富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月七日(木)曇。昼にHappy Valleyは景光街の正斗、10年近く前にこの筋向いの階上に住みし頃は満粥と云ふ、A氏とH氏と湯通しした豚レバー、牛南筋と滑蛋仁蝦飯食す。粥屋だが食材良し。母より久しぶりに電話あり三月の歌舞伎座富十郎の文屋が掛かりこれが見たいねぇと話したが十六夜清心は役者の名を聞くまでもなく松島屋と大和屋しかないのか、それが当代一であってもちょっと看板役者が足りやせぬか、高麗屋が昼は一本刀土俵入に夜は俊寛と張切る。一本刀個人的には好かぬ芝居だが母も茂兵衛といえば勘三郎の芝居が目に浮ぶというので余も当代ではやはり中村屋か、俊寛中村屋播磨屋でしょうに。高麗屋はミュージカル役者。中上健次を昨晩『臥龍山』読み続けて『化粧』などいくつか習作か秀作かいくつか読む。まだ中上健次のエネルギーが大きな流れとなって吹きだす以前の悶々とした世界。▼腐っても鯛という言い方あれど腐っては食えぬ朝日新聞の文化欄「思潮21」にて経済学者の岩井克人君が岩波文庫にて復刊された『南海千夜一夜物語』に収録されし『瓶の妖鬼』なる物語を題材に岩井君得意の<貨幣論>を展開されているのだが、真面目な岩井君だからつい大きなミスを犯す。『瓶の妖鬼』の物語を結末まで全部語ってしまふのである。これは原作と岩波書店に大変失礼な話。