富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月二日(日)雨。百年ぶりに八時半すぎまで寝過ごす。夏の疲れか。一昨日の歌舞伎町の火事、東京の某君よりメールあり、歌舞伎町界隈の日焼けサロンに週一にて通っており、同じような雑居ビル、今日も日焼けしに行き、日焼けマシンの中に横たわりながら、ここで火事があれば日焼けが転じて黒焦げでは洒落にならぬと考えていた、と。昼前からジムでCombatとPump二齣。遅れて沙田の開幕戦に向うが予想に夢中になり地下鉄では乗換えを忘れ長沙湾まで行ってしまい競馬場行きの KCRがなく火炭で降りたのはいいが銀禧街市で競馬場への間道まで間違える始末。Kingston Treasure(京城之寶)が二年前の丁度この日同じ特区長官盃にて一着となったものの故障で二年休養し本日は万全を期しての復活戦、馬王と賞される蝦(Fairy King Prawn)が二度負けた5戦4勝1二着の逸材、このKTを応援しに行ったのだがパドックにて興奮極まりなくWhyteの騎乗すら許さぬまま退出。KTは調教師の呉定強が廉価で見つけたPPGにて、けして期待もされなかったのがあれよあれよと一流馬、主がKingston Town Syndicateなる団体で、確か友人4名でこのKTを養っているのだが、この4名の雰囲気もよく二年かけてじっくり静養させたのも見事、さぞや無念だろうに。パドックにてKTの馬主らと財政司梁錦松がいたように見えたが他人か?。6レースまでで競馬場を離れ尖沙咀某バーにて一人KT残念会で麦酒し帰宅。……とここまではKTの無念に浸っていたが唖然とする事象に二つも遭遇して気も動転である。
その1。ビデオ録画し唖然。JNNのJAPAN WEEKLYという日テレ読売が制作し世界各地の日ごろ日本の情報に接することのできない在外邦人のためのニュース番組が配給されている。香港ではJapanese Hourで日曜日の朝10時から2時間英語チャンネルでやってこのニュース30分、バラエティ30分で石井ふく子橋田寿賀子っぽいドラマ1時間だったのだが、どうもスポンサーの日系企業も出し渋りか枠が90分となりニュース30分、最近はジャニーズアワー(英語ではJonny's Hourでどうもジョニーといわれるとジャニー様のイメージが損われる……笑)と称し「堂本兄弟」とTokioの番組をやっているのだが、問題はこのJapan Weeklyである。日テレ読売系列でいちばん気になるのはニュースがやはり憲法改正、右傾化なのだが実はそれは意外と地味、なぜかというとこの番組、完全な手抜きでアナウンサーも入社したての新米の練習場ならニュースの記事もテニヲハも危なっかしい(というか明らかにヘンな)日本語で、どうしようもないのだが、それはそうと問題は貴重な30分の間に巨人軍の野球だけ長〜く見せられるのである。野球に興味ない上に巨人が大嫌いだとかなり不快なのだが巨人が優勝できないとなるとかなり嬉しくつい見てしまい、それでも負け試合をどうこの番組が表現するかがかなり面白くなる。それが、だ、なんと今日の放送で「セ・リーグ首位の巨人は……」と宣った!!!!! おい、いくら日テレ読売だからってヤクルトがM19なのに事実の改竄はやめろっ。海外邦人は巨人が一位だと思うぞ。この番組、番組もさることながら香港側の広告代理店が某社(中央宣広)なのだが「この番組は次の各社のご協力でお送りしております」とナレーションが入るのでかつて民間放送なるものは提供会社は善意でなく広告を流すことで商行為をしているのだから「ご協力」は間違い、「各社の提供で」にせよとこの代理店に手紙を書いたが一向に直されもせず。日本通運のCMもキャプションで世界に○○○店舗と出るのが1997年6月現在とか出ており、今見て数年前に作ったCMずっと流してる、と判るのもちょっと、と思うが、どう考えても現時点の店舗数を出したらきっと減っているのだろう。
その2。朝刊遅くなって読み唖然。日本でもかなり有名な美食家エッセイスト道楽人・蔡瀾が『蘋果日報』にてエッセイを連載しているのだが、それが今日は「盆栽猫」なる題にて、猫を瓶につめて四角く育てるというかなりエゲツナイがインターネットでは数年前からかなり有名な悪質サイトがあるのだが、これはサイトを見た人を驚かせるものにて、サイトはそられしく書いているがその実在を信じるものはいないなのである。もちろん、猫をビンに詰めるの写真があるが、これはそのサイト作成のための悪質だがイタズラである。どんなバカでもわかる。それが、だ、マカオ在住の読者がこの「悲惨な動物虐待」を蔡瀾にメールして、それを蔡瀾は信じてエッセイでこの虐待サイトを紹介し、それを罵り、この読者が反対運動をするのでそれに賛同を!と書いた。蔡瀾、かなり好きだったが、もうダメ。本多勝一のように私の中では失格。それにしても何故、盆栽=スイカも四角=猫も四角で犯人を日本人と決めつけたのか、蔡瀾。言論人として許せぬ、なんら証拠もなく推測で(あ、これは富柏村も一緒か……笑)、でも発想が<盆栽=スイカも四角=猫も四角で犯人は日本人>と貧困だから、失格! 蔡瀾も映画のプロデューサーが趣味人でエッセイも書いてるってスタンスがよかった。仕事で得た、世界をまわった、その面白い話を紹介する、ってノリが。でもそもそもプロデューサーといっても偶然にもブルースリーの映画が日本に上陸する時に偶然、GH社の日本への映画売りつけ担当だったから、で、そのあとは何もしていない(笑)でもそれでエッセイが面白いからよかった。しかし香港映画じたいが不況続きでGH社も蔡瀾を遊ばせておく余裕もなく、プロデューサ辞めてフリーになったら全然面白くなくなった。レストラン評もなんか権威になったらダメになった。自分で自分の名前を売りにしてレストラン街作っちゃいけないよね。あーでも残念だ、けっこう好きだったんだけど、趣味人として。

(以下、題『盆栽猫』原文訳、訳文中の()部分のコメントは富柏村による)

ほんとひどい人がいるもので、まえに「猫盆栽」の話を聞いたが笑って済ませていた。今日一通のメールが届き、ある読者がこの事実をすでに見つけたという。その最低な奴は大胆にもインターネットでこの猫を売り、人を恐怖に陥らせている。いわゆる「猫盆栽」とは(以下、サイトの記事受売り……笑)小猫をガラス瓶に入れ、一本の管で猫に栄養を与え、もう一本で排泄させる。猫が食べるのは骨を軟化させる薬で、この瓶の中で成長すれば動けないからその形となる。この残虐な行為はすでにトレンドでニューヨークやインドネシアニュージーランド(なぜインドネシアなのか……笑)ではこれを商売にしようとする人もいる。遅からず商品になることだろう。(とよくもまぁ信じたものだ)メールをくれた人は私にこの件を広め、国と居住地名をふくむ署名をして、一緒に猫を救おうと言っている。私はこれは国際刑事機構が捜査にあたるべきだと思う(アホか、でもマジやでこのオッサン……笑)。小猫を虐待することは児童ポルノの如き重罪にて絶対に法でお縄にし重刑とするべき。このような人を捕まえるのは簡単、彼らはインターネットサイトを公開しているのだ……http://www.bonsaikitten.com すぐ破棄せよ。(……とここからがこれは大問題だっ!)このようなことを構想して始めるのは間違いなく日本人だ(一定是日本人、と断定してしまった……やばいんじゃないの?)彼らはスイカを正方形にするし(さすが知日家、よく知っている……笑)いま猫をもおなじような別の形にしようとしており、今後は幼児もおなじような形にするだろう(おいおいおいおい……どうしたの蔡瀾?)。彼らは(これってこのサイトの制作者、それとも日本人?)は人でなく、野獣である。いや、彼らを野獣と罵れば野獣を侮辱することになる。人類の性悪はついにここまで落ちたか、さっき書いたこのサイトを知ったものの私は(猫ギャラリーのことだろう、販売とか猫盆栽の作り方の細かい情報は読んでいるので)見ることがどうしてもできない。一度見たら烙印を押されたようでもう記憶から消せず永遠の悪夢となる。これは小さな事件でない。国連が乗りだすべきだ(おいおい、せめてWWFにしてくれ)。グリーンピースがこいつらをターゲットにすべきだ。私は死刑には反対だが、ただしこれについては例を破ることも辞さない。このメールの発信人はFionaさん。彼女のメールアドレスはfiona@macau.ctm.netなので彼女を支持する人は連絡をとってほしい。


ふと思いだしたのは三島由紀夫の『午後の曳航』。少年が小猫を壁板にぶつけ殺す場面があり、残酷ではある。しかし子どもは昆虫や動物を殺すとことで死、殺しを体験する。そして人の死を連想する。この小説では少年の母親が愛人と情事の場面をこの少年が見てしまい、愛人である船乗りは少年の憧れ、成人の投影であり、また母を奪った敵=殺すに値する対象となる。今日の殺人がかなり容易に行われる時代、ことに少年による殺人があまりに動機も単純で残虐な時代、これは少年の問題のようでいて、実はこの盆栽猫のような、たかだか猫を瓶にいれたのいれないの程度のことに大人がである、しかも蔡瀾のような本来、世の言論を導くべき者がこのようなことに血相を変え、こんな行為は極悪非道でこのサイトの犯人が死刑になるべきだの、騒ぐ、この感覚こそ完全にヘンなのである。大人が動物虐待だ、児童ポルノ撲滅だと倫理倫理と囃し立て、子どもは大人が全く想像つかない領域へとすでに旅立ってしまっている。ナショナリズム、民族問題も然り。蔡瀾などいかにも国際人を気取るが、こういった時にいきなり日本人を悪役にするように、平静な時はなんとでもなるものが、こうした感情的な場面で民族主観が現れるのである、そしてもしこれに対して「日本人に謝れ!」なんて言うと、である、今度は日本人は中国での侵略と殺戮を謝っていない、って議論になって泥沼へと……怖い怖い。