富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Jörg Demus大師

fookpaktsuen2013-05-28

農暦四月十九日。早晩僅かな時間惜しみ佐敦の識るバーに寄り麦酒独酌。町外れの鄙びたバーに客は三人、暇そうなバーテンダー一人、全員が手機やタブレットに目を落として黙まり。これぢゃ会話の一つもないから。何ともさういふ時代。中環。Z嬢と市大会堂。Jörg Demus師来港で香港シンフォニアなる楽団と共演。イェルク=デムス、1928年生まれだから御年八十五。日本ではパウル=バドゥラスコダ(1927〜) 、フリードリヒ=グルダ(1930〜2000)ととともに「維納三羽烏」と呼ばれたピアニスト。カラヤン小澤征爾との共演、エリーザベト=シュヴァルツコップなどの伴奏もしたほどの方だが、なぜか突然、香港の香港フィルでも香港シンフォニエッタでもなく、この迂生名前も知らなかつた楽団と。モーツァルトの27番とベートーベン3番を共演。この楽団、それなりにプロなのか素人なのか、ずっと音楽をやつて来た人で何だか医者とか弁護士とか兼業のやうに見えなくもなし。地場の兼業音楽家たちで元々香港フィルのメンバーだつたが香港フィルが外国からも演奏家雇ひ入れ始まり弾かれた地場の団員がこの楽団を結成、とか。で先ずは団員のクラリネット奏者Martin Choyでモーツァルトクラリネット協奏曲から、選りに選つてアダージョ(第2楽章)。でモーツァルトの27番。モーツァルト亡くなる年の最後のピアノ協奏曲。編成が小さいのでこの楽団向き。モーツァルト管弦楽曲退屈なワタシはうと/\。ごめんなさい。こゝでアンコールは幻想曲ニ短調(K397)。中入り後はベートーベンの3番。85歳の老ピアニストにとつてこのくらゐの楽団だと音量的にも自分の今の体力で合はせるにはいゝの鴨。それにしても「棺おけをひっくり返して坐ってピアノ弾いてゐる」(Z嬢)デムス師のこの3番、そうかかういふ曲なのね、と聴き慣れてゐる曲がとても新鮮。ハ短調のこの曲が最後、ハ長調で悠長に終はるわけだが、これがデムス師の人生哲学のやうで素敵。アンコールにシューベルトの4つの即興曲から90−2のアレグロ。アンコールには長い曲で指揮者(蔡崇力)はステージで立つたまゝだか指揮者もうっとりと聴きいる。で最後はエリーゼのために。これも本当に柔らかで少し悲しげで美しい旋律。
▼今日の信報社説「日股急跌圓滙升 安倍神話受考驗」より。日本にとつて最後の景気回復プランなる「脱胎換骨」のアベノミクス、先週木曜の株価暴落、円安の下げ止まり、金利上昇、輸出伸びず輸入原材料高騰と、すでに「行け/\」ムードから減速。とくに金利上昇は安倍經濟學の致命死穴にならぬか、と。「若安倍政府未能及早推動財政與結構性改革,以配合超寛鬆貨幣政策,安倍經濟學的神話無法避免不攻而自破。當前日股三個交易天內急跌逾一成,債市危機隱伏,孳息上升,無疑已向市場發出了響亮警號」と憂ふが、この声が日経さんから聞けぬから日本は困ったもの。
大阪市長橋下君来月訪米断念の由。宗主国米国に対してだけは橋下流言論の自由は通じず。一昨日の都新聞「筆洗」の橋下君への苦言が見事(こちら)。橋下が十年前に出版の『最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術』なる人気本と取り上げ「自分の発言のおかしさや矛盾に気付いた時は「無益で感情的な論争」をわざと吹っ掛けるとあった。その場を荒らして決めぜりふ。「こんな無益な議論はもうやめましょうよ。こんなことやってても先に進みませんから」(略)とはごまかせない。すべて自らがまいた種だ。頼みにする「ふわっとした民意」が逃げてゆく。」と。その通り。たゞ「政治家の劣化を嘆く議論は多い。しかし新聞とテレビこそ政治家の劣化を加速した張本人である。(橋下舌禍で橋下本人に)誤報と非難されて、それを放置しておくようでは、メディアはますます劣化した政治家をのさばらせることになる」と山口二郎先生(都新聞26日「本音のコラム」)。