富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

舟納豆


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九龍で太子(Prince Edward)から界限街(Boundary St)を南に超へると広い公園の向かふに小高い崗があり地図に名もなく貯水庫とある。香港には高台に食用水の貯水庫があり有蓋で、そこに上がると一応の鉄柵はあつたが、あちこち破られてゐて付近の住民が崗上の広場で遊んでゐた。中国から食用水が供給されるやうになり香港の各地にある貯水庫も水塘のやうに役割を終へてゐる。この崗上の貯水庫もそのまゝ放置すると上蓋が崩れて危険なので取壊し工事。地面を掘り始めると、そこに現れたのは巨大な貯水庫のプールではなく古代ローマのアーチ型建築を模したやうな見事な空間が出現したのだといふ。

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香港も近年、歴史的建造物の保存にやつと慎重になつたが市役所(古蹟担当局)も此処を単なる有蓋貯水プールと理解してゐて地下にこれほどの構築物があるとはあばらかべっそん。蘋果日報によれば中文大学(暴大)の建築史専攻の院生が数年前に史料から、この貯水庫の図面を得て市役所でも貯水庫管轄する水務署は地下に巨大なローマ風呂の如き状況は掌握してゐた由。 

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この崗は太子から見ると平地のなかにぽっかりと頭を出してゐるやうに見える(上の写真の緑色囲み)。だが空中写真で見ると実は周辺の平地が高台を削岩して開かれたものなのがよくわかる(同、黄色線内)。元々は九龍半島の南北に延びる尾根。半島の付け根にあたる獅子山の方から九龍塘、何文田(加多利山)に続く高級住宅地、そして白田、石硤尾と深水埗のかつて難民アパートと呼ばれた公共団地がその造成地に出来て、その富裕と貧困が、この崗を境界にするやうに東西にわかれてゐた。(航空写真で見ると)家屋建物の個々の大きさの違ひが明白なところ、この崗の北側で平民区である白田団地が東の九龍塘(又一居)に繋がつてゐるやうに見えるが、これはその間に香港城市大学があり、この大学が30年前にできる迄はこゝは緑地帯で区分となつてゐた。

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香港市役所が公務員に対して市役所の公意に実質的に隷属誓はせる内容の暴露(蘋果日報)。香港や中共に限らず公務員が法律や政策に異見は憚られるところだが個々人の政治的信念までをも盲従させることの怖さ。

香港は明らかに中共の政治的統制下に。党国家の安定を壊すと判断される行為、言論はすべて否応なく罰せられる。それを産経新聞は「反共」の立場であるから香港の社会主義化と称してゐる。

これについて『香港通信』の元編集長Y君が興味深い指摘。

社会主義や資本主義は経済体制のことで、この23年間は中国の社会主義が事実上崩壊して資本主義化が進んでいる。「民主主義とは無縁の資本主義」もあって英国植民地時代の香港がそれ。香港の中国返還が決定した1984年当時は中国に民間企業は存在せず国営企業人民公社の時代。個人企業(個体戸)も従業員は5人まで。「中国返還で財産が没収されるかも!?」と恐れた香港人に対する約束が資本主義を維持する「一国二制度、五十年不変」。

それがいつのまに民主主義の話になつてゐるのか?と。中国返還が決まつた1984年当時は香港に選挙といふ制度はなく議員はすべて総督が任命し総督は本国政府が任命。

もし「一国二制度、五十年不変」が民主制度の話だとしたら返還後は総督を行政長官に置き換えて2047年まで議員はすべて行政長官が任命し行政長官は中国政府が任命するんかい!?

と。些かシニカルな見方に思へるムキもあらうが、これはじつに冷静な分析だらう。注視しなければならないことは、その1984年の中英の合意のあと天安門事件が発生し香港の運命にそれが大きく影響して今日にしてゐるといふこと。


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正月ように活けた寒梅だつたがドカンと大きな地震の揺れに慌てゝ花瓶を押さえる。直下型で震度4。水府ではけして珍しい揺れではない。 


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納豆が特産の水戸でも、この「舟納豆」はかなり評判で値段も安くはないが水戸京成百貨店の売り場ではよく売れてゐる。初めて食べてみたが豆もしつかりとしてゐて風味も見事。

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お昼はご近所の馴染みの食堂に出かけたら店の卓にはずらりと鏡餅やのし餅が並び、気づくと軒先に「本日は食堂は休み」と張り紙あり。年末は餅の製造と販売に専念の由。暖簾を潜つたら当然、餅を買ひに来たと思はれるわけで「あれ、お昼にラーメンと団子のつもりで」とはいへず切り餅贖ひ年末の挨拶済ませ近くのキッチンでボリュームたつぷりの定食。 

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