富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

33年後のなんとなく、クリスタル

fookpaktsuen2015-01-21

農暦十二月初二。午後から雨模様といふ天気予報で朝はどんより曇つてゐたが小雪舞ふ。出かける気にもならず昼前まで書類整理や読書、で旅荷まとめ退房手続きののちZ嬢と麻布十番の商店街に出て中華エリートで昼食。昨日も昼は一ノ橋交差点近くの、あの石垣の上の豪邸は?孫様のお屋敷よ、に位置する中華で湯麺食したがサービスはいゝがフランチャイズで味よりも麺と茹で方がイマイチ、で馴染みのエリートで二日続けての湯麺となつたが此方は醤油味で甘め。女将さん不在でご亭主が接客、店奥の壁に飲食店の営業許可証掛けられてゐるが、その横に女将の若いときの別嬪な笑顔の写真あり気になる。あまりの寒さと霧雨に散歩も能はず旅寓に還る。タクシー自動車雇ひ羽田空港国際線ターミナルで搭乗手続きのあとターミナル巡回バスで第二ターミナル。国内線の利用がないため評判の羽田空港如何なものかネットでの評判は第二の方が第一よりいゝが何だか全然面白みなく感じて第一へ。此方の方が随分と良く出来てゐるのではないかしら。シナボンそれに「とらや」で季節の羊羹、寒中の華、干支にちなんだ「のどかひつじ」贖ふ。上客用ラウンジも入つてはゐないが第一のJALのほうが「いかにも」な感じ。国際線ターミナルに戻り通関、ラウンジで珈琲一杯。それにしてもアジアからの訪日客の購買欲見せつけられるお荷物。丁度発表となつた昨年の訪日客数では台湾(283万人)、韓国(276)、中国(241)、香港(93)、米国(89)、タイ(66)と続くが1人当りの消費では中国(23万円)、米国(16)、タイ(15)、香港(15)、台湾(13)、韓国(8)ですって。人口あたりの訪日客数では香港が12.7%で断突1位。アタシなんて宿泊費除いたら5万円位しか消費してゐない。CX549便に搭乗。田中康夫『33年後のなんとなく、クリスタル』香港に着く迄に読了。昨朝、麻布鳥居坂旅寓で此処も物語に登場するのだから書架にあるかしら、と探したが見当たらず昨夕新宿紀伊国屋で購入の内の一冊。香港は気温摂氏二十度。高湿度も肌に懐かしい。
田中康夫の『33年後のなんとなく、クリスタル』いくつか評判聞いて読んでみる。アタシが小説読むのなんて何年ぶりかしら。33年前に学校サボって喫茶店で一服しながら読んだ『なんクリ』は知らない事ばかりで注釈にとても重宝したが今は書かれてゐることがほとんど「あ、あそこのこと」で自分もそれなりに大人になつたな、と感嘆。ネタはいくつか面白いが語りたいネタありき、で会話がやたらと説明っぽく口説く食傷気味。いつくか勝手に付記綴ると
(47頁)「確か70年代後半の出来事だと語っていたから……」と唐突で何のことか文脈からわからないが語るのは由利で彼女の勤める化粧品会社買収した実業家について何故に彼が投資銀行と組んで化粧品、ファッション、鞄といつた伝統的ブランド企業買収したか、の契機となる話がここから始まる。
(53頁)ヤスオの台詞「オッと、そういう言い回しが出来るようになったんだなあ。もとより石部金吉だったわけではないけれど……」って今どきイシベキンキチは若い読者には通じないのでは?これこそ要注釈。非常にきまじめで物堅い人。特に、女色に迷わされない人。また、 融通のきかない人物。
(67頁)由利との邂逅で昔、学生時代のデート話が思ひ出語り続き「早くお店を出なくては」が、その時のバーでだと思ふと、これは現実に戻り今、再会で夕食をしてゐるフレンチのレストランでの店仕舞ひ。
(71頁)「一緒に頼んだカカオニブ・クラスターを摘みながら」も暫く続いた思ひ出話のあとで唐突だが芝にあるバーでの話に戻つてをり「ジャックセロスと一緒に頼んだ……」のこと。
(179頁)国際文化会館での描写で「外の通りへと緩やかにカーブを描く下り坂に差し掛かる。その途中で僕は、歩みを止めるとル•コルビジェらの薫陶を受けた三人の日本の建築家が設計を担当した国際文化会館をいま一度、振り返った」と建物の美しさを語るが実はこの坂の位置からは建物は側面だけであまり良く見えない。
やっしー今でも表参道のスティルウォータースで散髪なのね。当時のペログリ日記のこと、国際文化会館のこと等記述感慨深いものあり。
イスラム国での日本人人質につき朝日新聞天声人語は「日本の関与が難民支援など非軍事であることを伝へてほしい」と言ふが相手さんにしてみれば非軍事で難民支援とて反イスラム国の周辺諸国支援ではイスラム国にしてみれば敵は敵。前田哲男(軍事評論)指摘(朝日新聞)待つまでもなく嘗は「軍隊を出さない、武器を売らない」で貿易に徹する友好的な関係維持できた日本にとつて中東は安全だつたが2004年の小泉三世による自衛隊イラク派遣で「普通の国」となつた結果、が是。
▼「皆さまの」の筈が最早「晋三の」に化したNHKは「日本を正しく理解してもらうために、日本を世界に、積極的に発信」と謳ひ国際放送強化の由。今どき海外放送聴く奇特なリスナーは別に日本のことを(正しくw)知りたいから、なんて悠長なコト言つてをれず不安定な国情や危険のなかで兎に角正確なニュースと分析を欲するところ。かつてのラジオジャパンBBCに倣ひ、さうした放送局の一つとして中国語やマイナーランゲージまでカバーし、そこで得た信頼。それが日本政府のプロパガンダ放送なら誰も聞かぬのは当然。「世界のどこであれ国際ニュースは欧米メディアの報道が人々の情報源になりがちだ。その現状のなかでアジアの発信元としてNHKが定評を築きたいならば政権との健全な距離を保ち主体的な立場を貫くことが欠かせない」と朝日社説(18日)。