富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

樹木希林『あん』

fookpaktsuen2015-11-04

農暦九月廿三日。早晩にFCCで家人と待ち合わせ夕餉。日本風カツカレーなるものあり恐る/\注文するとけして食べられないものではない。早酒でBloody Maryシャルドネ、食事中にハイボールと飲むペースは我ながらどうにかならないものか。IFCの映画館。河瀬直美監督の映画『あん』観る。アジア某映画祭の単発上映で満席で最前列から樹木希林拝む。悠木千帆の「ジュリー〜!」の頃から老け役なので今更年とつたな、といふ気がしない大女優。同じ癩を患つた役の市原悦子も然り。河瀬直美は私が全作品を見てゐる恐らく唯一の映画監督か。いつものやうに映像に風の流れや季節の匂ひまで映つてゐる。癩といふ病ひを映画の題材にすることは古くは松本清張の『砂の器』だが非常にデリケート。その患者だつた女性が老後ほんの一時だが社会に出て生き甲斐を感じる姿を描く(原作はドリアン助川)。二つだけ気になつたことあり。一つは癩について社会的偏見は解消されきつてゐないにせよ今ではこの病ひについては正確な理解も広まつてをり両陛下が施設訪問され手をとつて元患者と交流する時代、映画の中でどら焼きの餡がとても美味いと評判になり行列まで出来た店が、この餡を練る女性が元患者だと風評広がつたとして、果たして客足がぱたりと止まるほど状況はひどいものかしら。舞台となる町は西武線沿線で家人にとつては映画の風景も懐かしい地元だが、この一帯の東久留米、清瀬、所沢では子どものころからハンセン氏病については学校でも教はり地域での理解もあり、全国でもむしろ偏見はないのではないか、と。そこでこれほどの風評被害といふ設定は一寸首を傾げるところあり。もう一つは素晴らしい作品だが後半は主人公(樹木希林)の独り語り多く、確かに言葉で伝へたいといふ願いの表れだが、ちょっと言語による表現が多すぎ、河瀬監督はそれを映像で伝へることに長けた人だし、それは見てゐる者には十分に映像で通じる部分であるし、もっと最後まで淡々と美しい映像で言葉少なに見せてくれても良かつたのではないかしら。確かに癩といふ病ひへの偏見、その患者たちの苦しみだからこそ敢へてしつかりとした言葉で伝へるといふ意図もあるとは思ふのだが。浅田美代子も出演してをり悠木千帆とでは「寺内貫太郎一家」彷彿だが偶然にも加藤治子さんの訃報に接す(享年92)。
▼FT紙社説“The Bank of Japan considers more easing”(こちら)より。
But structural reform is often contractionary in the short-to-medium term, and in the case of the TPP it will take years to implement. One measure that might provide an immediate boost to growth would be to permit higher immigration, relieving Japan’s chronic labour shortage. Foreigners make up 0.3 per cent of Japan’s labour force, the lowest among advanced economies. Mr Abe has so far shied away from this politically explosive area.
日経も傘下のFT紙なのだから、かういふ記事をきちんと転載してほしいもの。