富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

蔡明亮「無無眠」@MoNTUE北師美術館

fookpaktsuen2016-04-01

農暦二月廿四日。曇。普段、ニュースで「えっ」と驚くこともほとんどないが今朝は「ザハ・ハディド急死」には驚いた。「東京にとっては」あまりのタイミング。最後の世界的ニュースが2020年の東京五輪の競技場でのあの騒動とは(ザハ本人には何の瑕疵もないのだが)。東京のオリンピック関係者からは追悼の言葉がいくつも並ぶが内心は如何に。安藤忠雄曰く「国立競技場で彼女の案は新しいシンボルになると考えたが、こういう形になって申し訳ないと思っている」。FT紙のObituary: Zaha Hadid, architect, 1950-2016(こちら)。午前中は中山の地下書店街など冷やかし午後は陽明山の温泉に浸る。早晩に家人と忠孝新生で待ち合わせ阿才的店へ。NHK「世界入りにくい居酒屋」で紹介されてゐたが日本語のメニューも今はある、といはれる。早い時間とはいへ清明節の前だからか閑か。台湾啤酒の18日生啤酒初めて飲む。東門まで歩き捷運で科技大樓站。「國立」臺北教育大學のMoNTUE北師美術館(こちら)で蔡明亮大展「無無眠」参観。先週、香港での〈那日下午〉上映で監督が今月26日から北師美術館で最近の短編〈西遊〉〈秋日〉と〈無無眠〉の3本を夜の暗闇の中で上映する企画ありと紹介してゐたもの。北師ってどこ?だつたが台北の「北」と師範の「師」で台北師範。夜の6時からの開館で深夜まで。上映は地下と楼上の3カ所で順次、フロアにクッションが置かれ勝手に寝転んで見てください、週末は朝まで!といふ。地下で〈西遊〉〈秋日〉を見てから楼上での〈無無眠〉は吹き抜けの広い窓の向かふに文湖線の高架電車が走り〈無無眠〉の渋谷での映像(これも渋谷駅改修前で貴重な映像)の列車やホームに現実の文湖線が重なり見事な視覚的効果。夜遅くだといふのに会場には子ども連れ多く何か?と思へば金曜晩は家族でこの美術館内にキャンプするといふ企画。G階に降りてくると蔡明亮監督もゐて尊顔を拝す。晩はこのあと10時から監督も一緒に家族音楽会開催の由。文湖線で中山國中、民権東路をバスでホテルに戻る。


ウルグアイのホセ=ムヒカ前大統領の言葉より(朝日新聞「世界一貧しい大統領と呼ばれた男 ムヒカさんの幸福論」より、こちら)。

  • ファナチシズム(熱狂)は危ないということだ。左であれ右であれ宗教であれ、狂信は必ず、異質なものへの憎しみを生む。憎しみのうえに、善きものは決して築けない。異なるものにも寛容であって初めて、人は幸せに生きることができるんだ。
  • 貴族社会や封建社会に抗議し、生まれによる違いをなくした制度が民主主義だった。その原点は、私たち人間は基本的に平等だ、という理念だったはずだ。ところが、いまの世界を見回してごらん。まるで王様のように振る舞う大統領や、お前は王子様かという政治家がたくさんいる。王宮の時代に逆戻りしたかのようだ。私たち政治家は、世の中の大半の国民と同じ程度の暮らしを送るべきなんだ。一部特権層のような暮らしをし、自らの利益のために政治を動かし始めたら、人々は政治への信頼を失ってしまう。
  • いまは文明の移行期なんだ。昔の仕組みはうまく回らず、来たるべきものはまだ熟していない。だから不満が生まれる。ただ、批判ができるのもそこに自由があるからだろう。民主主義は欠陥だらけだが、これまで人が考えたなかではいい仕組みだよ。
  • 怖いのは、グローバル化が進み、世界に残酷な競争が広がっていることだ。すべてを市場とビジネスが決めて、政治の知恵が及ばない。まるで頭脳のない怪物のようなものだ。これは、まずい。
  • もちろん国家は必要だよ。だけど、危ない。あらゆるところに官僚が手を突っ込んでくるから。彼らは失うものが何もない。リスクも冒さない。なのに、いつも決定権を握っている。だから国民は、国家というパパに何でも指図されていてはいけない。自治の力を身につけていかないと。

佐伯啓思首相官邸に米経済学者 佐伯啓思さんが感じた居心地悪さ」朝日新聞こちら)。

今日、日本経済のおかれた状況は、市場中心主義かケインズ主義か、という選択にあるのではない。アベノミクスがかつてない大規模な財政と金融の組み合わせによって景気を浮上させようとしたにもかかわらず十分な成果をあげえないのは、過度なグローバル競争によって国内にデフレ圧力がかかるからだ。さらに加えて、人口減少、高齢化社会の到来が将来の経済に対する楽観的な期待を砕いてしまうのである。しかも、今日、われわれはすでに物的に「豊かな経済」の段階に達しており、いくらイノベーションを起こしても、消費需要は大きくは伸びない。今日の日本社会がおかれたこれらの状況を直視しなければ、いくらお金をじゃぶじゃぶ出そうが、増税を延期しようがどうなるものでもない。