富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月三十日(月)晝すぎより快晴、天晴れ、今年最高の摂氏31度とか。佛誕節なり。海で日がな一日たまった雑誌を貪り読んで過ごす。天皇賞ではテイエムオペラオーが快勝とか。すごい馬だ。しかしこのカナカナ表記って絶対に速そうに思えない、カタカナ表記は日本競馬の野暮、TMオペラ王なのか、本意は。シンボリルドルフってのは新堀なる赤露革命にて亡命してきたロシア貴族が京成線界隈の新堀なる下町にでも居を構えたような名前だ。天皇賞といえば天皇陛下首め宮様方は天皇賞にお賭け遊ばされないのかとふと思う。三島由紀夫『六世歌右衛門序説』より「なるほど岸田劉生氏の定義に当嵌るような、古い手織木綿に似た歌舞伎の感触は、歌右衛門の持ち味ではない。しかし岸田氏の定義に当嵌る歌舞伎を、生きて喋って歌いさだめていた娘にたとえると、歌右衛門は少しも腐敗せずに雪の山の中に閉込められていたその娘の屍が、長い年月ののちに発見された姿に似ている。その姿形からは、すでに生のいやらしい活力と体臭は失われているが、生きていたうちに持っていたあらゆるものは、雪白の凍った肌の奥深く、ひとつも損われずに蔵されているのである。歌右衛門の『鷺娘』を見るたびに、私はいつも、このさり気ない舞踏劇が、清潔な雪白の屍姦のイメージを起させるのを不思議に思ったが……」と。「生きて喋って歌いさだめていた娘」こそ梅幸、それに対して鷺娘で屍姦を想像するとはさすが三島。歌右衛門が鷺娘をここまでしてしまったがために必然的に大和屋にできることは生きたまま妖怪しい鷺しかなかったわけか。
そういえば数日前、HSBCよりご愛顧頂いておりますMandarin Oriental Hotelのハウスカードがこの夏をもちまして使えなくなります旨の手紙が届く。五、六年前だかかなりChinnery Barに入れ込んだ時期があり、当時の給仕頭に勧められし得意客カード、VisaだMasterだといった信販会社との提携もなく、ご優待があるわけでもなく、せいぜいMandarinでこのカードを見せると初めての給仕でも「上客か」と判ってくれる程度で、でもホテルであるからそれが価値あったし、BangkokのOrieantal HotelのRiverside Terraceではかなり客あしらいに違いがでて満足をさせてもらったものだが、最近ではこのカードの存在すら知らぬ職員が目立ち殆どお蔵入りしており、同じカネを使うならクレジットカードでマイレージを貯めたほうがよっぽどお得。カードは記念品にさせたいただこう。