富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2015-03-02

正月十二日。曇。朝食は昨晩いたゞいた沙田ハイアットの蘋果のパイ。美味。一昨日から腰痛が気になつたが風邪によるもののやうで今日の午後になり喉の痛みと嫌な咳で遅まきながらイソジンで嗽がひ。今日だけ久々に晩の外食なし。自宅で湯豆腐。NHKのNW9は福島第一での汚染水まだ流出の最中にキャスター大越現場より「渾身の中継」で東電社長出て釈明の呆れて言葉もなき東電ヨイショ番組。珍しく酒抜きで早々に寝床に入る。
▼作家のハルキ=ムラカミが網上で香港の雨傘運動少女の書き込みに対して

あなたが行ったことはひとつの事実として残っていますし、その事実は誰にも無視することのできないものなのです。世界はその事実のぶんだけ変化したのです。これからもがんばって、ほんの少しずつでもいいから世界を変えていってください。僕も応援しています。

とメールで返信の由(蘋果日報)。ムラカミ先生にも「これからもがんばって、ほんの少しずつでもいいから世界を変えていってください」と言ひたいところだが「それでも変はらないんだよね」で夢のなかのワンダーランドかしら。
▼ロックバンドのKISSが(何度目か知らぬが)来日公演の由。デビューから四旬。アタシは日乗読み返しても書いたこと=考へたことに余りブレがない、予測が外れないのだが(悲観的なことばかり書いてゐるから予測通りなのか……涙)これまでの人生で二つ、大きな予測ミスがあり、その一つが晋三の復活、もう一つが中学一年生のときにKISSのファンだつた井上君を前に「このバンドの人気は短いでしょ」の一言。ジーン=シモンズが66歳。
▼元沖縄県知事大田昌秀氏の戦争体験(朝日新聞インタビュー)。沖縄師範の成都だつた氏は戦争末期、嘉手納や読谷で飛行場造成に従事。4月には読谷に米軍上陸、昌秀少年は鉄血勤皇師範隊に配属され仕事は民間の壕に大本営発表のニュース伝へに行くことだつたがニュースは信用されもせず反感買ふほど。5月末には司令部に集められ南部への転進伝へられ銃と銃弾、手榴弾2個(そのうち1つは最後の自爆用)のほか軍事機密の木箱30kgを運ばされ、命がけで20km先の目的地に着くと将校が運ぶように命じた軍事機密の木箱の中身は靴など日用品だつたといふ。壕の外で至近弾を受け足の裏を抉られ歩けなくなつてゐると翌晩、傍らを通りすぎようとした一人に声をかけられ、その学友が食料をくれたといふ。切り込み隊の一員で還ることはないから食料は要らない、と。その学友とはその後一度も会つてをらず、と大田元知事。
▼『松本清張』(綾目広治著、御茶の水書房)の書評(週刊読書人黒古一夫)からの孫引き。松本清張天皇制の万世一系には「何の神秘性もない」として(否定に非ず)「これは将来の万が一の場合をいう憶測だが」として

憲法第九条の副文の解釈が拡大されるような事態となったとき、第一条に規定された天皇儀礼的な国事行為が、儀礼的でなくなり、第九条の副文と合流するのではないか、という遠い空を望んでの杞憂もおこらないではない。

と。まさにこの松本清張の杞憂が現実のものにならうとしてゐる時代。
▼昨日のイスラム教に関する中田考先生の引用(週刊読書人)続き。

  • グローバリゼーションはより深いテレブでカリフ制再興に影響を与えている。それは、カリフ制こそが真のグローバリゼーションだからである。それゆえ2014年、イスラーム国は、アメリカの主導する新自由主義の偽りのグローバリゼーションに対するアンチテーゼであるカリフ制再興の先触れとして出現したのである。

で我々日本人はイスラム世界とどのように関係を築けばよいのか、といふ問ひ対して

  • あまり気にしなくてもよい。
  • いま起こっていることを見ていると、突然世界が変わったような気がするかもしれませんが、実はほとんど何も変わっていません。
  • さぁ大変だ、何かしなくては、などと慌てて付け焼刃で何かを始める必要はありません。
  • ではなぜイスラームを知らなければいけないのか。それは我々日本人にとっても究極的に重要な生と死の問題を考えるためです。
  • 年間三万人の自殺者を毎年生んでいる日本という国と、イスラーム世界と、どちらが「危険」なのか。
  • 殉教を求めて自ら死地に向かうような極端な例だけでなく、ムスリム社会は来世で天国に入ることを待ち望み死を恐れてはいない、というか楽しみにしている善男善女に満ちあふれています。
  • 政治は腐敗し戦乱も多く経済的には貧しい国が多いうえに貧富の格差が大きく不平等であるにもかかわらず、豊かな日本に比べても、人々は希望に満ちているように見えます。むしろ死への希望と生きる希望が一つになっている。

……として「その根源にある世界観」を日本人はまず見るべき、と。なるほどね。