富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

南レイテのヒヌンダヤンへ

fookpaktsuen2016-03-22

農暦二月十四日。未明から近所の鶏たちのけたたましい呼応。A氏と朝の散歩。コンドミニアムから通りに出て南下。2013年の台風で崩壊した家し改修が放棄された家々も点在。1kmほど歩くと道路が海岸線に出る。村の家々は仮設なのか微妙な苫屋が並ぶが、台風被害など多い中では堅牢な家もバラックもありか、と思ふ。ジョギングや体操する人の多い公園に出る。McArther Landing Siteが此処。1944年の10月にマッカーサー将軍がレイテ島に上陸した場所が此処で、部下を引き連れた将軍上陸の像を知る人は多し。海水の中を歩いての上陸で像も海岸に建つてゐるのか、と思つてゐたが海岸線に面した公園の中で池の中。A氏の話では将軍に付き添ふ部下のうち一人、フィリピン人と思はれる人の像だけ台風で倒れたのだといふ。米国人は台風にも強かつたさうだが像が倒れないやうに股座に補強の角材を差し、それが勃起した男根のやうだつたといふ。歴代の各国指導者の記念碑の中に日本では村上富市氏のものあり。レイテ湾の日の出。快晴。歩いて戻らうとするとDが自動車で迎へに来てくれる。Sの作る朝食。休暇先での日記をイニシャルで書いてゐると何だか中井英夫のやうだ。朝食後、メールをチェックするが此処のネット環境は私の知の人生の中で30年前の電話のモデムの時にも劣るか、の遅さ。測定すると0.03Mbpsである。A氏とはメールでやりとりしてゐてA氏はiPad使用なのでWi-Fi環境整つてゐると思つてゐたらBroadbandが郊外のコンドミニアムまで来てゐるでもなく(タクロバン市街地とてどうかしら)A氏宅内でも携帯用のWi-Fi機を吹き抜けの二階に吊るし、これを家中で利用。電波も弱い上にA氏、DとS、それに私まで共用なのだから。メールやネット上でも文面はどうにかやりとりできるが画像は無理。午前九時にA氏の車で四人で家を出る。南レイテのHinundayanまで200余km、2時間余のドライブ。レイテ湾に沿つていくつもの村々を抜けてゆく。美しい海でよくぞリゾート開発されないものだ、と思ふが空港がタクロバンにしかなく地元系のリゾートは台風で壊滅的打撃で元々観光客が少ない場所ゆゑ復興断念なのだとか。AbuyogからSilagoまで道路は海岸線を外れ山越へとなる。A氏のいふレイテ島らしい山々。日本軍の激戦地は北部のほうが主でCapoocanに追悼碑もあるが米軍の攻撃を受け、こんな山の中での防戦となり補給路も絶たれ飢ゑとの戦ひとなつては大岡昇平の『レイテ戦記』にもあるが尋常な戦争など出来るはずもない。道路沿ひの 距離ポストで1,000kmを通過。マニラからの距離。島々が群がるフィリピンでマニラ(ルソン島)からレイテまで道路が?と思ふが途中はルソン島とサーマル島間はフェリーで、実際にマニラからミンダナオ島のダバオまでの長距離バスが出てゐるさうでマニラからレイテ島まででも20時間かゝるといふ。どこかNational Highwayなの?といふ道路は峠越へを経て、またレイテ湾に出る。Dは運転は上手だが、けして舗装が上出来ではない道路を村の中も時速100km以上で走り抜けるので道路を鶏が渡つてゐたりするだけでも冷や冷や。昼前にヒヌンダヤンに到着。Eの出迎へ。村ではそれなりに成功した農家。父がかなりの田圃を有し稲作で汗を流してきたからで大家族養ふ。道路沿ひの家地に入ると猫や犬、闘鶏用の鶏、養豚……と賑やか。家族の皆みなに紹介されるが大家族の三世同居では誰が誰かさっぱりわからない。ヒヌンダヤンで海岸に最近できたといふCorridor Resortに下榻。Dの運転でヒヌンダヤンの一つ南の集落まで回る。宿に戻り午睡。午後5時から、このリゾートのプール施設借り切り一族集まる。私を歓迎して、と生後四ヶ月の子豚が丸焼きにされて持ち込まれる。フィリピンの伝統的な宴会料理のレチョンがこれ。かわいそうだが美味。パリパリの皮、ジューシーな肉。内臓はレバーなど別に焼かれ胴内のレモングラスや香辛料の芳香。次から次へと親族が集まり30名ほど。 レイテ湾に大きな月が浮かぶが雲に消える。サンミゲルと焼き豚。選挙期間中といふことでヒヌンダヤンの市長も現れる。人口9千人ほどの地区の市長なので彼女も気さく。Eはこの市長と同じ黄党団で市長は3期務めたので今回は後進に市長職を譲り自分は副市長候補だとか。子どもらは焼き豚の夕食の前も後もプールで水遊び。大人もそれに混じる。フィリピンは酒飲みは少なくないが、この一族はほとんど誰も酒を飲まない。途中から現れた親戚の男一人だけがサンミゲルの大瓶二本携へラッパ飲み。雨。かなり強いスコールとなるが誰も動じずプールサイドの東屋に入り宴会が続く。まだ七時半だが私とA氏だけがホテル棟に退散。ロビーで雨音聞きながら四方山話するが八時には睡魔に襲はれ寝入る。