癸卯年正月廿七日。気温摂氏▲3.5/10.9度。快晴。今年7月に開業する水戸市民会館の内覧の機会あり末尾を汚す。七月の杮落しは野村萬斎の三番叟とゆずのコンサートださう。12月にはこちらを会場にG7茨城水戸内務・安全担当大臣会合(茨城県)があり水戸の旧市街地の活性化と期待されてゐるらしい。
この泉町1丁目は水戸駅からは1.3kmほど離れた場所になるがかつての商都水戸の中心地。この市民会館の場所に地元の志満津百貨店(のちの京成志満津)があり国道50号線を挟んで(現在の京成百貨店の場所に)伊勢甚百貨店あり、それは賑やかな繁華街で、この俯瞰図(上)の手前にあたる路地にアタシは育つた。京成百貨店が伊勢甚跡地の再開発ビルに移つたことで旧京成の土地を市が大規模な再開発を計画。水戸芸術館までのエリアを"MitoriO"と称して活性化させるのだといふ。
建築設計は伊藤豊雄先生。木材を組んだ櫓を内部空間に取り入れ建物全体で約1.5千㎥のカラマツ(耐火集成材)を使用してゐるのだといふ。伊東豊雄の設計としては国内でこれまでの最大規模なのだとか。
館内の案内板から壁、床まで木、木、木とふんだんに木材を使ひ、この設計と施工は実に見事なもの。ロゴや案内板などの設計は直近の東京五輪の時のデザイナーなのだとか。
内装は色使ひがアタシの好み同様にアースカラーか和の色合ひでとても落ち着いてゐてケバケバしい色が全くない。こどもギャラリー(キッズスペース)までとても地味な色だつた。
そんな新市民会館で違和感あつたのが大ホールの設計。客席側壁の梅のイメージなのだといふ反響板兼用の意匠が何だかおちつかない(ちなみに音響設計は永田音響)。全体に緋色といふか丹色といふか地味なようで主張が強い。中ホールの方がまだ落ち着きがあると思つたものゝ画像だと大ホールの両壁の色が強いが肉眼ではそこまでケバいものではなかつた。
和室は茶席になるやう座敷に炉がきつてあるのだが、その点前座であらう位置方向に床があり久が原T君に聞いたが地袋の上は琵琶台といふのださうで琵琶を置く由来。広間での茶会なら風炉前屏風立てられ、さうすると琵琶台に飾るものが映えないのではないかしら。床の間をもつと部屋の中央にして琵琶棚は床の右に配せるとか。和室からの空中庭園の眺めは良い。
市民会館の屋上から水戸芸術館を眺める。本当にきちんとしたポストモダンの主張をする低層建築だとわかる。それに対して伊東豊雄のこの市民会館は「箱物行政」をどれだけ有意義なものにできるかの一つの解答なのだらう。