富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

蔡正仁「太白醉寫」

fookpaktsuen2013-06-26

農暦五月十九。早晩にA氏と尖沙咀のWeinstubeで麦酒&肉詰。ハワイの話から311の海嘯、CNNの当日の秀逸なるハワイ島民への緊急放送のこと、湾岸戦争……となり911の日に曼哈頓でWTCの至近距離にゐたA氏から、あの日のことを聞く。前の晩がひどい雨模様だつたさう。嘘のやうに晴れて、のあの朝。911といひスペースシャトルのチャレンジャー号の事故といひ悲しいほどお天気。あれがもし曇り空、霧のなかなら、あんな鮮烈に悲劇を目撃してゐない。中国戯曲節(こちら)で今晩は上海崑劇団を見る。この一週間で四晩も観劇と、すつかり京劇好きのA氏に敬服。西遊記から「借扇」。孫悟空(趙磊)が何として得たい鉄扇有する姫君が谷好好。漁家樂から「賣書納姻」は書生が袁國良。中入り後は風雲會から「訪普」で吳雙の劇中唱段、その唱腔旋律がプログラムの表現借りれば「演來既有威武和氣勢,又有委婉高亢的情感」と、そりゃお見事。岳美緹の潘必正役で玉簪記から「問病」。そしてトリが蔡正仁の驚鴻記から「太白醉寫」は李白役の蔡正仁がまぁ先代勘三郎のやうな見事なニンで、この芝居、本当にこんな役者でもゐなければ、とても舞台にならぬ、だって李白が宮中参内でたゞ気持ちよく酔つてゐる態をば見せるだけ、なのだから。早めに切符押さへたので中央通路の殆どVIP席。ふと後席眺めると昨年、某公立美術館の総館長退職のY先生ご夫妻。退職のお祝ひに、と源吉兆庵の桃ゼリーお贈りしてゐたことお礼いはれる。
佐藤卓己先生の都新聞論壇時評(廿五日夕刊)。憲法議論の本音と建前「ワイドショー的話で片付かない」。宇野重規が『世界』と『Voice』といふ明らかに立場異なる二誌での自民党リベラルの代表として大平正芳を語り「政治が甘い幻想を国民にまき散らすことは慎まなければならない」といふ言葉紹介。晋三のデフレ脱却が負担増、給付減等諸問題先送りへの苦言であり議会と政党の再構築が必要だとしつゝ議員の間でも出てゐる中選挙区復元は政党の不人気な政策も地元の人気で造反も可能なもので否定されるのだが卓己先生は「大平のような保守党内リベラルの存在は中選挙区制だから可能だった」と指摘されてゐる。