富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月二十六日(月)晴。使っておらぬ丸善のアテナ復刻版万年筆に赤インキ入れて朱書き用にしようと思うが万年筆すらあまり使わぬキョービにおいて赤インキを探すことなど難しく銅鑼湾で数軒文房具屋で空振りし華生は流石に店の倉庫からDunhillの赤インキを探し出してくるがMontBlancと同じく赤銅色のインキにて朱書きには使えぬもののDunhillのインキなど蒐集家には「買い」の品にてHK$65にてそれを貰い佐敦に藪用あるついでに文房具困った時の神頼みにて旺角は西洋菜街の中南図書を訪れればLamyのみ赤インキありPilotなどに近いかなり朱色にてこれをさっそく購い雑踏に悪酔いする旺角はお決まりにて花園街の楽園牛肉丸にて牛丸粉食し先日蘋果日報にて紹介せし黒布街まで足を伸ばせばMacperson運動場は下町サッカーの本場にて黒布街にはわずか100mにも満たぬ横丁ながらサッカーバーなるサッカーファンのためだけの飲み屋、Nelsonなる香港ロックミュージシャンにとっての聖地の如きギター屋、なぜか店中にボディビルのポスター張りめぐらしたボディビルダーが経営しボディビルダーが店を切盛りする雲呑麺屋の龍記、Americanなる香港でも有数の格安洋雑誌屋とかなりクセの強い店並び面白く附近を散策ののち洗衣街の大良八記にて紅豆沙賞味す、美味。雑用すませ帰宅するが止まらぬ咳と痰、頭痛に筋肉痛酷く入浴剤入れて半身浴など初めて試み畏友タケイシツトム君の参加するErik FriedlanderのTopazを聞きながらペリエなど飲み物まで用意し浴中『噂の真相』12月号読了。連載「笑犬樓よりの眺望」の頃はかなり面白かったものの断筆宣言解除後に始まった「狂犬樓の逆襲」は芝居のことだの青山界隈の紹介だのと全く面白みに欠ける筒井先生だが何故か目次でも連載の中で筒井先生だけが段上に大きな活字で扱いも別、田中康夫ちゃんや佐高信ナンシー関先生や中森明夫と別格にて今月号は珍しく「戦争が好きなおまえらは死ね」と先生らしいご神託に嬉しく読み始めたら「岩波に書いたのと同じことを書いているではないか」との事であとはまたいかに忙しく原稿も書けないかを延々と続けわはははははははははは、で終わってしまい再び落胆。それに対してナンシー関先生の「顔面至上主義」は小泉の伜を扱いサントリーのCMにてあれがデビュー作でありながら実はゴールであり終焉であり有名な『大河の一滴』試写会後のインタビューから和田アキ子絡みのテレビラジオ出演、そしてこのCM制作発表までが「小泉孝太郎の短くも華やかな芸能活動の全歴史」でありCMのオンエアーと同時にそれが伝説となる、と。振り返ればキラキラと輝く才能を予感させてみた試写会後のインタビューが代表作であり、あれはいい仕事をした、が今後は何をしようが「今、これやってんだ」程度にしか評価されず、演技の下手さも論ずる意味もなくあの瞬間で「自分の才能をベストな形で世に示すことができたのあ本人にとっても世間にとっても何よりの幸福だった」と。「私たちはあなたのことをいつまでも忘れません」「ご苦労様でした」と最大級の賛辞(笑)。半身浴して心身を癒そうとした時に『噂の真相』読むべかず。