富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月二十八日(金)快晴。話は旧聞に属するが大和屋が某女性週刊誌にてこの春に弟子筋に添い寝強要なる記事あり其に続き数週間前の同誌にて今度は当時14歳の内弟子の股間を触り弟子はノイローゼにて大和屋には波紋されそれが元凶にて数年後の今も精神衰弱となり呼吸困難など併発し本人と親が大和屋に慰謝料請求なる記事あり。日本舞踊の筋のいい子で本人が大和屋の舞台に感銘し手紙をビデオを大和屋に送るほどの熱意にて歌舞伎の女形内弟子になる段階にて本人も親も芸の精進のためにどんな辛い事があろうと克服すべき事を肝に銘じぬ事が哀れ。内弟子となり師匠の思召し好く早くから役を与えられ兄弟子たちの羨望と妬みあり「事件」の夜は地方公演にて夜ホテルにて兄弟子たちと同宿ながら兄弟子たちは街から帰らず独り自室にてテレビにて偶然放映されし松緑の舞台を見ているとふと気がつけば背後に人影あり大和屋が「まったく感心だねぇ……」と(このセリフと仕草は大和屋ならでは……笑)とソファに座り暫くして股間に手を伸ばされ弟子はそれを拒みとそれだけの話。これで弟子はノイローゼになり……と話が続く。これを我慢し芸の肥やしとすれば将来が開けたものを。14の少年への性的虐待などと言うは野暮。公園で一般の少年が襲われたなら事件としよう。但しこの弟子は一般の世間から芸道に入った段階でもはや社会通念や倫理、憲法の謳う人権などの範疇から逸脱しているのである。大和屋の弟子になるということがどういうことか役者を目指す本人も親もわからなかったのか。むしろ何に驚くかといえば大和屋といえば大成駒なきあと女形のトップ(笑……朝日新聞では歌舞伎役者の第一人者もヅカ的にこう云ふ)にて其のような役者の添い寝や股間触りといった所作が芸能誌に書かれ一般常識にて糾弾されし事なり。14歳の少年にかかわる話となれば某事務所など国会や紐育時報でも取り上げられるほど「性的虐待」の噂は枚挙に暇なきものの決して女性週刊誌に書かれぬはひとえに事務所の力なり。それを思えば大歌舞伎を掛けながら歌舞伎を牛耳る松竹の力がいかに弱きものかを露見。思えば高麗屋の若旦那の隠し子、酒乱のほうの大和屋の大立回り、嵐君の傍若無人ぶりなど本人の所作は役者の戯れにて許すとして、事務所としての松竹の対応はお粗末なもの。芸能プロダクションJ、Bなどマスコミ対策巧みな事務所より人材をスカウトすべきでは。JとBでは誰が見ても察しがつくか(笑)。それにしても大和屋、横浜21世紀座での芸術監督辞任といいこの弟子筋へのお痛といい歌舞伎に君臨するわりにはほころび目立ちすぎはしないか。歌舞伎といえば十月の芸術祭は昼は絵本太閤記で京屋の操、吉田屋は松島屋の伊左衛門に大和屋の夕霧、夜も先代萩は大和屋の政岡と松島屋の弾正は定番として男之助の成田屋の若旦那は見物。若旦那は昼はおちくぼにて左近少将、太閤記は十次郎。これは久々に必見の昼、夜か。京屋といえば神谷町の成駒屋のおじさんと並び女方の二大幹部なわけで其の京屋が太閤記で操を演じ夕霧と政岡を昼と夜のトリで演じるということは大和屋が大成駒没き跡の立女形として君臨することのお披露目。夕方灣仔を歩けば修頓の運動場にてパキスタン系の少年たちが地元の子と一緒にバスケに熱中。テロだ制裁だ聖戦だというご時世にふと和む風景。ジムに行くがSCMP紙にTiffanyの広告あり黒のシルクの紐に吊るされた銀のペンダントに魅了されLandamarkのTiffany。Z嬢にとかねてから思っていたやはり銀のElsa Perettiの雙輪のペンダントも購う。Z嬢と待ちあわせ灣仔は北京水餃皇。紅酢だけで食せる餃子は香港では数少なし。Art Cnetreにて近藤良平率いるダンスカンパニー・CONDROSの舞台「Jupiter」を見る。近藤良平ともう一人・藤田善宏?の躍りは格別。確かに他の舞踏にはないストリートダンス系のキレあり。笑いのとれるコンテンポラリーダンスというのは面白い路線。ただ練られてないショートショートが多く、このへんは近藤良平の他にお笑いのイロハではくテニヲハを弁えた作家が必要なのではないかと思う。CONDORSの紐育で撮影されたビデオクリップは9月11日までは普通の紐育の光景でしかなったはずのものが金色に輝く世界貿易中心のビルがやけに象徴的に目に残る。エレファントカシマシ十数年ぶりに聴く。リーダーの宮本浩次、政治コメントが「保守反動勢力」にちょっと利用されている感がなくもないが、本人は自分の主張をしているだけで、その気取りのなさは辻仁生よか好感がもてるか。でもどうせなら政治を語るほど野暮じゃないよと湯島あたりに居を構え荷風に清親を語るロッカーとして徹底されたらもっと好きになる。それにしてもエレカシ、聞いていると、いきなり「水道橋あたりの小さな安アパートの一室で膝小僧かかえるの図」になってしまふ。