富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

黒川の王祇祭(拾遺)

癸卯年十二月廿四日。気温摂氏▲3.9/10.9度。鶴岡の最低気温は0.3度とは。水府の方がよほど寒い。三日間、酒を飲み黒川の美味しい精進の品々を頬張り能を見て合間には昼も布団に入り温まり……の生活で何も疲れる言ひ訳もないはずなのだが流れを理解してゐない日程のなかで他所者で居心地の違ひもあり正座も1時間くらゐなら平気だが胡座をかくのがむしろ腰に負担もあり一切椅子に座らない生活で足の脹脛ふくらはぎの攣りっぱなしのやうな筋肉痛に難儀。今日は寝てゐたいところだが来週が公立高校の入学願書提出で知己のスリランカ出身の親子がゐて昨年11月に来日!の息子が某高校に願書提出。父親が必要な住民票だと住所証明だの必要な書類は準備してゐるが、それをもとに願書など必要書類を書いてあげる約束などありあれこれ諸用を済ます。早晩の水府の市街はそれなりに人出もあり。水戸八幡宮などに節分の豆まきだとか市民会館で何だかコンサートだと思つたら“CHEMISTRY”といふ社中なのださう。
▼黒川の「王祇祭」は、この名称は昭和になつてからさう呼ばれるやうになつたもので、それまでは「旧例祭」。明治で新暦になり、それでも旧暦で挙行してゐたから旧例祭なのであつて元々は春日神社の「例祭」。
▼王祇様は長さ2.5mほどの杉の鉾3本を紐で連ね、頭には紙垂しでと呼ばれる紙が巻かれてゐる。束ねてあると陽根のやうで、これも各地の男根崇拝の一つかと思つたが当屋に運ばれてくると幼童による〈大地踏〉のときだけ王祇様は開かれ、さうすると布がまさに御開帳で(今風にいへば一人用の三角テント)それが扇のやうなので王祇様の名前になつたといふ説もある。その幕に大地踏の幼童が覆はれる。その時は天岩戸ではないが王祇様が女性器のやう。そこで幼童は神様から何かしらスピリチュアルな精気をいたゞき聖なる大地踏の舞ひを披露して今年の五穀豊穣を祈願することになる。

昨日の黒川春日神社での神事能は地元の氏子でない我々は社殿に入るのに社務所で参観料(5千円)を納め、御札、御神酒と神饌、それにお昼のお弁当( 御強 おこわとお茶)をいたゞいた。御強は少量の鶏肉が入つてゐたので、これが精進落としになつたか。

当屋は安芸守あきのかみを名乗られたので帰りがけに当屋から、その扇子もいたゞいた。黒川のお家はそれ/\かつて当屋をされたときの国司名があるので皆々自分の扇子にはその国司名が書かれてゐて神棚への拝礼の時やシテ方が能面を受け取るときなど扇を開いて、の御作法がきちんとしてゐる。牡丹をかたどつた紅白の神花しんばな、串花ともいわれる小花こばなもいたゞくことができた。本来は本日の神事が終はつて神花を解いてそこから配られるものだが当屋のお家なので脇宿にて。

▼今回の一連の行事はあくまで神事であつて観光芸能ではないので神事も能も一切その舞台の撮影などは控へたしブログなどへの掲載もさうした画像は上載しなかつたのだが昨日の神社社殿での能で長人衆おとなじゅうのお一人が傍らに置いた紙袋がイカしてゐたのでパチリ。

ちょうど社務所から社殿に入ると舞台の角席なので余計に目立つたのだが英語の紙袋が否応なく目に入つてきた。

It is the pleasant
leisure weather today.
I can see a blue sky and
I feel so good.
What is your plan for next weekend?

なんてイカしてゐるのかしら。昨日は残念ながら青空は見えなかつたが寒空に雪が舞ふ、それこそ黒川の人々にとつて王祇祭りでまさに“It is the pleasant leisure weather today.” “I feel so good”だつたことでせう。