富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

1999年以来の台風警報10

fookpaktsuen2012-07-24

農暦六月五日。夜明けに目ざめると暴風多少治まつたが雨強し。半夜三更に台風警報は最高警備の10号となり未明に8に下がる。10号警報は1999年のヨーク台風以来の由。朝から午前10時過ぎには警報3にと予告あり待機。ちらほらと出勤始まり午前10時からは公共交通機関が一部、樹木で道路が塞がれ運行不可の路線バス除き全面的に通勤繁忙期並みに運行始め通勤ラッシュに備へ天気は不安定ながら昼からはほぼ街は平常通りに。なんて良くできたシステムであるし市民の台風など悪天候への慣れなのかしら。お見事。たゞMTRは終電近く東鉄路線で運行乱れ倒木が線路に横たわり電力供給も途切れ乗客が列車内で一夜を過ごすことになつた由。写真(左)は広東省で自動車の浸水防ぐ智慧(笑)。午前11時過ぎに官邸へ。晩に歴史博物館で明日開幕の特別展「一統天下:秦始皇帝的永恆國度」の開幕式あり副館長W君より招待いたゞいたが、この台風で昨夕からの仕事の段取り狂い開幕式に参加能はず。個人的には時節柄この展覧が、どうも国民(愛国)教育路線の一つに思へてならず。偉大なる国を作つた始皇帝から中国の偉大さを学ぶ、と。日本の場合、靖国や権田原を除けば神武天皇の功徳だの卑弥呼聖徳太子だのが愛国教育教材にならぬだけまだマシかしら。
▼編集者の椎根和さん週刊読書人に続く連載(銀座を変えた雑誌 Hanako! )から。

この大喪の礼と同じ頃、パリのシャネル本店には、日本人買い物客入店お断りと書いてある紙が店頭に貼り出されたと日本の新聞に報じられた。当時、急激な円高のせいで、外国では日本とりもはるかに安く買える、という快感を、若い女性たちは知りはじめていた。そこに目をつけた日本の小売業者たちが、その店に置いてある商品全部買いとってこい、その総代金も払うし、もちろん謝礼もはじむといって現金を渡していた。彼女たちも最初は商品選びに快感を感じながらやっていたが、そのうち面倒になり、あの棚の端から端まで全部、頂戴と怒鳴りつけるようになり、現地の店員たちをこまらせていた。それは日本女性特有の“棚買い”で話題になっていた。そのリポートを受けとった本店では、いくらお金を払ってもらえるといっても、マナー、店の品位の点で容認できるものではなかったのだろう。それで日本人客、おことわりと書いた紙が貼りだされたのだろうと椎根は推測した。

と昭和の終はり頃、バブル終焉間近の日本。もう四半世紀も前のことだが今ではこの下品さの勢ひが中国。香港でも本当にプラダだのチャーチの靴の箱を背の高さほど積み上げる客、特定の何が欲しいわけぢゃないのだが、どうやら物品に変へないといけない資産、現金があるらしき客が、ただ現金使ふべく品定めの「つまならさうな」表情を垣間見ること少なからず。椎根氏は続けて「シャネル社でも、他の有名ブランド店でもお客が、商品を受け取るまでの、儀式のような手続きを重視し、それが客に対しての敬意のあらわれのひとつだと考えているふしがあった」と書いてゐるが「ふし」どころかその通りで、さういふ店に忌み嫌はれる日本人客の誕生にHanako!も加担してゐたのだから椎根氏の立場も微妙だが、こんな「お客が、商品を受け取るまでの、儀式のやうな手続き」や店員との談義など今どこで期待できるかしら。少なくても香港のブランド店では絶対に不可。アタシにとつては銀座ならまだタニザワだのトラヤだの宮脇があるが、香港では行きつけのシャツ仕立て屋くらゐ。
▼台風の影響で外交相手の段取りつかず開店休業で呆了半天に近く、ふと十年前の日記(http://fookpaktsuen.tripod.com/diary/july2002.html)読み返す。我ながら結構面白いと思ふのは関心もつことが同じだからで自分が書いてゐるのだから当然だが当時の方が今のアタシより世の中の様々な事象にずっと関心深きこと。今ではもう「だうでもいゝ」と思ふこと多し。そのなかでこんなのを見つける。
香港返還五周年を記念してアグネスチャンが平尾正晃とデュエットで「香港国際機場」(と中文紙は報じていたが正式な邦題は知らず)発表。あんな空港舞台にどんなムード歌謡が歌えるのか、と疑問に思い即興で「香港国際機場」作詞してみる。

あなたに会いたく吹きすさぶ冷房に凍えて待つのよ三時間
武漢を発ってもう五時間 それでもあなたはまだ着かず
ああ やっぱりあなたは消えたのかしら
ああ ここは香港国際空港

待つのに疲れて出発ロビーさまよいあなたを待ってます
フィリピン人のアマさんの荷物多くて長蛇の列
ああ これは旅客機 貨物便じゃなはずなのに
ああ ここは香港国際空港

あなたが好きなセーラムライト 吸って待ちます南方航空
フライト疲れのスッチーがぼんやり煙を眺めてる
ああ 煙に咽ぶ喫煙室 あたしの悲しみ壁のヤニ
ああ ここは香港国際空港

F4、ニコラス、劉徳華、芸能人の追いかけばかり
あたしを待ってる人なんてそうよ誰もいりゃしない
ああ 一人寂しくバスに乗るあたしの顔がガラスに映る
ああ ここは香港国際空港