富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

E653系(国鉄色)で往く鉄道博物館への旅

陰暦二月十七日。気温摂氏4.3/16.8度。

本日、JR東日本の水戸支社企画でE653系国鉄色塗装)*1で往く鉄道博物館の旅といふ企画あり参加。


f:id:fookpaktsuen:20220320181221j:image

f:id:fookpaktsuen:20220320181314j:image

水戸駅発08:20で8時までに水戸駅改札前で当日受付だつたが座席は予め指定されてゐるやうだし8時の10分前くらゐに受付に行つたら水戸から何十組が乗車か知らぬがアタシのあとにまだ受付済ませてゐないのは1組だけ(今日はこのあと鉄道ファンの時間の正確さには兎に角集合時間に遅れる人なんて皆無なので驚くことになる)。勝田発のこの列車は水戸駅で駅長、助役らの送迎のなか出発。快晴で偕楽園公園の梅が満開の鉄道旅行日和。

f:id:fookpaktsuen:20220320181241j:image

車内では今日の参加記念品やお昼の乗車記念弁当*2が配られる。この列車は特急車両だが常磐線の朝の過密ダイヤの中を時間調整しながら走るので停車駅は土浦だけなのだが特急(ときわ60号)に抜かされるばかりか鈍行を抜かすこともできず上野到着は10:27で水戸から2時間余つまり鈍行でも遅めと同じ時間をかけたことになる。列車は上野東京ラインに入り品川では25分も停車。パンフレットでは経由に「横須賀線」とあつたので品川から横須賀線で横浜で折り返して新宿湘南ラインにでも入る芸当を見せてくれるの?なんて期待もしたが甘かつた。横須賀線ではなく品川を発ち品鶴線の旧目黒川信号所(1.3km地点)まで走り山手貨物線に入り大崎方面へといふ成田エクスプレスの新宿方面行きと同じ通行経路。目黒の谷を抜けると恵比寿あたりから線路沿ひを歩いてゐる人が「あれ?」と珍しい国鉄特急を眺める。やはり子どもたちの関心度高く公園でサッカーやドッチボールなどしてゐても、この珍しい列車が通るとゲームは中断で口をあんぐりと開けて。一番誰も関心を示さないのは新宿駅。あまりにたくさんの列車が通るからいちいち気にしてゐられない。列車は大宮へ向かふわけだが池袋から埼京線なんて通り抜けられるはずもなく駒込の先から中里トンネル(中里トンネルの謎: 気まぐれ写真日記)を抜け東北本線(宇都宮ライン)に合流。つまり常磐線から三河島から日暮里に入りぐるりと山手線の外回り(時計回り)に駒込まで来て東北本線に入つたわけで山手線で今日走つてゐないのは駒込〜日暮里間だけ。駅でいへば田端と西日暮里の2駅といふことになる。12:25に大宮着。水戸から大宮まで実に4時間5分の長旅。鉄ちゃんなので鉄道に乗つてゐるだけで線路の分岐を見てゐるだけでも飽きないのだが。とんでも混雑の大宮駅から埼玉新都市交通ニューシャトル)で鉄道博物館へ。JRがE653系の特別列車ならニューシャトルも団体専用列車として1990年に導入された1050系の52編成(東北新幹線やまびこ塗装)を宛つてくれる心憎い提供である(復路の団体専用列車は最新の2020系)。f:id:fookpaktsuen:20220320181631j:image

鉄道博物館参観は初めて。香港から東京に戻つてゐるときに一度訪れたいと思つてゐたが実現できずにゐた。4時間以上の参観時間がとられる。皆さん(この団体に限らず)まず鉄道ミュージアムショップに出向く方多し。限定商品など入荷少ないアイテムは朝のうちに売り切れてしまふらしい。ガイジンの鉄ちゃんで彼は鉄道関係のガチャ玉オタクらしくガチャ玉を買つて開けては中身を説明する動画撮影といふか、あれはライブかもしれない、に夢中。いろ/\な変人少なからず。


f:id:fookpaktsuen:20220320181435j:image

f:id:fookpaktsuen:20220320181857j:image

今日のために481系のプレートが「ひたち」になつてゐる(ひたちは485系なのだが)。車内が懐かしいかぎり。このエル特急の登場まで常磐線では急行ときわで祖母や父は普通車のボックスシートを嫌ひときどきグリーン車に乗せてくれてゐたが特急ひたちの登場で特急でグリーン車を選ぶことはなかつた。


f:id:fookpaktsuen:20220320181945j:image

f:id:fookpaktsuen:20220320181948j:image

やはり鉄道の旅で寂しいのは吉田健一も書いてゐるが新幹線の登場。それによつて寝台列車が消滅。アタシが最後に乗つたのは昭和63年に京都南座で顔見世のあと急行銀河で東京に戻り、そのまゝ仕事に行つたとき。自分が百鬼園先生と同じ時代に生きてゐたらやはり何としても特急の展望車に乗つてみたかつた。実に優雅な旅である。


f:id:fookpaktsuen:20220320181345j:image

f:id:fookpaktsuen:20220320181342j:image

鉄道博物館の楽しみは鉄道関連設備の保存と展示。アタシの大好きだつた「みどりの窓口」のマルスのシステム。子どものころ、これで特急指定席券など発見する職員の手捌きを憧れながら眺めてゐたものだつた。


f:id:fookpaktsuen:20220320181650j:image

f:id:fookpaktsuen:20220320181653j:image

今日はこの団体による見学のためにジオラマNゲージ)も昨年の常磐線全面復旧記念に作られた「花咲く常磐線」の演出があり常磐線651系や657系、かつての蒸気機関車に牽引された客車特急「ゆうづる」なども走る。水戸支社の運転手や車掌、整備職員らによる「鉄道のおしごと」の発表もあり。


f:id:fookpaktsuen:20220320181311j:image

f:id:fookpaktsuen:20220320182024j:image

このE653系国鉄色)は常磐線では今月初旬には「水戸うめ号」だとかもあつて何度も走つてゐるのだが松戸や撮り鉄の聖地北千住など撮影隊が多く、品川でも大宮でも歓待を受けた感あり。映像は撮らず録音だけの音テツも。中にはホームに平伏して撮影といふより後ろ姿は列車を拝んでゐるやうな少年もゐた。気持ちはよくわかる。自分も君くらゐの年ごろ鉄道駅のホームに張り付いてゐたものだつた。

撮り鉄も「かなり」だが、この今日の特別列車に普通車で16,000円もかけて乗車してゐる人たちもかなり個性的。基本的に「乗り鉄」なのだが、ずつと車窓からの風景とかを録画する映像家、朝から車窓の風景を眺め延々と飲み続ける「呑み鉄」、時刻表に首ったけの「ダイヤ鉄」、連れてきたJRマスコットなのだらう馬のぬいぐるみ🧸を被写体に沿線の風景や鉄博での光景など写真に撮るオバサン、ずっと寝てゐるオジサンなど様々。

f:id:fookpaktsuen:20220320182056j:plain
f:id:fookpaktsuen:20220320182059j:plain
復路では皆さん大宮駅構内の鉄道グッズショップ〈レールヤード〉で爆買ひ。この店の店員も「今日って鉄博で何かあつたの?」とあばらかべっそん。そこで見かけたグッズで凄いのはCOQTEZブランドの国鉄時代のブルートレインの車内に一歩足を踏み入れた瞬間の「あの独特のにおい」のルームフレグランス。「ちょっと消毒液の匂いが漂う植物性のほのかな香り」なんて誰が買ふのか?と思ふ25千円(税別)。テスターがあつたら嗅いでみたかつた。ちなみにこの会社(こちら国鉄時代の懐かしい香りとか、国鉄の椅子の布地とかでレプリカ販売したりしてゐる。たゞこのルームフレグランスはもう販売していない?としたら、このレールヤードにある在庫は稀品なのかも。このフレグランスの右隣りにある、国鉄時代の飲料水用の使いして紙コップ、その収納ケースも含め再現って、これはすごい。
大宮駅7番線ホームより復路の列車は17:25発車。ニューシャトルから鉄道グッズ店を冷やかして大宮駅北口から改札を潜つたら弁当屋がない。復路の夜の弁当は供されないので自前。大宮駅構内エキュートの弁当や(旨囲門)はエキュート(南口)であつて北口のエキュートノースではなかつた。もう出発時間も近く一旦、中央改札(北)から出て中央改札(南)に入り弁当やで「深川めし」購入。これがあればアサリを肴に酒を飲み煮汁の滲みたごはんを食べれば良い。宝酒造缶チューハイワンカップ大関。進行方向右に「大宮操」の桜は寒桜ですでに葉桜。これを花に詳しい久ヶ原T君にSMSで送つたら、やはり「誰かむかし大宮に貞女ゐて夫に操を立てゝ潔く自害でもした墓標のあっぱれ名桜か……」とやはりさう思ふでせう。大宮操車場を大宮操といふ。そこに誰が植えたか桜の名木が鉄道の乗客の目を楽しませてくれる。列車は与野のあたりから東北本線から地下に潜り武蔵野線に入る大宮支線→西浦和支線から武蔵野線に合流して武蔵浦和の複雑な構造を眺める。午後から雲行きが怪しかつたが、このあたりで雨となりかなりの本降り。武蔵野線沿線は日没と雨で車窓からほとんど何も見えないのが残念。せっかく通常なら特急走行のない武蔵野線を走るのだから復路はせめてあと1時間早くしたら良かつたのに。武蔵野線から常磐線へは営業路線上の乗換は新松戸駅だが秋葉原のやうな交叉駅で列車は南流山から北小金への貨物用の連絡線を走り常磐線に入る。今日は往路で品川を出て品鶴線の旧目黒川信号所ルート、駒込から王子への中里トンネル、そして先ほどの大宮支線→西浦和支線を通つたがいずれも成田エクスプレス新宿湘南ラインや大宮発の武蔵野線は「しもうさ号」が通常運行の路線であつて、この武蔵野線から常磐線への南流山北小金が唯一、通常の営業運行のないルートなので貴重だつたのだが真っ暗でまことに残念。武蔵野線は元々は山手貨物線を代替する東京外環貨物線として計画されたもので、それゆゑに常磐線東北本線高崎線、中央線(新小平〜国立への連絡線)と結ばれてゐる。府中本町から鶴見の71kmだかは(旅客運輸は南武線で)貨物専用の武蔵野南線が結んでゐる。かのやうな鉄道は全国的にも稀なもの(大阪では大阪駅を迂回して環状線の福島〜新大阪の連絡線あり)。
E653系国鉄色)の列車は19:54に水戸駅着。復路では常磐線も下りで取手以北なら抜かれることもないかと思つてゐたら最後の最後、水戸の手前の赤塚で特急ときわに抜かれた。水戸を朝08:20に発つて11時間30分の鉄道の旅となつた。

*1:特急フレッシュひたちとして常磐線を走つてゐたE653系(1997年登場)の特急車両は、2012年春のダイヤ改正でE651系(スーパーひたち)とともにE657系に置換へとなり「スーパー」と「フレッシュ」の「ひたち」から特急「ひたち」と「ときわ」に。E653系は新潟車セに配属され特急「いなほ」「しらゆき」となつてゐたが1編成が懐かしい国鉄485系常磐線ではエル特急ひたち)塗装され2019年2月から臨時列車として運行されるやうになり水戸支社の勝田車セに戻つてゐる。

*2:中身は水戸駅で販売されてゐる「しまだフーズ」製の「常磐街道味めぐり」1,500円でお世辞にもあまり美味しいものではない。