富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

「国益を損なう」

fookpaktsuen2016-05-28

農暦四月廿二日。午前中に一つ打合せ済ませFCCのダインで泡を飲みながら家人待ち昼餉。晝酒に心地よく路線バスに揺られながら柴灣。工業団地ビルにあるBlue Lotus GalleryでRomain Jacquet-Lagrèzeといふ写真家(こちら)の“TheBlueMoment”といふ写真展参観。香港の高層建築を独特の様々なアングルから撮り、殊にvertical horizonといふシリーズは公共団地や雑居ビルの見事な切り出し。午後遅く帰宅して遉がに休みなしの日々に疲れて休養。晩にテレビつけたら後楽園からの巨人阪神戦で9回裏4点差で負けてゐた巨人が最後の反撃をするが2点差で巨人が負け痛快。読売巨人軍は10年ぶりの7連敗の由。岩波『世界』5月号読む。国谷裕子さんの「インタビューという仕事「クローズアップ現代」の23年」は一読に値する。

  • テレビは世の中の空気を読むため、知るための手っ取り早いメディアとして機能してきた。しかしテレビは世の中の動向を知りたい視聴者の欲求を満足させ、その影響力の大きさゆえに、感情や物の見方を均一的にしてしまいがちだ。そして一方でテレビの送り手側も多くの視聴者を獲得したいたがめに視聴者の動向に敏感にならざるを得ない。この視聴者側と送り手側との相互作用はとても強力である。感情の一体化を進めてしまうテレビ、そしてそれが進めば進むほど今度はその感情に寄り添おうとするテレビ。こうした流れが生まれやすいことをメディアに関わる人間は強く意識しなければならないと思う。
  • 国益を損なう」という言葉が出てくる。この言葉もとても強い同調能力を持っている。本来ならば、どう具体的に損なうのかと問うべきときに、その問いさえ国益を損なうと言われてしまいそうで、問うことじたいを怯ませる力を持っているのだ。

他に同誌には堀尾輝久(東京大学名誉教授)が見つけた高柳賢三とマッカーサー元帥との往復書簡で確認された憲法9条の発案は幣原喜重郎といふ話。山口二郎が長谷部恭男と石川健治招いての立憲鼎談も興味深い。高柳賢三が岸信介が発足させた憲法調査会の会長でありながら岸の意思に反して戦後憲法制定の正当性を説き、長谷部恭男が晋三自民党優勢の国会での憲法審査会で集団的違法性の正当性説いたのは面白い。憲法の調査や審査は自主憲法制定の自民党にとつて実は鬼門か。