富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

党首討論@ニコ生

fookpaktsuen2012-11-29

農暦十月十六日。連日の雨模様で月も見えず。晩にドライカレー食べながらニコ生で衆院選挙前に各党党首討論眺める。本来、衆院選前の党首討論といへばNHKだったが……もと/\は安倍晋三がどぜうに提案のニコ生での民自対決だったが各党党首勢揃ひ。こゝまで第三極に焦点集り小党乱立では民自では意味がない鴨。維新と改革は予定通り欠席。当初、名前挙ってゐなかった未来の嘉田女史が放送開始後数分遅れて参加。これで未来のお披露目会になるかしら、といふところ。各党党首冒頭二分のスピーチで白眉はトップの新党日本の康夫ちゃん。二分ぴったり原稿も見ず早口だが明晰、理論だった内容を見事な構成で。そのスピーチ前の党首紹介でも康夫ちゃんは最後だったが他党首が「こんばんは」のなか一人だけ「ネットでご覧のみなさん」と呼びかけ、これがネット配信で康夫ちゃんの慣れ。どぜうが政権与党トップで首相の立場で予想以上に堂々。晋三は聲はいゝが口跡悪し。国防や「強い日本を!」除くと主張すべき点弱く「求心力に欠ける」と書き込まれてゐたが、その通り。公明党の山口氏は立派な人材、地元でも「学会でなければ」といふ創価学会嫌ひの人にはさういふ呟きがあるといふ。信心は個人のこと、べつに創価学会でもいゝとあたしは思ふのだが。で未来の嘉田女史、これが党首としての中央デビューの晴れ舞台……が「下手」の一言に尽きる。女性が、女性が、と大切だが連発はダメ。卒原発や市民に優しい社会といふ以外に何があるのか、は皆目見当もつかず。社会党躍進のときの土井たか子のやうな「あたしについてきなさい」的カリスマ性にも欠ける。これでは「やはり背後に誰かゐるのでは?」のお飾りか、と思はれてしまふ。唯一、沖縄に言及は共産党志位先生、理想論的には一番、真っ当(たゞ共産主義者が政権を握った場合の民主集中制は別だが)。ムネオの面白さについてはこゝで多言は要すまひ、テーペーペーって何か、と思ったらTPPのこと(笑)。TPP、消費税、原発に問題絞って論じられたが野党の矛先が与党、どぜう首相に向き、どぜうが賢明懸命に弁論するなか晋三は民主党攻撃に加担せず、の半ば黙り決め込みは大したもの。どうせ政権とるのだら、下手な失言は避け、民主党攻撃は個人商店に任せて……かしら。ニコ生なのでいろ/\書き込まれるが、最初は非難多かったどぜう首相に対して後半はけっこう「大したものだ」的コメント増。そのなかで書き込みでも最も評価高いのが康夫ちゃん。確かに言及する内容は的を得て理路騒然。保守リベラル。未来との連携の聲もあるなか頑なに拒み一人党である理由も今晩の討論見ていて何となく納得。この番組のなかで終始言葉少なは場に慣れてをらぬ嘉田女史だったが最後に1分間で一言、こゝでカリスマ性挽回か、と思ったら、のんびりした口調で何を語るか、と思へば小沢一郎と組んだことへの非難に対しての弁明で「私は小沢一郎さんという政治家を尊敬しています」と、そればかり繰り返しで話は半ば1分でチョン。なんだ、これは。ちなみに週刊文春は「反原発知事嘉田由紀子小沢一郎熟年離婚コンビ”の化けの皮」なんて見出しで嗤ってゐたが「由紀子と一郎」か。結果論だが未来は「出なければよかった」で、つまりこの番組を回避した「維新」に分が。未来がゐなければ維新は出てゐた鴨。石原が出ても他党と並ぶと、どうぜ「いかに異常か」際立たせるだけ、未来に新たな第三極の注目が集るなら、と判断したの鴨しれぬが嘉田女史の下手さ目立ったことで思はぬ利を得たことになる。それにしても新聞でもテレビでもなく、まさかニコ生で選挙が動く時代になるなんて……今晩百数十万人がこのニコ生視聴の由(迂生ニコ生はプレミアム会員なので中断することもなく優先で視聴出来た)。この討論会は90分でスポン、と終はってしまひ神保&宮台のビデオニュース・ドッココムで本間龍氏(元博報堂、著述業)ゲストに迎へた「電通支配はこうして原発報道を歪めてきた」見る。原発報道を歪めた、のは事実でも代理店としてスポンサー不利を回避するため、で世の中と政権が「反原発」になったらさっさとそれをネタに商売できるのが電通、と。確かに。欧米では広告業は一業主一社でベンツの広告代理店がAならアウディは普通、別のエージェント使ふのだが日本では電通トヨタも日産も扱ふといふ摩訶不思議。この寡占は問題にされず本間氏が『電通原発報道』といふ本を出してもマスコミもこれを取り上げず。どの党が政権握ろうが、原発が再稼働されようが廃止になろうが、如何なる状況でも新聞や出版はまだしもテレビはほゞ電通が牛耳り巨大な利益あげる。そんな電通にとっても(博報堂も一緒だが)一番の脅威はネット。ニコ生だって本来なら衆院選挙の全党党首対談なんてテレビで放映されるイベントがこんないゝ加減な媒体にとられてしまひ「広告費が発生しない」のだから本来、衆院選前の党首討論といへばNHKだったが……。で、国内の市場はもはや寡占でしかも広告代理店の存在価値じたい下落は避けられず、で唯一の道が海外の広告会社積極的に買収しながら、の海外進出。新興市場ではまだ活路見出だせるかもしれぬが欧米など大手の広告会社あり一業主一社が当たり前のなかに「日本の電通」が出て行って、そんなに利益がころがってゐるか、と番組で嗤われてゐる態。日本のメーカーが軒並み市場競争力落とすやうに、日本の政治が誰からも期待されないやうに、この電通といふ「日本型システム」も遠からず、の未来にダメになるのでせう。家電メーカー以上に電通がなくなっても世の中、誰も困らないのだが……。やうやく文藝春秋十二月号読了。対中問題取り上げる雑誌が特集のタイトルのみ意気がって、まるで戦争気分だが中身は意外と地味で大したことない(笑)と古市憲寿君だったか高橋源一郎さんか指摘してゐたが、この文藝春秋も「大特集 日本人と中国人「宿命の対決」」なんて宣ふわりには内容はショボすぎ。「大平正芳「的中した予言」」と題した森田一(大平の娘婿)と中島嶺雄の対談が少し面白かった程度。連載「この人の月間日記」がナベツネで、旧制高校や東大新人会など同窓会するとさすがに物故者多くなりナベツネ本人も篠山紀信に撮影してもらったポートレートの一枚を遺影に選ぶ、なんてことしてはゐるが、あと三十年くらゐ、まだ/\暗躍続けるのだらう、間違ひなく。
▼金澤のH君曰く、然る高名な憲法学者から聞いたネタださうだがが、このリベラルな憲法先生が「安倍政権の成立と憲法改正案の国民投票を期待」と。晋三ならではの「途方もなく幼稚で時代錯誤で世界から嘲笑を受けるやうな改正案」なら国民投票での否決も期待可。さうなれば当分のあひだ憲法改正が現実的な政治課題となることはなくなり事実上「改憲にトドメが刺せる」といふもの。確かに晋三よりももっと洗練されてスマートな改憲案が出てくるより、いま出てゐるやうな素っ頓狂な案で勝負してくれゝば護憲派に勝ち目もまだある鴨。H君がその先生に「それにしても現代の有権者民度にそこまで期待してよいものか?」と問へば先生曰く「時間がたてば戦争体験者も死に絶へ、さらに民度は下がる。勝負するなら早いほうがよい」と。なるほど。

文藝春秋 2012年 12月号 [雑誌]

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