富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

小選挙区導入はどこのバカ殿の仕業だ?

fookpaktsuen2012-12-16

農暦十一月四日。朝からZ嬢とMTRで大埔墟まで往きタクシーでKadoorie農場。毎年十二月恒例でKadoorie Brothers Memorial Raceも今年で18回目。距離は5.3kmでも標高差442mで毎年参加しても絶対に慣れないコース。今回は体重減だけに期待したが反比例して体力も軽減してゐて天気は雲多く気温摂氏26度で湿度86%と気温はこれまでも高い年もあったが湿度が不愉快。どうにか50数分で頂上まで登る。下りはいつも下山バスに乗らず、の樹木と畑、花々のなかを漫ろ歩き下る。農場の売店でミントの鉢植へなど購ひ路線バスで大埔市街へ。日曜の昼でとんでもない賑はひ。煲仔飯の新明發はいくら暑くても冬ならでは、で客が溢れ焼鵝の一楽も中環の兄弟店がミシュランで推奨されたりなんてしたもんだから大埔のこの分店もたいそう繁盛。大明里も清湯腩の群記は日曜は休みで、それでも厨房で明日からの仕込みしてゐるから立派、鹽局鶏が評判の東江鶏に相席でどうにか空席見つけ晝を飰す。大埔墟のMTR站に抜ける小高い丘越への道すがら悪名高き国民教育センター(写真左)眺める。かつての大埔官立小学校。尖沙咀東。九龍シャングリラホテル。昨晩ここの宴会場の椅子の上にストール置き忘れダンヒルのシルク製で正装用なので気がついた帰りのタクシーで慌てゝホテルに電話すると折り返し「見つかりました」と確認の電話あり、今日は恐縮の体で受取りに来たのだが暫く待たされたものゝちゃんと袋詰めされアイロン当てゝあったのには敬服。ジムのサウナに寄り帰宅。いつもより一時間早い大河ドラマ平清盛」見ながら豚肉と野菜を豆乳鍋で頬張り午後八時からNHKの開票速報特別番組眺める。自民党圧勝はすでに報じられてゐる通りで覚悟してゐたが投票率もかなり低い由。都新聞は今日の社説「衆院選投票日に考える 歴史に学ぶ「明日」を」で

尖閣諸島など領土問題で近隣国との緊張が高まり、打開の糸口すら見えません。最近の右傾化ムードは日本を覆う閉塞感の打破を狙った焦りとも受け取れます。大震災を機にもろもろの弱点や硬直した体質が一気に露呈し、政党政治が的確な対応能力を失っている状態です。今回の多党化選挙も政党政治の劣化現象の一端を映し出しています。だが歴史が教えるように政党政治を見捨てては、もっと悲劇的になるでしょう。四〇年、斎藤隆夫氏(民政党)の反軍演説を境に各政党が軍部の前に膝を折り、解党して大政翼賛会という全体主義に突っ走った苦い経験を再現してはなりません。過去を振り向けば将来の予測に役立つのと同様に、五年後、十年後、二十年後の日本に自らの身を置いてみて、いま日本が立つべき位置はどこかを冷徹に考えながら投票所に向かいましょう。

と書いてゐるが(こちら)、結果的には「どの政党も……」といふ政党政治への三行半か選挙史上に残る低い投票率。投票時間終了=開票速報始まるなり自民党200議席当選確実、なんて出ても驚かないやうに、と思ふのが関の山。我ながらなか/\達見は二〇〇九年八月三十日の日剰で、あの晩、日本中が政権交代と覇しゃぐなか

その歴史的敗北を目の当たりにして、それぢや自民党崩潰が嬉しいか、といふと複雑な気分。戦前の独逸でもワイマール体制の崩潰とか、日本では対米戦争開始での知識人の間での近代の超克観・感であるとか終戦での「新しい日本」の始まりとか、改革へ向けてのなにか祝祭的な開放感に包まれる社会が、実は悲劇的な結末への序章であつたりする(終戦での「新しい日本」は米国庇護の下、奇蹟的なやうにその体制がずつと続いてはゐるが)。

なんて書いてゐてゐる(こちら)。本当にこの三年余の民主党への政権交代が悲劇的な結末への序章になるやうな気配。高村薫女史の都新聞十三日社会時評

現行憲法が空気にようにあった戦後の六十五年の平和の終りや、その先に待っている日本外交の稚拙な姿を想像するだけで悪寒を禁じ得ない。どんな政権が誕生しても、金融への政治介入だけでこの国の直面する課題が解決を見ることはないと断言できるが、国のかたちのほうは、集団的自衛権の行使によって、あっと言う間に変わりえるのである。

と警笛を鳴らし浜矩子女史は

有象無象の中から、われわれは何をつかみ取るのか。目まいがするほど、恐ろしい選挙だ。何しろ百鬼夜行が相手なのであるから、われわれは命がけだ。食い殺されてはたっまらない。(略)鬼どもに主導権を握られるのは、やはりまずい。百鬼を生かすも殺すも、われわれの英知次第だ。これほど怖く、これほど気合が入る選挙はめったにない。

と指摘してゐたが(都新聞、九日「時代を読む」)気合いを入れたところで国民の多数が選んだのは百鬼。どぜう首相の党代表辞任記者会見でのスピーチ、一世一代、見事なもので感動。自民党で復活当選の小池まり子が「今回感じたことは自民党に対する圧倒的な支持……というのではなく民主党に対する」といふ当選コメントに笑ふ。かうなると公明党に兎に角、カルト右派政党としての自民党のブレーキ役になってもらふしかない。それにしてもカルト的右派か反原発&リベラルがそれぞれ2割、創価学会が1割で、あと1割の「前回は民主、今回は自民」で青島にも石原にも投票したことのある「節操なき人々」がゐて、この人たちがキャッチングボード握るのだから怖い。マスコミは盛んに民主党政権に「有権者が厳しい判断」といふが民主党をばあんなに浮かれて選んだ民草にも大きな責任がある。二大政党制による政権交代実現のための小選挙区制なんて謳はれたが今になってみると、自民党に食傷気味の国民が民主党選び、民主党がダメだとわかって自民党に戻ってはみたが「もし」これで自民党もダメだったときに已に壊滅的敗北の民主党にまさか国民がもう一度政権運営委ねるはずもなく、さうすると二大政党制なんて崩れ去るわけで本当にそこに残るのは維新のやうなファッショ政党くらゐ。ファッショ政党と「みんな」の如き新自由主義標榜したつもりの田舎政党が連立与党なんて時代もあり得るから。小選挙区制の導入なんて細川のバカ殿の政治遊びを支持した日本新党ブームも「美しい日本」をぼろ/\に破壊した小泉改革民主党のいはれなき政権交代も、結局はそんなものに騙され踊った民草にこそ責任があるわけで、民主主義といふのはそれくらゐ人々の責任大きいのだが、民度が低ければ低いほど、こんなわけのわからない「政治改革」で政治が改革されたつもりで、たゞ盲目的に深い海峡の奥底に沈んでいくばかり。さうならば、維新やみんな、民主党の有能な若手もみんな自民党に入ってしまって自民党の長期政権が理想的。ハト派からタカ派、各省に通じた政策通集団がいくつもあり……てな実質的一党体制の長期政権でも期待するくらゐしかないのかしら。フランシス福山先生の「世界の終わり」はやはり正しかったの加茂。安倍晋三のカルト的国粋主義だって力もないのに「反自民」で抗するより自民党内にアンチ晋三勢力が出来るほうが手っ取り早い。石原慎太郎は「有色人種で日本だけが近代国家」なんて馬鹿なことを宣ってゐるが、じつはそんな一党体制はシンガポールモデルであって、中共一党独裁と同じなわけでアジアは結局のところさうした体制がお似合ひ*1、西欧型民主主義や二大政党制とは違ふ世界なら、それでももういゝの加茂。

*1:韓国や台湾といった例外もあるが韓国は北朝鮮と、台湾は中共と対峙する、さういふ地政学的な側面が辛うじて疑似的に?政権交代可能な政治体制になってゐるといふ味方は如何かしら。