富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月二十五日(月)晴。夕方某銀行主催の経済講演会Conrad Hotelにてあり拝聴す。終わって同席のH氏とIsland Shagri-la hotelのLobster Bar、ドライマティーニ飲みロブスターのタルタルソース合え胡瓜サラダ添え食す。さすがにこれだけじゃ腹がもたないと灣仔の榮華麺家まで歩きませうかといふことになつたが歩きだしてふと昨年だか香港観光協会だか旅游局だかの香港美食之最だかの一つに選ばれたのが利東街の五龍なる店の雲呑麺にてそれが先週だか邦字週刊紙でもあらためて紹介されておりそういえば私もH氏も行ったことがないという話になりこの店まで歩く強いていえばかなりの手際よさで雲呑麺を供すため麺のシコだけは最初いいのだが麺じたい榮華であるとか麥文記といったコダワリの麺でもなし、出汁もふつうの茶餐廰の「あの」味、雲呑も茶餐廰っぽく味つけ強し。困ったことに雲呑麺二つと注文したのにあれを食えこれは要らぬかと執拗く、だいたい夜も吹けて二更に灣仔の横丁の茶餐廰に現れた赤ら顔の客二人がそこまでたらふく喰うかどうかわからぬものか。なぜここが香港美食之最なのかさっぱりわからず。だいたい夜も営業している麺屋というのは客も残業で腹を空かせた客からタクシー運転手、飲んだ客まで客層もさまざま、敢えて押し売りはしないものである。広尾は明治通りの丸富だってオヤジはラーメンを茹でるだけで客は飲みたければ勝手に朝日の黒ラベルを冷蔵庫から出して飲んでいたものだった……それにしてもあの当時はよくも飲んだあとにあんな脂っこいラーメンが食べれたものだ。みすず書房がサイードの9・11以降の新聞での論評、インターネットで公開された手記などをまとめて緊急出版したものだが(『戦争とプロパガンダ』中野真紀子・早尾貴紀訳、みすず書房)適切な出版とはいえ本人が多くの人々に読まれることを願って敢えてインターネットというメディアで汎く公開した文書を1,500円なる新刊書として発売することは如何なものか、それもみすず書房ではかなり読者がかぎられるわけで、せめてこれはみすず書房がインターネット上ででも邦訳を公開し汎く頒布されることを意図するべきではなかろうか……とこの本を入手してさうおもふ。しかもこの本にまとめられたのはアラブ世界にむけて英語で発行されているAl-Ahram Weeklyからの抜粋にてGurdian紙に掲載され大江健三郎君が紹介した核心のIslam and West are inadequate bannersが漏れていることは惜しい事。これがもっとも平易にサイードの主張がまとめられているもののはず。▼日記を書いていたら突然80年代中葉からのインディーズのことを思いだし、なぜ有頂天のケラの顔が浮んだのかわからないが記憶はふと、そうそうあのバンド、新宿のロフトで……と数十秒悩んで、そうカステラというバンドだということを思いだす。ネットで検索したらカステラのリーダー君がトモフスキーという名前でいまも現役でライブしていることを知る。