟を迎えに行こうとした時になくした携帯)、姉は行方不明の弟からの連絡を待つため携帯の番号を失効させずこの売春婦と電話を返せ返さぬと通話を続けるうちにお互いを語るようになり(これは昨日の『美麗在唱歌』の少女二人と似ている)、姉は弟の彼女がその売春婦だったことを知り、そこまでして弟が自分から逃げようとしていたことを知り家を離れる。とそれだけでもストーリーに複線多くややっこしいのだが、これに更にこの姉と別居している夫、その夫はこの姉弟の父親が営む道教の廟で老父の舎弟でもある。最後は青年は自分の彼女と姉が携帯で語りあっていたことを知り呪縛から逃げられぬ現実を知り、失踪した姉を老父と別居中の夫が探しに行くところで終わるのだが、結論のない映画。それはそれでいいが。終わってZ嬢と灣仔の北京餃子皇。かつて香港でかなり美味いと思ったが中環の餃子縁などに比べるとイマイチか。真剣な北方餃子屋でもなくそのへんの茶餐廰でもなく中途半端。