富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月二十六日(火)晴。サイードの論評が掲載されたエジプトのアラブ向け英語新聞Al-Ahramのサイトからみすず書房から出版去れた『戦争とプロパガンダ』一読。原本と12月以降の論評をダウンロードする。これは必読。アラブという語で留意すべきことはアラブとはモスリムだけはなく基督教徒もユダヤ教徒も含むこと。19世紀末のシオニズム高揚の前にこの地にいた者はすべてアラブなのである。重要な文献ながら邦訳には急場で訳した所為もあろうが意味不明な箇所少なからず。「私たちは、『文明の衝突』と呼ばれる図式へと人々を分類する想像上の境界線から身を引き、そのような[分類の]『ラベル』について再検討を加えなければならない。利用できる資源は限られていることをもう一度よく考え、たがいに運命をなんとか分かちあうよう決意しなければいけない」と原文ではWe need to step back from the imaginary thresholds that supposedly separate people from each other into supposedly clashing civilisation and re-examine the labels, reconsider the limited resources available, decide somehow to share our fates with each other as in fact cultures mostly have done, despite the belicose cries and creeds. とあり、これは「我々は架空の『文明の衝突』(のステージ)にそれぞれ(つまり今まで住んできたアラブと欧米という社会)から架空の話なのだが隔離されてきており、その現実にはありもしない境界線から立ち戻る必要があり、そしてそのレッテルを再検し、手元にある限られたソースを再考し、我々の運命をなんとか分かちあえるよう考えなければいけない……とでもしては如何か。サイードがsupposedlyを二度使いimaginary thresholdsといって強調する点は留意すべき。またブッシュ君の不用意な発言であるテロリストへのFolks, who are now, wanted deal or aliveのfolksも日本語には甚だ訳しにくい言葉だが「皆さん」ではあるまひ(笑)、あれは「てめーら」という気持ちをこめた上での揶揄としての「親しき友たち」。そう最も重要なことはPatriotism can also led to intolerance, hate crimes and all sorts of unpleasant collective passion. 「愛国心は、不寛容、(特定集団への)憎悪に基づく犯罪、その他ありとあらゆる不快な集団的熱狂へとつながる可能性がある」と。その通り。これが最も深刻な問題。「集団的な熱狂を煽りたてるために戦闘的な声明を発することがいかにお手軽なやり方か」という表現でふと東京都知事石原某の顔を思いだす。同じ戦闘的な声明でも集団的な熱狂を煽るどころか個々に自らの考察を促す長野県知事とは大きく異なること。ふと思えば、まさに現状はアブドーラ・ザ・ブッチャーという黒いムスリムザ・シークという砂漠の悪役がいてそれにテキサス・ブロンコの正義感ファンク兄弟がそれに挑むという、昭和52年世界オープンタッグ選手権試合で全日本プロレスジャイアント馬場が演出した世界、それを現実にしているということ。その陳腐なシナリオがまさか今現実にこの世界で実現しているとおもふとなんとバカバカしいことか。ましてやそのテリー・ファンクの役をしているのが合州国大統領だと思うと唖然とするばかり。イスラエル国内にも冷静な見方はあり今日の朝日でエルサレムから川上特派員の文章にて「パレスチナ占領は国防とは無関係と西岸及びガザでの軍務拒否をする運動」が広まり当初50名だった賛同兵士が280名を越え、それが法律違反でありながら公然とマスコミでそれが報じられるという現実もあり。▼シンガポール皇帝季光燿の執拗なイスラム警戒発言にインドネシアで反季感情高揚。マレーからの分離独立は華人国家建設とイスラムの呪縛からの乖離が目的だったわけで季に強きイスラム嫌悪感があるのは当然としてもイスラムに囲まれたシンガポールとして発言は唖然。▼香港特別行政区行政長官選挙は董建華の「独奏」で終わるにしてもまだ公示期間でありながらATVにて董建華インタビュー番組が昨晩から二晩放映となる。これは通常の感覚では現職首長の職権乱用と選挙違反であるが所詮茶番選挙のため一切さういふことは問題にもならず。▼鈴木宗男君国会での証人喚問に自民党も応じる構えをみせ鈴木君追放か。そうなるとついに松山千春念願叶い鈴木宗男の地盤を受け継ぎ出馬(笑)。鈴木宗男以上に始末におえない千春病院に千春国道、千春学校に北方四島への千春トンネル開通か……。