富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

書店の短冊

fookpaktsuen2016-04-15

農暦三月初九。やつと雨も霧雨になり午後には歇む。日本から書籍が届く。まず最初にすることは書籍に挿んである短冊、書店で「スリップ」と呼ばれてゐるやつを抜き取ること。日本では本を買ふときに本屋がぬきとるが今はネット注文の場合、嬉しいことに短冊がそのまゝで何でもスクラップしてノートに貼るアタシには嬉しいし、これが読書記録……正確には入手しただけで未読が多いが、になる。長野の書店では大店だつたH氏の話では、そのスリップのみ収集する癖のある好事家がゐて捕まえても「フルの万引き」とも違つて困つた記憶あり、と。書店にとつてPOSなどない時代にはスリップは売り上げの実績、分析と極めて重要な紙っぺらで表は注文数手書きして取引先の取次から宛行はれた書店番号記されてゐる通称「番線印」のゴム印を押して郵送などで注文してゐたもの。その裏側は「報奨券」と言つて集めると僅かながら版元から報奨金……といつても切手代用で済むやうな額の支給あり。しかし何と言つても重要なのはスリップのない本は新本と見なされず返品受け付けてもらへないのださう。なるほど。スリップ蒐集の好事家以上に、その「番線印」と聞くとスタンプ好きは垂涎だが書店で「すみません、番線印押してもらえませんか?」とお願ひするのはかなりの難度。「うちはお寺さんでご朱印じゃありませんから」と断られても集め続けるか。想像しただけでぞくぞく。晩に銅羅湾で宴会あり末席汚す。終はつてバーSで独酌。二更のうちに帰宅するつもりが雨が歇んだのを口実に鵝頸橋を越へバーMでマティーニ二杯で深更に至る。