富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

「放開 放鬆 鬆懈」なツィメルマン

fookpaktsuen2012-11-20

農暦十月初七。まだ軽い流感。先日「お酒ちゃん」といふあだ名のK嬢が一応、日本に残った旦那と電話でお互い、今週は何日NADがあった?と確認しあって、せめて週1はNADに、と。Non Alchol Dayの略。あたしもNADはかなり少ない、と自戒して流感なので今晩はNADに。すると今度は目が冴へて眠れず。
▼拾遺録① 英国植民地時代に建造された萬宜ダムの記念碑から香港政庁のエムブレムがなくなる椿事あり(蘋果日報)。これも歴史の改竄か。香港政府の担当部署はエムブレムの石材が劣化したので手直ししただけ、と弁明。
▼拾遺録② 中共の十八大も終はり、ふと思ひだしたが董建華が九月、CNNに出演し「胡錦濤国家主席就任後も暫くは軍トップに残留」といふ「国家機密」暴露してみせたが富柏村日乗九月二十日、またもガセネタ。行政長官時代に香港で公共住宅建設の「八萬五」計画は「実な計画は無くなってゐた」とアトになって言ひ訳したり幻の「中薬港」だの本当にガセネタの多い老人なり。
▼拾遺録③ マカオ空港の空港運営会社の年間収益が34億パタカ(350億円)で前年度より13.3%の伸び。発着や注機料などの空港としての純粋収益のほか免税店や商店の賃貸料が上昇の由。
▼今月七日は澳門で桑港交響楽団の演奏会に往き香港で当日あったクリスチャン=ツィメルマン(Krystian Zimerman)のドビッシー尽くし(だったはず)のリサイタル聞き逃したり。あたし的には「ツィメルマンはドビッシーのニンぢゃないだらう」と自分を諦め、前回の2010年6月富柏村日剩の同氏のショパンづくしも一寸、満足出来ず、未だに2006年7月富柏村日剩の、あのラヴェルのワルツ8曲と中入り後のショパンソナタを思ひ返すばかり。昨日の信報の音楽評(劉偉霖)が「放開 放鬆 鬆懈」と題して、かなり辛辣に述べてゐる。日本での十二月までの11カ所に及ぶツアーが始まったばかりで余りこれを語ることも憚られるところだが、今回はドビッシー生誕150年でドビッシーづくしのはずが八月だかにドビッシーは前半だけ、で後半にはシマノフスキ前奏曲ブラームスソナタ第2番と変更告げられ「なんだ、それ?」と思ったが(だいたいドビッシーのアトに島の不好きとブラームスは無しだらう)。ツィメルマンはつねに寡黙で、いろ/\なことに悩み自分がどうすべきか自問自答の日々のピアニスト、今回もいろ/\なことを考へながら、のツアーなのだらう。だから「そっとしておいてあげたい」気もするが、これほどの巨匠となると、やはりさうは言ってゐられない。劉偉霖も2006年の香港でのリサイタルを彷彿しており、やはり、と納得。できればツィメルマン師には、2006年の日本ツアーで日本の海外派兵に反対の意を「日本語で」表明し「良心を守る日本の友のために」と前置きしてのショ パンの葬送ソナタを演奏、それも超弩級の名演だったと聞き及ぶが今回もできれば「政治も経済もどん底で喘ぐ日本の良心ある友のために」と素敵な曲を何か披露してはくれないのかしら。