富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月三日(木)快晴。Z嬢と黄大仙、黄大仙といえば黄大仙廟だが参拝せず坂をのぼり法蔵寺。黄大仙のMTR站附近といい沙田Pass邨といい現存する香港で一番古いタイプの公共住宅が取り壊される最中。そこに重建される団地はといえば民間の分譲マンションとも区別つかぬもの。沙田Pass道をあがりトレイルコースに入りこれまで何度も歩きながらコースから外れる獅子山(Lion Rock)495mには登ったこともなく初めてとなるが予想以上の急な階段を登りまず獅子の背にのぼり頭の断崖絶壁は足が竦む。奇岩多し。これだけの自然の足下に九龍の市街広がりhazyに視界悪し。Beacon Hill抜けてトレイル終える。▼『信報』に「コンビニ文化と日本の構造変化」なる薜涌氏の論文あり、日本経済を担った企業の技術力に大きく貢献したのが高卒にて製造業などに従事する極めて水準の高い労働力であったが、その若者たちの呼び水となったのは企業の終身雇用と年功序列であった、が、それが終焉して、しかも経済不況は就職難で大卒が高卒の就業機会すら荒す現状であり、これによって就業機会から溢れた労働力の受け皿にあるのがコンビニであり、ただかつては時給1,000円が支給されるだけで福利厚生も雇用保障もなく敬遠されていたものが、企業の福利厚生や雇用保障も乏しい現在ではコンビニで週6日バイトすれば月収18万円となり高卒の平均月収約16万円を上回るのが現実、但し問題はこの金額は若者のバイトとしては充分なる収入でも何年たっても収入増とならず(景気がよくなれば時給はあがるが物価上昇やまたバイト就労予備軍の増大で求人はデフレ状況となり時給があがる可能性がかなり低いこと)、このままいくと近い将来、中年の低所得者がかなり多くなり大きな社会構造の変化の時代が到来する、と。政府の構造改革が小泉君のイメージ語りばかりでいっこうに進展せぬが、このままいけば社会の構造改革が必然的に政府すら改革しているくだろう、と(ただし楽観的な意味あいではないのは当然だが)。<日本>はすでに過去の日本となっている、と結ばれるこの不幸。▼同じく『信報』で初めて歴史博物館を訪れた劉健威が「大歴史」の故事がもうすでに語られ続けたことでけして目にも耳にも新しくないが<1997年>が歴史の一幕として歴史館入りしたことがこの博物館の面白さだといい(たしかに見事な指摘だ)、深夜零時の返還儀式が「去る敗者としての英国と香港を奪回した勝者としての中国」という演出で、英国にとっては友好的な雰囲気の中で返還式典が開催されるべきところかなりの不快な思いであったわけで、本音としては華南の漁村が点在する程度の小島を経済繁栄する国際的大都市として仕立てそれを返還してやるのであり、しかも香港の技術力と資金がなかったら中国の現代化など進展できぬものであり、その上であの為打ちか、と思え(まぁ中国側にしてみれば総督パッテン君のあの民主化さえなかれば、というところだろうが)、それがいずれにしても勝者の歴史としてこうして歴史として博物館入りしてしまったわけで、この博物館を首相貝理雅君や査理斯王子が訪れることができるのか、と。▼大晦日の夜のカウントダウンは年々かなり規模と興奮度が増しており、記憶では確か92年の末だったが蘭桂坊にかなりの群衆で坂道で雪崩現象のように群衆が倒れ丁度其処にいた日本人の男性が圧死、香港に働いていた日本人女性の恋人を尋ねてきた年末の不幸なる事故にて、当時日本では貢君、アッシー君などという名が流行っていて不謹慎な冗談も頭を過ったが、それが銅鑼湾のTimes Squareができて尖沙咀でも始まりとカウントダウンがかなり盛り上がっているが、今年は尖沙咀にて若者が警察の指示に従わず警察と小競り合いとなり(安保や成田闘争法輪功ではない、たんに蛍光棒を投げたの投げぬのという低趣味な事柄で、である)、警察がど突いたら若者が警官の頬をふざけて叩き、警察がキレて少年を殴った、とそういう出来事、これが偶然にもTVBの実況中継のカメラに写っておりニュースで報道され問題となったのだが、警察側の昨日の発表は警官とその少年との蛍光棒にまつわる指示と従わぬ態度はあったが少年は冷静さを取り戻し警官の頬を軽く叩く素振りをみせ"Okay, Okay, happy new year" と言って去ったものであり警察の上官曰く"What you think you saw on the television did not happen."と(笑)。完全にカメラに映っているのだが市民に向い警察が「あなたたちがテレビで見たと思っていることは発生していない」と……それじゃあの場面はテレビ局の捏造かよ、銀行強盗の犯人捕まえるのに銀行のモニタカメラに写った映像を一級証拠としているくせに、そんな。世の中ウソばかり。▼警察といえば、元旦より香港の旅遊観光当局からの要請で観光客用の観光スポットの充実ため灣仔の香港会議展覧中心の先端海に突き出た金紫荊廣場にて朝国旗香港旗掲揚を毎日実施するなる案があり(北京の毎朝の国旗掲揚がかなりの観光客を集めるのにあやかってらしいが)警察がその任務にあたることになったのだが元旦はとくに初日ということでかなりの集客があったが会場は前夜からの群衆で汚れに汚れ、しかも警察の国旗掲揚は国家吹奏も儀典兵の行進もなくかなりお粗末、これに非難殺到し要改善。北京は確かに集客もあろうが中共の政治首都のちょっとキナ臭い政治演目であるから集客があるのであり、華南のしかも政治性に乏しい一都市で集客のためにという目当ても国家のアイデンティティの冒涜だがだいたい旅遊観光当局からの要請という前提が胡散臭く香港に乏しいナショナリズム高揚が実際の目的であるのは確か、ただそれを全面に押しだすと拒否反応があるから香港にとっては有無を言わさぬ観光振興なるお題目が立てられたにすぎぬ。これもあきらかにウソの世界。