富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十日(月)雨。風湿といふ病あり。ここ数日の低気圧は屡々大雨となるもののどんよりと雲立ち込め然れど気温は今ひとつ上らずじんわりと汗をかくこの時期体内の生理悪しく血液循環せず息苦しく肩凝り頭痛不快感甚だし。終日気分悪く夕方風呂に赴き垢擦、按摩。ふと思ふは荷風先生脚気だの微熱だのと中洲医院までよく通われたこと斷腸亭日剩に綴られるが懸命に西医の診断受け投薬されるがあれは明かに風湿と察す。漢文に暁達せし荷風先生も漢方には感興なし。この風湿は自らの身体の症状にて理解できるが余も未だに「熱気(いーへい)」は判らず。天麩羅を食べると熱気がたまるといわれると何となく理解できた気がしつつも同じく茘枝にても熱気がたまるといわれ茘枝などさっぱりとした夏の果物にて熱気を取るやうな印象にてさっぱり判らず。ちなみに幸福薬局は恵比寿にある日本の中医碩学・幸井俊高医師の主宰。
▼モスクワでは対日本戦に敗れたことに興奮した市民が暴れチャイコフスキー国際コンクールを見に来ていた日本人の大学生五名が暴行を受け日本料理屋ギンノタキが襲撃される。ギンノタキは養老の滝の如き居酒屋だそうだがモスクワにあって銀の滝とは中々凝った名にて感心す。日本では昨晩は日本の勝利にかなりの人々が繁華街に繰り出したそうだがロシアに勝って皇居に提灯行列しなかっただけでもまだマシか。先の中国対ブラジル戦にて福建省福州市では屋外大型スクリーンにて中継のところ混乱を恐れた市当局が中継を見合わせそれに反発した観衆数万人が市内で器物破損など。政経的には抑圧された環境にあっても我慢できるものが「サッカーに負けた」「サッカーが見れない」というような一見たわいなき不満にて巨大な権力に対してなんの恐れもなく抵抗を見せる、キョービの不思議なる社会。
▼カシミルに絡む印パ対立に関し朝日新聞にて「米英に監視を委ねよ」なる社説の見出しに目を疑ひたり。「それにしてもインドはいつまで2国間交渉にこだわるのか」「カシミール問題は国際的な仲介を拒むことで解決の展望が開けるとでも言うのか」と印度を非難するが、それが何故に「米英に」監視を委ねよといふ結論に達するのか朝日の見識を疑わざるを得ず。米国主導のグローバリズムに於てイスラムはすでに悪となりこの覇権を阻害する次なる覇権は印度なら印度が屈せば次は中国か。余は印度、中国を支持せずとも安易にグローバリズムにて印度を敵視することには賛同せず。このやうなリベラルを標榜しつつ脇が甘き朝日の姿勢が保守反動、右翼の諸君に揶揄されるものの元凶なり。主張も粗雑なら「2国間」などという算用数字の使ひ方も不快極まりなし。そこまでするのなら「これまでも国連や第3国の関与を1貫して拒否してきた」とでもしては如何か。呆れてモノも言えず(言ってるか……)。