富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十八世勘三郎十三回忌追善ノ歌舞伎座猿若祭

癸卯年十二月廿六日。気温摂氏▲1.3/5.1度。東京の積雪8cmで「豪雪」。

母が今月の歌舞伎座勘九郎七之助の〈籠釣瓶〉は見たいといふことで母にとつては二年ぶりの歌舞伎座へ家人と三人で。


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今月の歌舞伎座は十八世勘三郎の十三回忌追善興行。ロビーに十八代目の遺影を拝む。享年五十七なのだから早逝すぎた。母は嗅覚が失せてしまつてといつてゐたが遺影の前の薫香に「まぁ良い匂ひ」と。母の嗅覚戻すとはさすが十八代目の効力か。稀有の人たらし。まだお元気なお若い頃に水府に巡業に来られた十八代目と母は楽屋口で並んだ笑顔の写真が残つてゐる。

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児太郎のお染、七之助の久松で〈野崎村〉。彌十郎の久作が良く、久作の娘の鶴松も愛らしい。〈釣女〉は醜女に芝翫、太郎冠者に獅童で萬太郎(時蔵倅)と新悟(彌太郎倅)。十八代目の妻(好江さん)が神谷町(先代芝翫娘)。そして〈籠釣瓶花街酔醒かごつるさとのゑひさめ〉は勘九郎の佐野次郎左衛門と七之助の八ツ橋。花魁は九重が児太郎で七越に芝のぶ、初菊に鶴松。芝のぶさんは養成所の9期生で昭和末の稚魚の会からだから大役はまことに嬉しい。遊郭の遣り手(お辰)の歌女之丞が上手い。次郎左衛門の下男治六で橋之助熱演。そして遊郭立花屋主人長兵衛の歌六が貫禄を見せ何時といつても繁山栄之丞役の仁左衛門。出てくるだけで色気たっぷりで八ツ橋が間男まぶにするのもわかるところ。浴衣から着物姿に羽織るところまで所作とセリフの合間の良さで客席からため息。本日のお席は一階4列目で花道から内に3席手配いたゞき籠釣瓶を見るには最上の席。花道の立ち位置を見上げるわけで母にとつてはそこに仁左さまが佇むのだから、それは喜んでもらへた。八ツ橋初役の七之助は今回、大和屋のおじさんにお役を習つたさう。玉三郎の八ツ橋はどこか偉さう。次郎左衛門へも所謂「上から目線」に見えて繁山にもいつか愛想尽かしさう。吉原の花魁となつた人生への感慨といふものが薄く思へる。さう思ふ元には大成駒のあの八ツ橋があるのだが。七之助もやはりその大和屋のやうでクールすぎるきらひあり。美しいのだが八ツ橋は高級コールガールではない。

母もあまり歩きたくはないので歌舞伎座のあと早めの夕食を何処にしようかしらと考へ(資生堂パーラーは本日は休みの月曜で)木挽町歌舞伎座近くの「銀之塔」に。偶然にも家人も同じ選択を考へてゐた。アタシらは初めてで母は四半世紀ぶりださう。今日はまさかこんな天候になるとも思はなかつたが銀之塘にして最善。歌舞伎座を出るときに携帯に伝言が入つてゐたが店に着くと悪天候で夜の営業取りやめで午後4時に予約してゐたので電話をくれたが応答しなかつたので芝居を見てゐる、芝居が跳ねれば来店と察してくれたさう。アタシらが最後の客で店終ひ。酒はキクマサ。思つたよりもとてもあっさりとした美味しいビーフシチュー。銀座でまだ雪は積もつてはゐないがミゾレの雪は強く風もあり。東銀座から地下鉄で東京駅。退勤ラッシュが少し早い。すでに中央本線の特急は雪で運休。常磐線は平常通りで千葉を過ぎると雪もなし。水府は夕方少し雪も積もつたやうだが小雨程度で無事に晩七時半すぎに帰宅。

首都高と首都圏JR各線運行状況(22時半現在)

雪国からすれば「この程度の雪」だが首都圏の交通は首都高、鉄道も麻痺状態。ネット上で状況を伝へる地図を見て思つたが首都高は道路図が直線的で堅いのに対して鉄道(JR)は曲線で柔らかい。

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昨日の前橋と京都の市長選挙。前橋では自民の現職が大差で反自民の新人に負け。京都は自公に国民と立憲まで相乗りの新人有利だつたが共産の福山氏にかなり支持集まり僅差で時点。共産候補にこれだけ票が集まるのがさすが京都。「立憲と共産の共闘ができてゐたら」なんてのはもはや妄想で反自民に加へて「失望立憲」の票がどれだけあるかの証左となつた。