富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十三日(木)曇。昨未明のナンシー関嬢の急逝あらためて『噂の真相』の「顔面至上主義」を読む。何度読んでも見事な筆致。三井ゆりといふ「終わっている」はずの事象をここまで書ける書き手が他にいようか。ナンシー嬢の遺言として私たらちは野口五郎三井ゆりの愛児をワールドカップベイビーと呼ばねばなるまひ。あらためてナンシー関に哀悼。
▼昨日書いた冷房の話の続き。偶然『信報』で知るが今年は冷房ができて丁度百年。百年の昔に紐育はブルックリンの印刷工場にて毎年夏になると紙が反り湿気にて膨張せし印刷効果に甚だ悪影響与えたり。この印刷工場或るBuffalo Forgeの機械会社に救いを求めればこれがWillis Carrierなる工程師に任されCarrier電気にて温度を下げた水管の間に空気を通し冷気を送る装置を発明す。印刷会社これを採用しCarrier氏この特許とり1906年に会社興せば最初の客はチョコレート工場、紡績、百貨店にて氷室、冷凍倉庫などに広がる。これが昨年の総売り上げ80億米ドルにも上る今日のCarrierブランドの冷房機となるがCarrier氏エジソンの如く発明を称えられもせずノーベル賞を授けられるでもなく1953年に逝去し今日の隆盛を知らず。同じような発明にOtis氏の昇降機もあり。思えば冷房機なければ夏は蒸そうが地球温暖化もなく昇降機なければ911のテロもなし、か。
▼中国各地で大雨による河川氾濫あり二百人死亡。単なる自然災害か。無理なダム造設並びに浚渫の影響はあるまひか。治水は時の権力にとり治世の大きな事業であることは古今東西同じ、中国の三峡ダムが実利よりも揚子江を堰止めるといふ象徴性において1955年に建国間もなき共産政府が古来からの夢であった揚子江に初めて架橋(武漢長江大橋)して以来半世紀を経てまさに国威発揚、それに日本資本が便乗しての神をも恐れぬ愚行。二十年ほど前に広州から北京に向かう列車にてちょうど英国人T君と食堂車にて夕暮れを楽しみつつビールで乾杯していると列車はこの橋を渡り長江上流に沈む夕陽とあたりいちめん紅く染め上がった景色に酔いしれ数年前西安より広州に向かう列車が長江増水を武漢にて足止めくらいこの河の大きさと怖さをまざまざと見せつけられ、この河を弄ぶことの愚劣さを思ふ。あらためて田中康夫長野県知事の「脱ダム宣言」を読まんとサイト見るに知事動静にて昨12日首相官邸にて政府主催「武力攻撃事態対処法案等に関する意見交換会」 に出席とあり康夫ちゃんがこれにて何か進言ありやなしやと期待。それにしても有事立法と略されるこの法案、911以降武力攻撃なるものはミサイルが飛んでくるに非ず本来攻撃手段ではなきものが攻撃武器となる時代になんともはや時代錯誤の陳腐なる法案にて呆れるばかり。
▼昨日訃報に接した新宿の「おかあさん」について築地のH君より今年のパレードは見に行かないと、と。「おかあさん」追悼できっと今年は「おかあさん」を形どった巨大な「ねぶた」のような山車が出るのかと思ふ。サイトみて知ったが山車じゃなくて「フロート」というのですね、ステキ�