富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

R.I.P. Dr Nicholas Tapp(1952-2015)

fookpaktsuen2017-03-29

農暦三月初二。ふとした偶然で文化人類学者Nicholas Tapp博士一昨年されてゐたことを知る(Royal Anthropological Instituteのサイトに訃報あり、こちら)。享年六十二。90年代当初、アタシが香港中文大学の文化人類学系で修士課程に在籍のときの指導教官のお一人。当時、同学系の主任教授は謝劍博士で中国の少数民族研究では第一人者だつたが台湾出身で根っからの外省人、そのうえ蒙古や新疆、西蔵は中国領土で当然といふ偏見ぶりでうんざりだつたが、その学系にTapp教授と同じ台湾から陳其南博士(こちら)がをり、このお二人には親しくしていたゞく。陳博士は内省人民進党派、2002年に阿扁総統(第一期)で行政院政務委員に抜擢され台湾政府の文化政策のトップに。Tapp博士は倫敦大学SOASに戻られ、その後、豪州国立大学で教鞭をとられてゐたが2010年から上海の华东师范大学の人類学研究所の発足させ滬にての客死。構造人類学レヴィ=ストロース理論などかなり有意義な講義を拝聴した当時。Tapp博士は大の愛煙家で研究室では煙草の煙が途切れずマイルドセブンがお好み。当時、沙田のヤオハンで日本のタバコ売つてをり先生のマルルドセブンとアタシはハイライトを購入して先生との個人指導の際は研究室でタバコ吸ひながらの楽しい時間。学究派で「もう若くないから」とフィールドワークもしない、研究室でずつと喫煙してゐて「自分の死因は間違ひなく肺癌だし、長生きできない」と笑つてゐたが、それが現実に。哀悼。
▼一昨日、リンテイゲツガ(777)が行政長官選挙当選の翌日、2014年の雨傘騒動の主要活動家9名逮捕された。彼らがいくら正義心に基づかうと道路占拠は違法で刑事罰免れないはずだが2年余も逮捕されぬまゝで、その逮捕がこの日といふのも当てつけで何とも。リンテイゲツ(777)就任で更に余計な反発承知でのこの措置は何を考へてゐるのか。


小学校道徳の教科書検定の結果「にちようびのさんぽみち」との教材に登場していた「パン屋」が「和菓子屋」に変更された。学習指導要領が求める「我が国や郷土の文化と生活に親しみ愛着をもつ」との点が不足すると文部科学省が指摘し出版社が修正した。パン屋では日本らしさが欠けるということか。同様の理由で公園の遊具が和楽器の店に差し替えられた。もう50年以上前だが評論家の加藤周一が仏教伝来や洋服などを例に日本は雑種文化であると論じた。「日本精神や純日本風の文学芸術を説く人はあるが同じ人が純日本風の電車や選挙を説くことはない」と書き偏狭な日本主義者を批判した。和菓子や和楽器にすがって国や郷土への愛を説くとすれば滑稽というほかない。本質よりも体裁にこだわる大人たちの姿である。まさか反面教師としての教育の一環ではあるまい。