富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2013-03-25

農暦二月十四日。「尖閣」香港上場企業に影、と今日の日経夕刊。イオン系や吉野家などのことだが他にもペニンシュラホテル有する香港大酒店も日本人客減少で業績悪化なんださうな。インフレ2%がいかに厳しいか、の分析も日経(朝刊)にあり。1974年のべらぼうなインフレは当時、ドルショックから石油危機の時代。でもその前の1970年の好景気は今思ふとバブルの比でなし。商店街でいつも遊んでゐたトヨペットの自動車展示場所が、いきなり大型クルーザーの販売会場になつたのだから。あれは驚いた。朝日には山折哲雄が「皇室の苦悩、社会の危機」と題して皇太子退位論……そんな、民草に畏れ多くもプリンスヒロに「どうぞご退位でご家族幸せに」なんて言へるかしら。こんな暴論を主張する知識人もゐれば記事する新聞も新聞、あまりにもお労しすぎる。それと時を同じくして秋篠宮家の伊勢神宮参拝は秋篠宮ジュニアの初お伊勢参りでこれも何だか「確実なる一歩」に映る。TTP賛成が国民の過半数(日経)。世の中確実に気違ひな方向に。早晩に打合せあり時間も時間なのでパブで、と約束ありAustin Rd歩いてゐたら劉健威兄に邂逅。山林道の贔屓の日本食屋で夕餉と仰るので立ち話でお話したら晩に香港文化中心での香港映画祭大島渚『御法度』の会場で亦たばったり。この映画、何年か前に銀座三原橋のシネパトスで見たが大島渚亡くなり再看。新撰組衆道、近藤(崔)と土方(たけし)のホモフォビアで何が言ひたかつたのか……松田龍平演じる若く美しい侍がゐて、これが美貌を武器に新撰組のなかで、どう猛者たちをば手籠めにしてゆくか……ある面「世の中かう生きていきませう」的な処世術もあるやうで、所詮「美しくなければ」で耽美的。結局、大島渚って何? それにしても坂上二郎の演技は格別。続けて三浦しをん原作「舟を編む」(石井裕也監督)見る。『御法度』に続き松田龍平主演。相方は宮崎あおい。出版社辞書編集部舞台に、内容は三浦しをんの原作の書評ですつかり知つてはゐるが、まぁ脇を固める俳優がずらりと芸達者並びで皆さんお上手。八千草薫さまがすつかりお婆さま役だが、やつぱり素敵。あの声に痺れて。この辞書編集部の現場で思つたが、よく/\見てゐると実は大手出版社の総合職入社の正規編集者から所謂「女子」社員、派遣の契約社員、アルバイトまで仕事の内容はほゞ一緒。そりゃ正規の編集者には往往にて的確な判断、責任があるが、基本的に仕事の作業内容や知識など意外と同等なのを眺めてゐると、やはり毛澤東の着眼点、文化大革命の根本的な精神は正鵠を射てゐるのではないか、とすら思ふところあり。アタシも辞書好きで家のあちこちにかなりの辞書が並ぶが辞書一冊作るためのあの労力と、今の電子化の時代の言葉に対する安易さの反比例。言葉……大切にしてゆきませう。ふと十年前の香港映画祭思ひ出す。開幕上映が山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』は折からのSARS疫禍で山田監督来港取り止め。まだ「謎の伝染病」で「たそがれ」上映終はつた後、次の映画の上映待ちで外は豪雨と雷で映画評論S嬢と「これからどうなるのかしら?」と暗澹たる思ひで語つたこと。