富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

李勝素の「貴妃酔酒」と于魁智の「打金磚」

fookpaktsuen2012-07-20

農暦六月初二。早晩、某所にて暑気払ひの筵席*1あり末席を汚す。屋外ゆゑ暑いのなんの。宴会の途中で失礼して尖沙咀。文化中心。国家京劇院の三日続きの公演初日。李勝素の「貴妃酔酒」と于魁智の「打金磚」といふ好事家にとつては垂涎の役者と演目が今晩。李勝素の「貴妃酔酒」*2も楽しみだつたが疲労と筵席の暑気で熱中症気味で座席に坐つてゐたからいゝが貧血のやうで発汗著しく強烈な睡魔に襲はれ半分くらゐ見てをらず。残念。この李勝素と于魁智が当世、京劇をどれほど代表する役者か、は他言を要すまひ。がそれにしても中入り後の迂生初見、于魁智の「打金磚」*3には驚き。この「打金磚」、李少春(1919〜1975)の当たり狂言でさう誰彼とそれを襲へず。百聞は一見にしかず、で映像に頼るが下記の映像は1991年で20年も前のもの。これを今、一切手を抜かず演じ切る于魁智は51歳である。ご立派。さすがに多少老けて、もと/\小柄だが少し小さくは見える。だがエノケンと同じで軽い体躯だからこそ。知的な美貌、声好し、歌好きで「集唱、唸、做、舞、翻、跌、撲、摔於一身」と完ぺきな俳優がまさにこの于魁智。まさに舞台を拝むとはこのこと、で舞台跳ねると客席総立ちでやんや/\の喝采歇まず。本当にいゝ舞台を見せていたゞいた。余談だが右の写真の老人はZ嬢とアタシが「マエストロ」と呼ぶ「オペラ座の怪人」ならぬ「文化中心の老人」。大抵のクラシック音楽の演奏会では最前列で熱心にお聴きになるが京劇もお好きのやうで今晩も邂逅。いつも涼しげで冷気嫌ひカーディガンにマフラーするアタシのほうが恥ずかしい。
▼本日、三菱東京UFJ銀行香港支店(正確には東京銀行)開設60周年の祝賀会あり。



*1:敷物→座席、転じて「宴席」の意。仕出しで料理屋が宴会の場所にて即席にて料理供す。

*2:梅派經典劇目之一,全劇以四平調為主腔,旋律委婉纏綿,用以演繹楊貴妃複雜的情感恰如其分,李勝素嗓音悦耳,身段優雅流暢,其中銜杯、卧鱼、醉步、扇舞等難度高的身段,演來優雅自然,盡顯梅派風韻。唐玄宗寵妃楊玉環在御花園設下酒宴,等候玄宗散朝後前來一同歡飲,不料玄宗轉駕到梅妃宮中。楊貴妃聞訊大爲慍怨,倍感失落,於是縱酒自遣憂懷,以至醉意漸深。

*3:著名京劇藝術家李少春傳世之作,集唱、唸、做、文、武、翻、撲於一身,不僅唱腔優美,更有多個難度甚高的翻撲技巧,展現高水平的京劇傳統唱做功架。于魁智憑此劇榮獲第七屆中國戲劇梅花獎。東漢光武帝劉秀在位時,銚期之子銚剛將郭妃之父郭榮殺死。劉秀將銚剛發配,郭妃不憤,以落杯之計陷害銚期。劉秀酒醉將銚期等一班老臣盡皆斬首。忠臣馬武大鬧宮廷,持金磚迫擊劉秀,劉秀閉宮不出,馬武氣憤之下引磚觸首自盡。劉秀酒醒,內心後悔不已,仗劍將郭妃刺死,獨去太廟向先靈懺悔,在神智昏亂下,終撲跌而死。