富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

金沢の建築谷口の父子

癸卯年二月初二。昨晩はお酒を澤山いたゞいて今朝は目が覚めると六時半近く。客室のカーテンを少し開けて白む外を眺むれば昨晩からの雪が積もり金澤の市街の家々は白色の屋根が並ぶ。本日の気温摂氏▲0.1/3.3度。 06:53からFNS系列で〈紙兎ロペ〉を見るべく慌てゝ樓上の大浴場で朝湯を浴びる。さて今日は何をしやうか。積雪は7cmだかあるが、これから更に積もるやうでもない。午前10時頃に宿の退室を済ませ荷物預け路線バスで犀川を越え金澤建築館。谷口吉郎と倅・吉生記念。館内は父・吉郎が設計の迎賓館〈游心亭〉の広間と茶室の現物相応のレプリカが見事。折からの降雪で借景も美しい。


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この〈游心帝〉のガイジン相手の茶室。全てが規格外なのだがきちんと一間の間隔で仕切られてゐるのが見事。それをいへば〈広間〉とて一間の襖や障子だとかなか/\見慣れなくて面白いのだが。この広間の茶室もお床と点前座の位置、客座の位置関係など本当にアヴァンギャルドそのもの。


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この金沢建築館は谷口の父・吉郎の業績を「建築館」にするにあたり倅・吉生の設計が見事なのだがロビーとてテーブルと椅子にminimalな照明が配置されてゐるところに疫禍で対面のテーブルにアクリル板を設置しなければならなくなり、そこでも既存の照明を活かした、これだけのアクリル板設置ができてゐるだけでも本当に素晴らしい。


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出歩き始めたのでこのまゝ立ち口吉生設計の鈴木大拙館まで路線バスで出向いてみたら今日は休館。それでも探索路から大拙館の裏に廻れ空間を窺ふことができた。

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そこから誰も踏み分けてもおらぬ雪の絨毯のなかを進むと絶景の雪と樹木の空間に出た。本多公園。言葉を失ふほどの見事な雪景色。これが昨晩深更からの雪でかうなるとは。

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この雪景色のなか遭難することもなく脱出して三た度、路線バスで近江市場まで戻る。丁度、昼どきで何だかこの雑踏に混じり食事する気ににもならず四た度目の路線バスで近江町まで出て尾張町。昨年、休館で入れず裏の泉鏡花記念館に出向いたのだが今日は開館の柳宗理記念デザイン研究所。この削ぎすされた〈基本のデザイン〉の美しさ。


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この界隈は個性的な洋風建築がいくつも並び散策には面白い。


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先ほど近江町市場では正午すぎで大変な人出で食事する気にもならなかつたが尾張町に〈むさし〉なる「夜は居酒屋」あり。とんかつが評判良いやうで、ロースの棒肉を頬張る。日本酒が美味い。


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さて、これから夕方までの時間に何をしようかしら。家人が「あの図書館が見たい」と所望で路線バスで南町まで出て市立の多摩川図書館。上述の“谷口”の吉郎と吉生の最初で最後の共同設計がこれ。小規模の図書館なのだが実に利用者フレンドリーな設計。


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家人もこちららを気に入つてくれたが彼女が言つてゐたのはこちらの玉川美術館ではなく長野県立図書館だつたことが判明。折角なので路線バスで出かけてみたが1日パスのぎり/\はずれに県立図書館はあつた。


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昨年開館のこの新しい県民図書館の威容を一言で表現はできない。何なのだらう、この〈空間〉は?と圧倒される。


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この図書館の開架図書は実に30万冊。とても面白いジャンルわけであらゆる古今東西の書籍が目の前に露はになつてゐる見事さ。さまざまな動線、隠れ家的居場所に閲覧、学習デスクあり空席もあるから。ここにゐたら勉強してみようと知的好奇心が高まるばかりでせう。閉架書庫含むと200万冊までの所蔵に能ふさう。


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ホテルに戻り荷物を受け取り夕方で混雑する路線バスで金沢駅。今日は8回も路線バスに乗るから1日乗車券(600円)2と2/3回の乗車で十分にモトをとつた。金沢の駅ビルの商業施設で買ひ物のついでで能登の美味しいお酒もいたゞいた。

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北陸新幹線と東京駅からの常磐線特急で呆っ気なく水府に戻る。