富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ポンタへと届け春の音朗々と晴海に響く山下洋輔 

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昨日の台鐵での列車事故。東部幹線の難所、大清水隧道入口で特急太魯閣号に崖上から作業用トラック落下で直撃。半百の死傷は台鐵史上最悪の惨事に。

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今でこそ鉄道で台湾一周出来るが、それは高雄〜台南の南廻線全線開通を1992年まで待つてのこと。台湾の鉄道といへば日本統治時代の建設が印象的だが東部は台北から蘇澳までは鉄道を敷いたが断崖絶壁続く蘇澳から花蓮は隧道掘削が終はらないまゝで平野の続く台東〜花蓮間に軽鉄を大正15年に走らせただけであつた。そこが開通は1980年。殊に昨日の事故があつた崇徳〜和仁駅間(崇徳帝に和仁親王か)は隧道が続き今回の工事現場も隧道改良工事だつた模様。東部幹線は海岸沿ひでまことに風光明媚なのだが。


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今年の清明節は陽暦四月四日。台湾ではその連休で郷里に墓参と帰省多くなる周末の事故。今年は耶蘇の基督受難日から復活祭も重なり香港も連休。一国両制解体で、いつ祝日も中共に準拠かしら。大公報は墳墓でのキャンピングカー乗りつけてのキャンプ叱り文匯報は長洲島が行楽客で感染リスク高と嘆いてみせる。


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5日前に山桜が美しかつたのは常磐線でいへば岩間駅から東に臨む吾国山(ドローン画像は拾ひもの)。今日はもはや山頂まで若草色の葉桜となつてゐた。巣鴨に家人の家の墓を詣でる。巣鴨は裏通りを歩行者の間を縫つて暴走する高齢者の自転車が怖い。なんてスピードなんだ。


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ソメイヨシノで染井霊園には桜も見事。4月の初旬だといふのにもう散り始めてゐる。3月の水戸の平均気温は摂氏10.7度。昨年は9.3度、一昨年は8.7度で二十年くらゐ前までは平均で4度から5度なのだ。この10.7度は観測史上最高。桜もこんな早く盛りを過ぎてしまつた。 


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巣鴨地蔵通もコロナ禍で人出もけして多くはない。家人に誘なはれ人気のときわ食堂へ。まだ午前11時過ぎだが美味そうなフライなど肴に早酒の客多し。なんて健全なのかしら。


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お品書きを見れば、どれも1千円以下。ここには写つてゐないが煮魚や刺身森合せは千円超えだが量も十分で良心的。かなりのご繁盛で店頭の揚げ物売り場でも出す端から売れてゆく。


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高齢者ほど感染警戒で外出控へるべきところお茶屋を覗けば婆さんたちマスクも外してまぁ歓談賑やかなこと。巣鴨駅前の伊勢屋で豆かんと豆大福。5日前は銀座の若松で豆かんだつた。巣鴨から天気も良いので地下鉄に乗りたくないと山手線で有楽町。晴海行のバス停に立つたら向かひの新有楽町ビルヂングの角にとんでもない行列で民間のPCR検査場所かと思つたら人気のカフェ&レストラン(6th by ORIENTAL HOTEL)でオリエンタルホテルといふからバンコクのオリエンタルがカフェの出店かと思ひきや神戸の、で株式会社Plan·Do·Seeによるプロデュース。

オリエンタルホテルのメインダイニングが「もしも東京の中心にあったなら」をコンセプトにオープン。 神戸開港間もなく開業した日本最古のホテル·オリエンタルホテルのエッセンスを取り入れた異国情緒ただよう空気と、有楽町を行き交う人々のライフスタイルに合わせ、朝のコーヒーからランチ、カフェ、ディナー、バータイムまで営業するオールデイダイニング。

それにしても行列に並んでまでねぇ、と思ふ。さういへば巣鴨でも、ときわ食堂も昼近くになると行列になつてゐた。こういふのを見てゐるとコロナ禍なんてどこ吹く風のやう。都バスで晴海。月島、佃までは来たことがあつたが晴海は初めて……と思つたら小学5年生のときに1つ上の従兄S君と「さんふらわあ」に乗船して松坂から奈良、京都と旅したときに晴海埠頭を出発してゐた。門前仲町からバスでМ伯父がそこまで同行してくれてゐた。夜で真っ暗な殺伐とした埋立地。そこが倉庫街となり今では高層マンション林立。その中心地にトリトンスクエアといふ開発区*1オフィスビルの下に消費場所あるがお台場などに比べると中途半端な場所で地元マンション民を除けば、こゝまで来客もなく店舗もパッとせず所謂「痛い」ものあり。そのトリトンスクエアの中央にある第一生命ホール。第一生命といへば御堀端の進駐軍総司令部で第一生命ホールはその6階(こちら)。杉村先生の<女の一生>や<欲望という名の電車>そして三島由紀夫鹿鳴館>の初見もこゝだつた由。

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山下洋輔さんの演奏を生で聴くのは初めて。新潮の『波』に連載されてゐた山下洋輔エッセイ『猛老猫の逆襲』にも登場する信州H兄が確保してくれたチケット。会場は歌舞伎座ところか宝生能楽堂、いや高齢者でも圧倒的に男性が目立つので「全国年金受給者団体連合会の総会」の如し。山下さんも傘寿。昭和40年代に山下洋輔トリオで早稲田4号館のバリケードの中で演奏を聴いてゐたキャリアのやうな老人多数。山下洋輔と一緒に年をとつてゐるのだ。このホールでの春のコンサートはもう20回超。昨年末に発表されたCD(Quiet Memories)の曲の流れで演奏が始まる。単純な証明セットなのだが今の技術はこんなに優れてゐるのかと驚かされる。ピアノはスタンヱイのD274で、この音響の良い最適なサイズのホールで十分な音量なのだが山下洋輔チームの音響設計できる方の工夫でピアノの譜面台をピアノの下に譜面台を立てて据ゑることで、それと別に山下さんも「これが何だかわからないけど」箱が2つほど置かれ、電気的に音を増幅することなく更に豊かな音になつたさうな。中入り後、MCで山下さんが三月初に亡くなつた村上ポンタ秀一さんについて語る。昨日お弔ひにいつてこられたさう。一緒にライブで演つてゐた“I will remember April”を捧げる。激しい曲の多い山下洋輔にあつてポンタさんは山下さんのスローで静かな曲がとても良いと言つてゐたと思ひ出語り。最近、童謡を何気に弾くことが多いさうで<赤とんぼ>から流れでいくつかの童謡を浚ひ<仙波山>。そして<ボレロ>でアンコールに<さくらさくら>。また来年もこの桜の季節にこゝで、と山下洋輔。今朝は巣鴨の高齢者自転車が怖かつたが、このあたりのお母さんたちは子どもを電動自転車に乗せて、これもかなりのスピード。見てゐてハラハラする。あれが転倒したら怪我もひどいだらう。銀座通りも車道をぐいぐい走る母子自転車を見かけるが晴海あたりからの遠征でブイブイいはせてゐるわけか。

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何だかんだいつて殺伐とした風景の、アタシにとつてはウルトラセブン的な黄昏の晴海から橋を一つ渡り月島となると昔懐かしい下町。月島といへば、で岸田屋は店が開いて、もう狭い店内は早飲みの酔客がずらりと並んでゐるが壁に面した一角が辛うじて開いてゐた。酒はキクマサ。初夏のやうな暖かさもあるが客はビールか酎ハイばかり。お燗でもさすがに温燗でと頼んだら、まぁこれが絶妙な人肌で、さすが。

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アタシらの次の客からは外で待ち。客はみなさらりと。長っ尻は野暮。月島は歩行者天国で「もんぢゃストリート」と何だかもんぢゃ焼きやばかりでもんぢゃを食べやうなんて思ひもしないアタシには異様な光景。昔はさま/\な商店が並んでゐたのだらうが居抜きでみんな、もんぢゃ焼き屋でまるでテーマパークの中にゐるやう。月島から有楽町線ラク町へ。 

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東京国際フォーラムの地下は人影もなく、まるで〈惑星ソラリス〉のやう。東京駅まで歩き高速バスで水府に戻る。

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真言宗豊山派岡本寺(奈良明日香村)のはがき法話

陋宅で廊下の夜間照明がLEDでやたらと眩しい。珈琲の紙フィルターを被せてゐたが何だか雪のすげ笠のやうで、ふと思ひついて照明器具を逆さにしてポチ袋を穿かせてみる。ポチ袋でもまだ眩しいので内側に藁半紙を重ねて光量を抑へてやつと満足。

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*1:(ヰキペディア)海に囲まれた街である晴海をギリシア神話の海の神であるトリトンと掛け合わせ、さらにトリ=Tri=3をキーナンバーに、職・遊・住の3つの都市機能の調和性と、3棟のタワービルのイメージを併せて命名された。また、この3棟のオフィスタワー(X棟、Y棟、Z棟)の他にW棟があり、この4つからスクエア(四角)と名付けられた。