富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月十六日(水)曇。人の欲はげに恐ろしきものなり。月初に第二班に昇格し初戰にて期待薄のなか誠に鮮やかな勝利を飾りし多利高の馬主C氏に氏のもう一頭の持ち馬永多高本晩快活谷のR1に出場せば一緒に参戦をと誘われ毎度の如く東京のF氏に頼まれし三連複三レース当てて億万長者のTT馬券ふと自らの予想と合算して賭ければ当たる確率も高かろうかと思い両者の予想を合わせた結果は初めと中のレースが一頭軸の四頭流しの六通り、三レース目が六頭の二十通りとなりそれの相乗で6x6x20=720通りとなりHK$10が馬券単位なれど高額馬券はHK$2まで単位を落とせるわけで掛金も1/5で済むこととなり720/5=144となり最近の好調ゆえ資金に余裕ありHK$144なら遊びでよいかと思ったのが誤算、当然のことながら720通りでHK$10=HK$7200を5で割ってHK$1440-にてとんでもない額のTT馬券を購入してしまふ。卒倒しそうになるが人の欲とは誠に恐ろしきものにて720通りとはもしや当たる可能性も少なからず「取消しを申立てもしや当たっていたらいったいどれだけ後悔するか」だの「配当はHK$10払うだけでよいF氏とHK$1430払う私は金額だけの比率ではお互いが選んだ馬がどう入賞するかが不公平か」だの「もしや大当たりして配当のことでF氏とモメてそんなことで長年の友情が壊れたら」などと当たってもいないのに当たった時のことばかり思案し結局呆然としたままHK$1440の馬券を胸にしまふ。R1は永多高馬の群に埋没し成果なくC氏らと馬主ボックス席へと向かい馬券失態を見せるものの五桁の額の投注もけして珍しくなき彼らにとって千ドル余の馬券など些細なことにて大した関心ももたれず嬉しいような悲しいような心地なり。TTに絡む頭關のR3始るまでC氏に勧められても余は食事咽を通らぬ思いの小心者、ただせめて最初二レースが当たれば三レース目外しても安慰賞ありと願うばかり。R3は軸馬が一着となったものの流した残り四頭は一等も入賞せずいきなり撃沈しHK$1,440は泡と消えたり。人は落ち込みも激しければ悲しさ悔しさすらなくただ呆然とすることを知る。結果総数十六頭のうち僅か五頭しか入賞せず完敗しこれではHK$10にて九頭選びし時とさして変わらぬ結果なり。こんな晩に佛仏に慈悲あらば余にせめて幾許かも資金回収させむと当たりを授け給ふが神仏は余に厳しくとてもHK$1,440を回収せしほどの勝ちを与えず最後の勝負に出でしR7にて普段は買わぬTierce(三連単)を5+6+11の三頭に絞ればこれに運命を賭けんとしたところ返し馬にて5番がいまいち精気なく2番が勇ましくみえて2+6+11として複式六通りにてHK$60で購入して馬券握りしめレースに挑めば5+6+11と順に入り配当HK$1,075を逃し茫然自失の一夜終わる。せめてもの救いは馬主ボックス席に散乱する馬券にはTT馬券も少なからず賭け方と金額をみれば1,000通りを越す馬券、数千ドルの馬券あり誤購入とはいえ同額もしくはそれ以上を失いし同志は少なからずと自らを慰めるばかり。勿論この席に陣取る輩がどれだけ裕福にて数千ドルなど遊興の額であり小生とは懐具合甚だ異ることは判れども敢てそれは鑑みず。Z嬢に知らせると呆れ果てられるかと覚悟していたが笑われ安堵。帰宅し冷蔵庫で冷えていたジンのサファイアをぐい飲みのバカラにて痛飲す。