癸卯年閏二月廿四日。気温摂氏7.5/23.6度。晴。水府を昼すぎに発つ特急（ときわ）で東京駅着。八重洲口の地下から向かふ側に潜り昨年だか開業したバスターミナル一見。住友生命ビルがあつたところか東京ミッドラウン八重洲なる大型複合ビルの地下。八重洲ブックセンターも閉店。横丁を入れば京橋にかけて宝通りだとか小料理屋など並んでゐたが小さな会社のビルも全て立ち退き済みでゴーストタウン。このあたり確か槙町といはれた一帯も鍛治橋通りまで再開発を待つばかり。
銀座一丁目といつても昭和通りに移転したトラヤ帽子店を訪ふ。コロナの間、帽子といふものを被らず。帽子深々とかぶりマスクしてゐると何だか重苦しく。もうマスクはしてゐないので帽子を被らうかと思つたが、この季節、冬の帽子は暑く夏用は風通し良すぎて寒い。春ものの帽子を調達。トラヤでは女将さんが店に出られてゝ話を聞くとコロナ＝外出自粛で帽子は要らずで贔屓のお客も来られなくなり（アタシもその一人だつただらう）銀座通りの賃料も上がつても「銀座トラヤ」で銀座を離れるわけにもいかず、でこちらに移転の由。杖のタカゲンも銀座通りから一丁目の裏通りに移転世界的な高級ブランド店のビルが立ち並び何だかわけがわからない。自動車ディーラーも賑やか。
早晩のお能まではまだ３時間ほどあつたので夏のやうな暑さに銀座サンボアでハイボール一杯。泰明庵で卵とじ蕎麦。まだ時間あつたのでCafe de L’ambreに寄る。店内に入るなり店員「当店は珈琲だけでお会計は現金のみとなりますがよろしいですか？」。常連ではないがアンタが生まれる前から先代の頃に来てるよ、と言ひたい気分。混雑で気づくと皆、外国人。韓国人が多数で日本人客はアタシと、あとからもう一人、英語人を連れてきた女性のみ。珈琲の聖地か。皆、メニューを神妙な表情で「琥珀色の女王」だか注文してマスターの珈琲淹れる樣を凝視して出された珈琲の写真を撮つて……アタシはブレンドの「２番」注文して、さっと出されたのでさっと飲んで退散。昔から変はらないのはBGMのラジオの音。狭い店なのに当代のマスターが慣れない従業員にあれこれ指図する声がうるさいのは難。日比谷まで歩いて地下鉄で水道橋。
本日の銕仙会は大槻先生の能〈景清〉と鵜澤光さんの能〈杜若〉で囃子方に鼓の大小は亀井先生と源次郎先生、太鼓は三島元太郎先生（御三方とも所謂人間国宝）で笛は松田先生と好番組。会場に入ると〈景清〉は笛が康二師お休みで後半の能〈杜若〉に出演の松田先生代演とは。これはご馳走。
大槻先生の〈景清〉これはアタシの能鑑賞の記憶に残るものだらう。いまこの〈景清〉を大槻先生以外の誰が舞ふことができるかしら。亀井先生の鼓の音に痺れる。シテ方がかやうに立派だとこの〈景清〉で重要な立場であるワキ（殿田謙吉）も景清を尋ねる娘・人丸（裕一）も地謡も本当に良い緊張で舞台が締る。〈杜若〉も鵜澤光さん熱演。〈杜若〉は昨年九月に渋谷（セルリアンタワー能楽堂）で関根祥丸さんのシテで、このとき村上湛君の解説も絶好なもので楽しませていたゞいた。光さんもさすがにこの序之舞は展開に苦労はまだ／＼あつただらう。松田先生の笛が秀でゝそれに何う応じられるか。
▲村上湛君から、この鵜澤光さんの舞囃子（養老）見てご覧なさい、といはれたが、これを見れば光さんの良さがよくわかる。
東京駅で帰りの特急（ひたち）待つてゐると日本で唯一の寝台特急サンライズが発つところ。嗚呼……これに乗つて出雲に行きたい。鉄道といへば外国人用の「ジャパンレールパス」大幅値上げ。香港からの帰国時にアタシも何度かこのパスを利用したがお得なかぎり。新幹線で「のぞみ」には乗れなかつたが。もはや日本を観光で訪れる外国人客なんて日本人より富裕なのだから、こんな廉価なパス提供は不要と思はれるところか。そんなことしなくてもいくらでも外国人は「安い日本」にやつて来るから。それにしても、これだけ値上げしても「のぞみ」には乗せないとはあばらかべっそん。
観音さまと勢至さまがお出まし！！
— 雨口口口龍 (@1samantabhadra1) 2023年4月14日
合掌…
今年の当麻寺練供養は肌寒いな… pic.twitter.com/ETKymIUZTq
