富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

中共国慶

fookpaktsuen2016-10-01

農暦九月初一。昨晩少し涼しく窓を開けて寝たら未明に大雨。紅色警報も出て朝のうちに黄色も取り消しとはなつたが雷暴警報発令のまま悪天候のなか中共国慶で朝八時から湾仔の金紫荊広場で国旗掲掲式典。通常は豪雨や雷暴の警報発令中は毎日の国旗掲揚中止となるが今日は「悪天候や日本軍国主義にビクともせず」で実行。夜明けからいくぶん好転した天候だつたが八時前に大雨。国旗掲揚義勇軍行進曲流れる前に来賓のうち中共軍代表がいち早く傘を閉じ大雨に濡れると中聯辦の若造・張曉明主任も軍のオトーサンたちに倣ひ傘を閉じ、すると「張曉明做乜、梁就做乜」でCY梁も傘を閉じ隣のCY夫人まことに不愉快さうな表情。CYから右に隣の司法司長と貧官曽の夫妻、政務司長・林鄭成月娥は知らぬ存ぜぬの表情で傘をさしたまま、林鄭の隣にゐた財務司長で次回行政長官選に立つかと噂のジョン曽俊華は張主任に習ふCY梁の様子見で一瞬、傘を閉じようとしたが間の誰も傘閉じぬの確かめ「これなら」と堂々と傘の下。まぁ見てゐて愉快な政治喜劇。式典済むと、まるで待ち侘びたやうに快晴に。官邸で残務整理。週末もずっと働きつめの九月になつてしまふ。早晩に按摩して晩に客人とFCCに飰す。食後時間潰しに中環百子里の酒場に飲みIFCへ。映画の前にふとフローズンヨーグルトジェラートを食べたくなりCitysuperの方へいくと外の爆音に「国慶狙つたテロか!」と思つたらヴィクトリアハーバーで国慶の花火。15年以上前にミッドレベル居住でマンション屋上から香檳酒の杯を重ね花火見たことはあるが花火の人出など考えただけでぞっとして近寄りがたく、こんな近くから(といつても1km以上あるが)眺めるのも初めて。 フローズンヨーグルト舐めてからIra Sachs(アイラ=サックス)監督の今春リリースの映画“Little Men”見る。この映画が今年の香港GL映画節に掛かつたのは監督が壮年のゲイカップルの結婚を描いた“Love is strange”(人生は小説より奇なり)などゲイ系多く、この映画も主人公の13歳の少年ジェイク(Theo Taplitz)が同い世代の俳優目指す活発明朗なトニー(Michael Barbieri))に淡い恋心を抱くといふ点ではゲイ映画かも知れぬが、誰にでもある大人の大人でも子どもでもない微妙な時期の同性への通過儀礼的な若衆心でもあり、寧ろこの作品は紐育のブルックリン舞台にした大人たちのカネは友情に代へられぬシビアな都会の人間模様が面白い。ジェイク(Theo Taplitz) は内向的な絵描き好きの少年で父は売れぬ俳優で生活は心理治療士をする妻の収入に頼つて曼哈頓で生活してゐる。そのジェイクの父が亡くなりブルックリンの家を遺したことで家族はそこに転居。家屋の路面を祖父は、ラテン系の女性が営む洋装店に貸してゐたが法外に安い家賃で立ち退きを求めることに。この女性の息子がトニーで少年二人は仲良くなり、この立ち退きにジェイクがどれだけ悩むか、のお話。この女店主は祖父がどれだけ自分に優しかったか、父の面倒をみない息子たちより自分のほうが余程あんたのお父さんを面倒見て……といふ展開にアタシは勝手に「これは、実はトニーは祖父が母に孕ませた子ども」で、つまりジェイクの父とは異母兄弟といふことが発覚し、それで父が執拗にこの母子を追ひ払ひジェイクは自分の恋した男の子が叔父だつた……といふ不条理な悲劇を期待したのだが、それは全くの妄想で単に程家賃の店子の追ひ出しにすぎず。この映画は少年二人の演技以前の魅力に頼つた感あり。ヴィスコンティ監督の『ヴェニスに死す』は少年に魅了されようが地位も名誉もある老作曲の若さと美に対する悲劇的な執着といふ余りの悲しさ、醜さが少年美を超えてしまつてゐる点が名作で、残念ながらこの紐育映画にはそこまでのものは見当たらず。