富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

汗水たらして誠実に働く国民を作る

fookpaktsuen2012-06-23

農暦五月初五。端午節。所用あり深圳端午節で中国は三連休の由。深圳火車站に人多し。深圳站から和諧号発車するのと同時に香港→広州の直行列車が横を通り抜けていく。アタシはてつきり和諧号と直行列車は深圳站を出ると同じ軌道を走ると思つてゐた。晩に香港に戻り端午節なので粽を飰す。鏞記のもの。ずいぶんと小ぶりになつたし具も少なくなつた。これで十分なのだが。文藝春秋七月号読む。お迎え」だの「死の床で……」だの「胃のう」なんて記事が並び高齢読者記事で食傷気味のなか中野剛志&与那覇潤「橋下徹市長と中国化する日本」が小気味好い。日本と中国の歴史をばかういふふうに分析する若い研究者の慧眼。与那覇先生の「日本の中国化」は『中国化する日本』(文藝春秋)にあるのでこゝに写さぬが、グローバリズムは「経済的な自由と政治的不自由がセットになり平等という名の下に画一的な価値観を押しつけられる」(中野)もので(まさに日本もシンガポールも中国も!一緒なのだが)「現在は産業資本主義以前の重商主義時代に近いというか、ひたすら世界大で「安さ」だけを競い合う状態になって賃金コスト増に見合うだけの分配の原資を誰も取れなくなってきている」(与那覇)21世紀型貧困の時代。「小泉純一郎さんを支えたのも「強権的な統治者による既得利益の引き剥がしと保護されてきた人々の市場競争への蹴落とし」という中国的な手法に「江戸化がダメなら仕方ない」と捨て鉢的で期待した民意」(与那覇)で橋下もさうなのだが小泉の新自由主義など似非なのは「保守思想というものは国体なり民意なりが変わっていくことを知っているし(←中野先生はここで会沢正志斎の「國體」に言及)過去には戻れないことも知っている。ただその流れを維持せずに新たなものを一から作ろうとするととんでもないことになりますよ、と言っている」(中野)と指摘。なるほどねぇ、と両先生の本が手許にあるが未読のアタシは感嘆。
▼七月朔日に香港特区第三代行政長官就任の測量梁が測量師でありながら山頂の自宅豪邸に違法建築部分あり。マスコミ飛びつく格好の話題だが測量梁に近き(かつての香港代表する高級紙)明報が事前に測量梁に媚つて事前調整で一昨日この不法建築をば特ダネ扱ひ。但し明報の質疑に対し已に測量梁はこの不法建築認め早速その部分をば取壊し、とマッチポンプ報道(左上記事)。昨日の信報が「明報總編提早向候特辦溫馨提示」と明報のこの報道をば非難。で今日の蘋果日報デカ/\と揶揄。数ヶ月前の行政長官選挙で唐紅酒が豪宅違法建築疑惑に陥つた際に北京中央は測量梁に対して梁邸にこの問題ありや無しやと問ひ測量士たる梁は「ない」と返答してた上でのこの醜聞。
▼健全さほどアタシが怖いものはない。それと何でも今が一番悪い、といふ人。政治家か外交官でもないのに日本のことを「わが国」といふ人もアタシは生理的に嫌悪。

ギャンブルがこれほど日本にはびこったのは戦後です。わが国最初の賭博に対する禁止令が(西暦)745年、奈良の大仏ができた三年後でした。その後の歴史を振り返っても、今ほど国のギャンブルに対する取り締まり、考え方が無策な時代はありません。ギャンブリング行為はアヘンやコカイン同様、簡単に嗜癖に陥り、個人や社会を蝕むということを、わが国の為政者は古くから見抜いていた。ところが今の日本にはパチンコ以外に競馬や競艇など公営ギャンブルが六つもあり、野放し状態です。そのうえカジノとは。経済効果だけを追い求めて国が腐っていく。汗水たらして誠実に働く国民を作るのが政治の本来の仕事なのに、それがいかに経済よりも大事なことかわかっていないのです」

と作家でギャンブル依存に詳しいそうだ、精神科医・帚木蓬生先生(岩波『世界』六月号)。「汗水たらして誠実に働く国民を作るのが政治の本来の仕事!とは……アタシはそんな怖い国家よりギャンブル野放しのほうがまだマシ。

文藝春秋 2012年 07月号 [雑誌]

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