富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

黒川の王祇祭その①

癸卯年十二月廿一日。気温▲0.4/14.5度。

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鶴岡まで行くのに当初、空路で庄内空港へ飛ぶといふ案もあつたが鉄路となり上越新幹線で新潟へ。実は上越新幹線に乗車は初めて。18歳のときに上越線エル特急ときに乗つて以来。

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越後湯沢はスキー場がぎりぎり開設できる程度の雪。新潟は(最高気温)14.2度。で雪もない。

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新潟からの特急いなほ常磐線の旧フレッシュひたち号だつたE653系だが理解できない色。これでハマナスの色なんださう。正面のライトの縁に従前のいなほ🌾の色が見える。

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グリーン車は豪華だが誰も乗つてゐない。


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新潟駅の駅弁と昼酒に鶴亀。

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車窓から日本海を眺めると青い空に青い海。ここは伊豆急行で特急踊り子かと錯覚するほど。

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鶴岡着。月山山頂行きのバスは冬でも運行中。月山はきれいに雪をかぶってゐる。タクシーで鶴岡郊外の「くしびき温泉ゆ〜Town」へ。辛うじてそこまでが路線バスあるが9時台の次は16時台で1日に3往復のみ。湯船から月山を仰ぐ鉄分の多い温泉。横綱柏戸がこの地(旧山添村)の出身で月山を仰ぐ銅像あり。雪もなく暖かいくらゐで、ここから赤川対岸の旧黒川村まで歩く。

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川の名前も赤川だが黒川の集落に入ると地面は道路も住宅の敷地内もうっすらと赤い。

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黒川では明日未明から所謂「黒川能」があり(無形文化財)これは黒川の春日神社の祭祀で現在は毎年二月一日から二日にかけ執り行われる「旧例祭」の神事能。かつては旧暦正月の迎春祭。この「王祇祭」では黒川の上座と下座に「当屋」と呼ばれる神宿があり、春日神社の氏子にとつては一生に一度回つて来る当屋頭人になる名誉な大役。


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戦争中も途切れなかつた王祇祭は疫禍で二年中断あり一昨年に神事のみ、昨年から徐々に能も復活。今年上座の当屋となるN家に泊まりこみで、この王祗祭を拝見できることに。それも歌人馬場あき子先生の長年に渡る黒川能への協賛があり、畏友村上湛君の馬場先生との親交で私にまで、この大変貴重な機会が授けられた次第。今回は東京から湛君とご一緒して現地で更にお二方向と合流、の四人でN家にご厄介になる。お一人(N氏)は某能楽堂学芸員(総監督的なお立場)で、もうお一方Y氏は関西の大学で経済学がご専門の研究者だが能楽がお好きで正月の大阪能楽堂でもご一緒した。


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夕食のおもてなしを受ける。今晩が大晦りで年取りのお膳は当屋のため精進料理。御酒がいくらでもいたゞけるのが嬉しい。御酒は鶴岡の竹の露。弁慶飯(青菜で包んだおにぎり)が美味しい。

当屋ご当主から酒を御酒を何杯もいたゞきながら黒川の祭祀のこと、これを人口減少や農家の規模縮小のなか祭祀を維持することの難しさなど現状をお聞きする。東京や首都圏、関西圏など大都市だけが華やぐなかで地方の社会生活は風習や民俗芸能まで風前の灯火。

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本晩は当屋からの遣ひの若者が座中の家々を周り「ものンもう」と案内請ひ明日の振まひの招待口上述べるのださう。