富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月二十六日(水)快晴。Boxing Day。聖誕節翌日のこの日は使用人や郵便や新聞の配達人に対して日頃の感謝の気持ちをこめ贈品を小さな小箱boxにいれて渡したことが由来だそうな。もともとイングランドウェールズの祝日。今でこそ聖誕節がほとんど休暇となっているがかつては邸の使用人や電話以前の郵便に通信を頼っていた時代には配達人など聖誕節も碌々休めなかったのではないか。それでせめてもの賠いに聖誕節翌日に贈答、と。このBoxing Day恒例のWanchai Boxing Day Race がピークの灣仔峡公園を起終点にMount Cameronをぐるりと回るMiddle Gap Road からBlack's Link(2.5mile)にて開催され奥歯を気にしつつ参加す。今年最後のレース。終わってZ嬢と湾仔峡道、寶雲道を歩く。犬に毒入りの餌を仕掛ける事件アトを絶たず今月で七、八匹の犬が命をおとし警察はHK$50,000の懸賞金を掛け愛犬家は自警団を組織するまでに。散歩する犬も道におちている餌を喰わぬよう口に貞操帯をはめられ窮屈さう。ちなみにこの毒餌犯はかなり長く最初の被害犬の一匹が香港末代総督パッテン君の愛犬ウィスキー。寶雲道は総督の犬も散歩すれば北京の××である董建華君も散歩する場所なり。沙田にて今年最後のレース。5Rまで冴えていたがWhite不調で一番人気のレースを3つ入賞もせず余の期待する鹿鳴(R6 1600dart Class-3 White)、掌権之威(R7 1400turf Class-3 Dye)と心之霊(R8 1400turf Class-2 Dye)が全部コケる。帰宅して湯豆腐。玉木明『ゴシップと醜聞』洋泉社新書、読む。やはりカギは19世紀にあって、中世までそのへんに普通にあった死が恐怖の対象となり墓地の私有化と屍体への嫌悪感が生じ、殺し殺されが関心を引きつける話題となり、この感情構造の変化が大きく作用し、処刑は非公開となるが処刑への関心が高まるからそれを知るには報道を要し、その時点で事件や殺人といったものは警察の発表を新聞が流すものであった、と。近代市民社会の成立は国民が「われわれ」を意識する際に「われわれ」を映す鏡が必要なのであり、市民はそれをするために他者である「彼ら」が要り、自らが起しえないと思っている(実はそれが大きな間違いであることは筒井康隆がいつも言っている)が犯罪や精神異状をもつ「狂気の彼ら」が最も適した他者。ふと思ったが、いまだに公開処刑が行われている中国って……(昨日も麻薬密輸で香港居民が7名深センにて公開処刑)。そういう環境にあって人はゴシップと醜聞を必要とする、か。