富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月一日(木)快晴。香港版Nasdaq創業板の栄光ある8001番にて上場せし折はハイテク株ブームにてアジア通貨危機から立ち直る香港市場の象徴の如く扱われし季嘉誠資本のtom.com、この上場株を手にいれようと金融会社に長蛇の列なるは記録に未だ新しきところ、その民衆はtom.comいったい如何なる企業かも知らずただ株価が上がれば売り逃げを目論みし輩、多媒體平台(Multi-media Platform)の制作という得体の知れぬ企業はその後株価も上場時を下回り、ただ季嘉誠資本なる後ろ楯だけに頼り行き延びしもの、今日の『信報』によると増収がため先端メディア企業にあるまじく印刷出版業務に進出(笑)『優悠生活』なる季嘉誠の長江實業系の不動産住人に無料配布されし月刊誌(ダサい……)の印刷発行業務を開始、と。ドットコムの哀れな末路なりけり。夕方そごう旭屋書店にて辞書眺める。尖沙咀東にて時間持て余し界隈を散策すれば店舗あるは路上の繁華街のみにて商業大厦の階上地下とも閑散。公共交通機関なきこの地に商業地区を設けしはかつての市政局の誤導にて市政局設立百周年記念公園も尖東にて悲しきもの。Y氏と五味鳥にて焼き鳥。相変わらず不況など忘れるが如き客の入り。Y氏に銀のペンダントを見せると「ティファニーでしょ」とさすが目利き、おなじ銀でも光り方が違う、と。Y氏と一時間半にも満たぬ間に焼酎一本空け自省。昨日紛失せし鍵はバス会社に問いあわせせど見つからず不動産屋より鍵受け渡されし時より気になりつつそのままマンションの名称から丁寧に部屋番号まで記されしシール鍵に貼られしままにて二更に近所の知古なる鍵修理請負の師傳招き鍵修理す。この師傳かつて余が卑利街に住みし折は堅道恒生銀行横の階段道にて不法建築ながら小さな苫屋建て営み、店先にてまだ幼稚園に通いし女児は簡素な机を用い出し椅子に坐り文字を綴りしが、数年後に摩羅廟街に小さな店をかまえ最早雨風を耐え忍ぶこともなく今では頑丈なる古きマンションに事務所を構えるに至る。すでに七年、余も三度住み処を移るたびに一度二度、洗濯機の排水、台風あとの冷房の漏水と招けばすでに知古にてお互いこの七年の歳月を思ふ。師傳の娘はすでに中学生の娘となりぬ。