陰暦四月十日。気温摂氏9.0/20.3度。曇。
憲法記念日に朝日新聞は石川健治先生(東大)が憲法を語られてゐて樋口陽一先生は今年米寿をお迎へになるのだから第一線を退きお家のある仙台でゆっくりお過ごしのことかしらと思ひながら『憲法を学問する』(有斐閣)を読む。2016年6月に八王子の大学セミナーハウスで2日にわたり開催されたセミナー「憲法を学問する」を書籍にしたもので樋口陽一先生を中心に陽一先生が東大法学部で教鞭をとつた時代(1980~95年)に樋口比較憲法論を学んだ優秀な教へ子たち、それぞれが憲法学者として業績を残してゐる石川健治(東大)、蟻川恒正(日大)、宍戸常寿(東大)と木村草太*1(都立大)が樋口先生との憲法談義。よつてそれは「樋口教授と愉快な学生たち」なのだが、このセミナーでは蟻川先生の個人主義と個人の尊厳に関する思考が際立つており他の3人のお弟子たちも蟻川先生をかなり意識的に?憲法学の中心に蟻川先生を引き戻さうとしてゐるかもしれない。周囲の応援に応へるかのやうに蟻川先生はこのセミナーの翌年(2017年)7月から朝日新聞に「憲法季評」の連載を開始。じつに見事な論評であつた(2020年1月まで)。
蟻川恒正(憲法季評)「こんな人たち」首相発言 国民を「個人」と見ぬ不明 :朝日新聞
「晋三の7年半」につき蟻川先生のこの論評は見事に晋三政権の本質的な誤りを突いてゐる。だが蟻川先生も指摘してゐるが、この政権を実現させたのは我々有権者なのだから「落とし前」のつけやうもない。
樋口先生も指摘してゐたことは戦後つい最近までは自主憲法制定を党是とする自民党政権であつても「憲法愛国主義」(Constitutional Patriotism)があつて中曽根大勲位が改憲志向でも彼は憲法の大義であるとか立憲主義といふ理念の重要性は理解してゐて三権分立といふ制度をも脅かすことはないといふ安全あり。それが晋三になると立憲主義も蔑ろにして三権分立も理解できず(内閣総理大臣を立法府の長とまで誤解できたのだから)。小林節先生が親自民の改憲路線を否定するに至つたのだから。このやうな戦後日本の危機にあつて最高裁判所は高度の政治的判断を伴へば機能不完全なのだから憲法学者に縋るしかないのかもしれない。日本の憲法学が東大法学部において美濃部達吉、宮沢俊義、芦部信喜といふ流れがあり、美濃部門下の清宮四郎(東北大)から樋口陽一となり陽一先生が本家本元に入り現役の優秀な憲法学者らを育ててゐる。安易な改憲風潮は最終的には国民の判断に改憲を委ねるが、そこにかうした伝統的な日本の憲法学の権威があるのだから生半可な改憲志向がこの憲法学を論破できないことは明らかではあるだらう。だからといつて無知ほど無敵なことは晋三が見せた通りで理性など論破どころか権力となれば無視できるから怖い/\。それをさせないのが立憲主義そのものなのだが。
行政長官選挙に「当選」した李P家超が中聯弁主任・駱某に謁見し当選のお礼とご挨拶。今回の行政長官選挙は「香港の特色ある民主発展」の途が正確であり前景は光明がさしてゐることを明らかにした……と中聯弁主任。何でも中共の都合よく「特色ある」にしてしまふのだから。普遍的な価値体系で「特色ある」は矛盾するのだが中共こそ善であるから。