富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

水楢の樹も秋を待つ暑さかな

fookpaktsuen2016-10-28

農暦九月廿八日。この時期に摂氏30度超へでかなり暑いが見事な秋晴れ。晩に北角の料理屋で宴会あり末席汚す。また今日も石班魚を解していたら黒服の総経理に「ウチで働かないか?」と言はれてしまつた。ウオツカ一瓶持参でお振る舞ひしつゝちびちびやつてゐたらアルコールに火がつき一人で銅鑼湾に出てバーS(今週三度目)から鵝頸橋を潜りバーMで独酌。
 水楢の樹も秋を待つ暑さかな
たまには日本のウヰスキーも飲みたいが高いしミーハーと思はれるのが癪。でも今晩は一杯だけいたゞく。グラスの切子が美しい。
 去らぬ夏も去なねば仕方なき白州
深更に至る。
▼「仮装しないといけないのか」といふほど忌まわしいハロヰンのアジア的な騒ぎぶり。これをはじめて認知したのは中学生のときに英語の教科書であつた。これについて郷里の畏友J君(高校で日本史の教鞭をとる)が顔本に書いてゐるので引用。

地方の奇祭(みうらじゅんのいっている「とんまつり」)だと思っていた……。40年後、こんなに一般化するとは。ケルト人の土俗的宗教行事をアングロサクソン系の地域と彼らが移民した地域だけに広めたもので、世界的には広がっているわけでもない。おなじ基督教国でも南欧・東欧ではまったくやらない。抑々、子供が他人の家に行って菓子を強請り集るのは「美しき日本」の心に反しないか、道徳上よろしくないと、なぜ、言わない?……などとファナティックなことは言うまい(笑)。これは施餓鬼供養だと思えばよい。こどもに菓子を施す。施餓鬼に他ならず。
……で、若者は街に繰り出し仮装大会。これもまた奇習と気持ち悪がっていたが、平安の終わりより、仮装して練り歩く「風流(ふりゅう)」という習俗が日本にもあり、これに鎌倉新仏教でうまれた念仏踊りが組み合わさって、盆踊りになる。お盆の時期の施餓鬼供養・盆踊りが秋に現出したと思えばよい。六道輪廻のうち、餓鬼道は畜生道の下、地獄道の上。ハロウィンの扮装はまさに餓鬼道に落ちたものの姿。
……と授業で話すと大抵の中学生は、たかりに来なくなるのだが、それでも「何か頂戴」と寄ってくるつわものには、日本史資料集から国宝『餓鬼草紙』をじっくりみせると、ほぼ退散。先週、浦安鼠園秋季施餓鬼大法要(Tokyo Disneyland Hallowe'en Party)のお土産どうぞ、と小さな菓子を生徒が置いていった。この施しをおいしく頂く、われも餓鬼なり。