富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月十八日(土)曇。朝百年ぶりに寶雲道10km走る。寶雲道に向う途中舊山頂道を渡ればQueen's Garden前に此処に居住せし芸人・謝霆鋒君の出入りをパパラッチしやうと構える蘋果日報の蝿記者。謝霆鋒君は交通事故の偽証並びに警察への贈収賄でICACに留置取調べを受けし容疑者にてマスコミに追われても致し方なき立場か。寶雲道にて軍、警察の類にしては筋骨隆々とはいへぬが精悍といえば精悍なる若者男女走っており何かと思えばICACの制服部隊の持久走訓練。さういへば今朝の蘋果日報にもICACが警察の前O記(マル暴)にて現・麻薬取締部の高級司警(警視といつたところか)が暴力団による売淫取締りに際し捜査情報を暴力団に流し見返りとして無償にて妓女の提供を受けていたことでこの高級司警をICACが逮捕と一面記事。この司警、警察内部ではエリートにて将来が期待されていたが最近の人事移動では上級職への昇進が滞り本人もかなり荒れていたといふがこれも警察内部でこの暴力団との癒着がすでに露見されていた結果か。日本にICACあれば神奈川県警など壊滅か。ランニングから戻りエレベータに乗ると本日よりマンションの游泳池開業との告知あり早速小雨の中泳ぐ。これで自転車乗れば一人トライアスロンかとおもふ。昼に中環卑利街・陳成記にて牛南伊麺。何度食しても極めて美味。日清食品カップヌードルが目指している味と歯応えはこれなのだろう、と勝手に想像す。午後BodypumpとBodycombat。途中小一時間あり星巴珈琲にてエドワード=サイード先生のAl-Ahramに書かれた論説を読む。イスラエルパレスチナ占拠は言語道断ながらサイード先生が強調するのは、パレスチナ人が具体的な人間として世界に写らず、ただテロ、暴力、悪魔と狂信がパレスチナ人の印象となっているなかで、パレスチナが蹂躙され続ける中での立ち後れは教育と憲政であり前者はパレスチナの知識性を断ちアラファトに象徴される独立戦線は対イスラエルという前提があってのみ存在し得る組織でしかなくパレスチナが国際社会で確固たる地位を占めるための憲政の確立が急務であること。納得。小腹空きDes Vouex Rdのフィリピン料理屋Joyce & Diana Restaurant(いかにもマニラの響きの店の名……笑)が店頭にて売る牛肉ソテー串立ち食い。横丁のセブンイレブンにて缶麦酒購えばよし。このソテー、肉もいいがたぶんオニオンのソースが格別にて、これを食しては菜食主義者などに間違ってもなれず。先日古いRolexのガラス面を傷つけてしまい閣麟街の骨董時計屋・古雅集にて硝子研摩してもらふ。主人曰く熊川哲也張國榮がコンサートに客演のおり古雅集を訪れた、と写真見せられる。Z嬢とWellington Stの蓮香樓にて晩飯。梅子蒸肉排、鶏蛋局魚腸。夜七時前といふのに満席。古い茶樓であるが故に店内に掛けられた絵、書の類どれも見事にて「浩歌不覺乾坤小酣飲方知日月長」なる書はことに余の好み。此処では給仕が今度は「酒井法子(じゃうじんふぉーじ)も来たし江口洋介(じゃんはうよんがい)も来た」と自慢気。そう、この店は業界関係者も多い。給仕かたことの日本語も解すらしく誇らしげに隣席の夫婦に日本語で「おはよう」「ありがと」だとと言いながら「なにせ日本人は英語もわからないんだからこっちが日本語を話すしかない」と。大して学もなき給仕にかう言われては……。帰宅してサリンジャー「大工たちよ、屋根の梁を高く上げよ」読む。▼朝日新聞文化欄にネグリ&ハート『帝国』について邦訳出版前から社会科学書としては異例の関心を集めている、と記事あり。すでに原本出版から二年が過ぎ遅きに達した感あれど読まれるべき書。昨年春だかにこの"Empire"を入手した当時は検索かけても日本では翻訳作業に入っていた東外大の浜邦彦氏のサイトくらいしか『帝国』は見当たらず浜氏にメールしたところ遅々として翻訳が進まぬ状況をお知らせいただいたが今日検索してみればGoogleにて百件を越すヒットにてこの著作への注目度高まったことを知る。邦訳は『帝国』七月に以文社より刊行予定だそうな。