富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

城端〜氷見〜七尾〜和倉温泉

癸卯年二月朔日。気温摂氏0.6/8.4度。晴。08:20に金沢駅を出る伊波往きの加越能バスに乗る。加越能は加賀、越中の地元能の名称……ではなく加賀、越中能登のこと。金沢駅近くの葬儀場、いや今は「セレモニーホール」だ、で今日の葬儀が「喜多家」とあり。金澤とはいへ能とは関係ないかしら。金沢大学が郊外に移転して(角間キャンパス)宛ら八王子の丘陵の大学群のやう。それにしても広すぎないか。香港の中文大学のやうにシャトルバスが運行されてゐる感じもしない。富山との県境山越え。このあたりだけはさすがに雪。南砺(なんと)市に入りバスは福光の町を抜け城端(じょうはな)で下車。城端駅前から市内シャトルバスがすぐに出るので飛び乗つて城端の町に上がる。


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真言宗大谷派の大刹・善徳寺の門前町西陣織に繋がる、かつて絹織物で栄え門前町の商家もじつに見事な建築が並んでゐる。


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越中の小京都と呼ばれ五箇山にも抜けられることから観光が今では町の産業でもあるのだらうが今朝は町中を歩いてゐるのはアタシらだけ。城端での滞在は40分ほどしか時間がなく急いで低地の城端駅まで歩いて戻り10:04発の高岡行きの二両編成の気動車(キハ40)に乗る。これを逃すと今日の行程は台なし。数へるほどの乗客数だが新高岡で北陸新幹線に連絡で新幹線との乗換客もあり高岡へ。高岡駅も立派な駅舎だが北陸新幹線の開通と新高岡駅開業で高岡駅は長距離列車や特急などもなく普通列車だけ。富山、金沢方面それぞれに向かふ「あいの風とやま鉄道」(なんだこの名称は!)とJRの城端線、これから乗る氷見線が交わる交通の要所だつたのだが。氷見線に乗車。新幹線の開通で北陸本線第三セクターの鉄道となりJRは組織的には城端線氷見線だけ孤立。城端から氷見までの乗車料金は990円なのだが城端〜高岡、高岡〜氷見と分けて乗車券購入すると合計で920円とは。富山でパルプ工場を眺めながら氷見線富山湾沿ひに出ると越中国分駅から雨晴駅までは乗り鉄には聖地のやうな富山湾沿岸すれすれを列車が走る。富山湾で波がさう荒れることはないが台風など来たら鉄道は普通。それにしても絶景。残念ながら雨雲で立山連峰を拝むことはできなかつた。

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氷見に11:30着。氷見は漁港もあつて今は「ひみ番屋街」といふ氷見漁港場外市場に客が集まるらしい。列車が氷見に着くと番屋街行きの連絡バスが待つてゐて、これに七、八人が乗つたかしら。バスが出ると氷見線の終着駅にはアタシらだけが取り残された。氷見駅の駅舎外のモダンな公衆トイレもウォシュレット完備で洗面台でお湯が出たのには驚いた。かつての氷見街道が国道160号線で本町の商店街なのだが今までこれほどシャッターの下りた商店街は見たことがない。壊滅的。「おがわ」といふ海鮮の小さな食堂を見つけて昼食。折角なので氷見うどんと小エビの天ぷら。結構有名なお店らしく芸能人の立ち寄りで色紙や写真が随分と飾つてある。氷見駅前(といつても駅から離れた国道沿ひ)を13:13に出る下りのバスに乗り富山湾岸を走り30数分で終点の脇。氷見を出ると買ひ物や病院帰りの客や帰宅の学生も乗つてゐたが、このバスを逃すと次は2時間後。学生もバスが停まつてから席を立つ、のんびりな感じ。これは金沢市街でも同様に覚えた。


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は湾岸の小さな集落で何でこんなところが終点かといふと石川県(七尾市)との県境。こゝで4分後の13:50発の七尾行きのバスに乗り換へる。氷見から脇へのバスが数分遅れると七尾行きに乗り遅れ今日の予定はもうアウト。しかも前者は加越能バスで後者は北陸能登バスなので遅延の調整などあるのかしら。念の為、氷見駅の観光案内所で尋ねてみた。高岡発で氷見経由の和倉温泉行きのエクスプレスバスが午後も1本あるのださう。だが出発は路線バスより1時間近くアトで山間の自動車専用道路を走るさうで、それぢゃ車窓からの沿岸の眺めを楽しめない。観光案内所のお姉さんにアタシの路線バスの行程を伝へると笑顔で「大丈夫ですよ、この乗り継ぎを逃すともう今日は七尾に行けないから、ちゃんと待ってゝくれますから」。脇から七尾までの沿岸の路線からの眺望もじつに見事。乗客はアタシたち2人だけで貸切。沿岸からバスは岬の手前で軽い山越え。雨が雪になつた。この雪はそれなりに積もりさう。14時半に七尾着。


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七尾は内浦街道の町で一本杉町といふ商店街に古い商家が並び今もかなりの店舗が営業を続けてゐる。


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日本海側の港町らしく昆布を扱ふ「しら井」といふ店で塩こんぶや寒鰤の昆布巻きなど購入。七尾の滞在は1時間で15時半に七尾駅前から和倉温泉行きのバスに乗る。鉄道で和倉温泉駅に到着だと温泉街まで更に距離がある。和倉温泉駅からバスで温泉街に行かうとすると、この七尾から1時間に1本のバスを待たないといけない。七尾と和倉の間にもかなり集落があるが小学校は市街の学校に統合されたやうで小学生もこのバスで帰宅。20分ほどで和倉温泉着。和倉温泉の「総湯」。総湯は温泉にある共同浴場のことで北陸ではさう呼ばれるさう。「元湯」とは厳密には意味が違ふ(はず)。この総湯のあたりが元湯なのだが。1時間以上お風呂にゆっくりと浸かる。

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午後6時の福ちゃんの開店を待ち飛び込む。温泉街で温泉宿が夕食つきのなか居酒屋と称する食肆に来る客なんてゐる?と思ひきや繁盛で今晩もアタシらのあと3組とお一人さまでほゞ満席。それだけこの店で供する七尾の魚が美味い。


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七尾に上がる富山湾の魚介が美味い上に福ちゃんの包丁さばきなのだらう。ちょうど一年前に来て「今までの人生でいちばん美味しい刺身」を頬張り今年は「福ちゃんで魚がまた食べたい」と思つてこの旅行を組んだのだ。

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能登の美味しいお酒を何杯もいたゞき至福のとき。ご亭主も女将さんもとても親切で二度目でもう本当に親しく接してくれる。また来年の冬、寒鰤の美味しいころに来ないといけない。2時間半ほど食べて飲んで、といつても食べたのはお刺身と最後にご飯を貰つてヅケにした寒鰤のトロを頬張つただけ。だが「二人前」の刺身の盛り合わせは東京なら五人前か。路線バスは晩7時前に終はり。タクシーを呼んでもらひななお温泉駅に行き20:50の七尾行きの普通列車に乗る。特急なら金沢行きの直通があるが15時台が最終で普通列車は七尾までは第三セクターのと鉄道)なので七尾で乗り換へ金沢に22時半すぎに戻る。

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金沢は市街も数センチの積雪。タクシーでホテルに戻る。金沢駅のコンビニでは夜食なのか明日の朝ごはんなのかおにぎりがかなりのペースで売れてゐた。

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