富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

パレードが怖い

fookpaktsuen2013-12-20

農暦十一月十八日。かなり久々にJ-WAVEでジョン=カビラ氏「JK RADIO〜TOKYO UNITED〜」のコーナーで香港からのコメント数分。話題は東京で試験的ながら都バスの深夜運転が六本木〜原宿間でスタート、さて海外のバス事情は?といふわけ。まさか、そのタイミングに合はせ?この深夜バス発案の(それが唯一の仕事だつた?)都知事が辞任とは(笑)。朝九時半のジェットフォイルでZ嬢とマカオ。何するでもなく、のはずが今日はマカオの中国への返還記念日で祝日。フェリーターミナルに並ぶタクシーのルーフに五星紅旗マカオ旗が、なんか旗坊的で可笑しい。路線バスで氹仔。路氹の埋め立てですっかり湖の岸となつたマカオ住宅博物館のあたりから氹仔の食堂街漫ろ歩き。晝になつたのでいつもの如くXiolas O Castiçoで晝餉。浅蜊と牛のホルモンのトマト味の煮付けそれぞれ。安い葡萄酒。牛肉のクリーム煮のご飯添へをシェア。それで幸せな、たつぷり2時間余。晝は日当りも心地良く亦た住宅博物館の湖畔に戻り小一時間ベンチで昼寝。下手するとホームレスの二人に見えるかしら。路線バスで澳門市街に戻る。辺度有書(Pinto Livros、書店)に寄るが祝日休。白馬行の商業ビルで一つ買ひ物したかつたZ嬢に付き合ひ、そこから十月初五日街のほうに往くつもりが大三巴で折から回帰記念の祝賀イベントだかあつたやうで、そこから丁度始まつたパレードに遭遇。地元の老若男女による鼓笛隊、粤劇連、そのほか南米やアフリカの大道芸やらカーニバル社中だの、それが狭い通りを練り歩く……まさにその窮屈さが葡萄牙都市のカーニバルの如し。まぁ大変な混雑でヘタる。アタシはパレードは苦手。あの音や喧噪が、何かテオ=アンゲロプロス監督『旅芸人の記録』や向田邦子の阿修羅で流れたCeddin Dedenのやうに、どこか追ひ込まれてゆくやうな錯覚に陥つてパレードが怖い。大島渚の『愛のコリーダ』でも兵隊さん行進に逆らつて歩む吉さん。十月初五日街の華聯茶葉公司。Z嬢の好きな六安茶購ふ。なんだかパレードに遭遇の疲れで歩くのを厭ひ路線バスに乗り新馬路越へ陸軍倶楽部。ラウンジで一休み。麦酒一杯。暗くなつたので西灣に沿つて民国大馬路を暫く歩きAli Curry Houseへ。途中、政府総部がまぁ物々しい警戒。反対派市民デモでも恐れてゐるのかしら。何もないのに。Ali Curry Houseの名物「血鴨」Duck with Blood と名前は仰々しいが鴨の煮物飰す。少しクセあるがあつさりで美味。路線バスでリスボアホテル前で乗り換へてフェリー乗場。晩23時のフェリーチケットとつてゐたが今晩はマカオソウルも休みなので(これからの祝日期にオーナーのHご夫妻は昨日から年明けまでチェンマイに)、八時半のフェリーに優先乗船で香港に戻る。
鷲田清一先生(哲学、大谷大学)が特定秘密保護法反対のタチがで「自由主義自傷」と今日の都新聞夕刊に。オルテガ『大衆の反逆』(神吉敬三譯)の

自由主義は……かつて地球上で聴かれたもっとも気高い叫びである。自由主義は、敵との共存、それどころか弱い敵との共存を表明する。人類が、かくも美しく、かくも矛盾に満ち、かくも優雅で、かくも曲芸的で、かくも自然に反することも到着したことは信じがたいことである。

……引用して「法案を提案した内閣は「建前」としては自由主義を掲げる政党によって構成されている」がオルテガの謳つたこの文明国ならでは、の価値は法案の審議過程で損なわれた、と指摘。リベラルは本来「気前がよい」であり次に「寛容」であるはずが自由主義がこれほど反故にされよう、とは。

政治とは、対立する意見のいずれかに理があるかを公衆の前で言葉で競う、そういう説得の術である。そこでは、言葉への信というものが命綱だ。そして確かな議論のためにはその材料となる情報が十分に公開される必要がある。知る権利がつねに最大限確保されなければならない。戦時中の、近くは福島第一原発事故における情報隠蔽がどのような惨事をもらたしたかを、ゆめ/\忘れてはならぬ。

と鷲田先生。