富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

吹風にかをりくればぞたをらるゝ(忠邦)

農暦五月初一。日本維新の会で慎太郎と橋下が分裂。ざまぁみろ。海野弘著『華術師の伝説 いけばなの文化史』読む。とある事情で「いけばな」素養なきアタシが俄か勉強必要となり畏友・村上湛君に教へ乞ふたら勧められたのが海野大人のこれ。1996〜2000年まで小原流の『小原流挿花』といふ雑誌に連載されたものが元でアートアンドクラフツ社から2002年に上梓され絶版。大垣の古書肆より入手。華道が、茶道や能狂言などと並び南北朝以降、足利の時代にほゞ形が整ひ安土桃山で面白い展開を見せ……とそのくらゐは知つてゐるが、この本の圧巻は「古代」。神話の世界から万葉集、花を立てる、花を投げる、折口信夫あたりの話が面白い。そこから中世の阿弥衆、同朋衆あたりまでの記述が何とも海野世界。天保の改革水野忠邦
吹風にかをりくればぞたをらるゝ おのがとがしれ山さくらばな
といふ歌も納得するところあり。「吹いてくる風に向かって、その香りを放ったからこそ手折られてしまったのだ、山桜よ、香りさえしなければ、こうして折られて花瓶にとらえられなかったものを、自分のせいなのだ」と。官邸の執務室に掛けておくか、と短冊に綴る。
▼国民安保法制懇の委員が凄い。樋口陽一先生始め小林節、長谷部康男ら憲法学の碩学、元内閣法制局長の阪田雅裕、柳沢協二(元防衛庁防衛研究所所長)、孫崎亨(元外務省国際情報局長)ら勢揃ひ。小林節教授曰く「憲法9条は海外派兵は許していない。解釈変更で、自衛隊が米軍の補助役として世界に飛んでいくのはあり得ない」とし「国民のものである憲法が首相に取り上げられる。泥棒と思っている」と。96条の会といひ、これといひ学者を、それも陽一先生と節教授を大同団結させるほど酷い晋三って何なのかしら。
高円宮娘と出雲大社惣領の結婚内定。千家国麿といふ方、父方の祖母(孝子=中山輔親侯爵長女)の母方祖父が九條道實で貞明さん=大正皇后妃の兄なので、自分の祖母が嫁の父=舅(高円宮)と再従姉弟(はとこ)であり、祖母(孝子)の母と嫁の母=姑(高円宮妃久子さん)もはとこ同士と、この業界なか/\やゝこしい。国麿氏の祖先千家尊福(第80代出雲国造、国麿氏は85代になる)は東京府知事にや西園寺内閣の司法大臣してゐるが(水戸の畏友J君に教へられたが)誰もが知つてゐる♪としのはじめのためしとて〜の唱歌「一月一日」の作詞者。出雲大社は明治の国家神道形成期に伊勢派と意見が合はずに教派神道出雲大社教として自立、それゆゑ戦前の法律では全国にある分祀された出雲大社は「分教会」という位置づけに。いずれにせよ出雲は勅祭社で皇族が往かれることは珍しくなければ、この「出会ひ」もあり、か。ところで「としのはじめのためしとて〜」の一月一日は何だか旧暦からあるやうに思えへて、これは明治26年文部省唱歌、最初から陽暦の一月一日、まさに近代になつて作られた伝統。

華術師の伝説―いけばなの文化史

華術師の伝説―いけばなの文化史

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