富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

伊東豊雄師のトーク拝聴

fookpaktsuen2012-04-20

農暦三月三十日。地場系の茶餐庁ファーストフード大手・大家樂の燒鵝飯が値上げでHK$50に、鏞記酒家のテイクアウトよりHK$12高、と蘋果日報が特ダネで一面トップ(笑)。さらに今日は続報でミシュランで★の添好運の老闆に、この大家樂、鏞記と中環でやはり燒鵝が地味に評判の一樂、その三軒のを目隠しで試食させ評価は、で大家樂がトップ、と(笑)。本日も大雨。昼前には真っ暗で自動車が走行燈つけて走るほど。午後遅く湾仔の芸術中心。HK Design YearのMaster Talksで建築家の伊東豊雄氏招き作品を見せながらの発表。伊東豊雄はアタシの好きな建築家の一人で、この方の殊に図書館の建築は素敵。アタシが最近ちょっと関わるプロジェクトで香港の建築家とのディスカッションのなかでもアタシの頭には伊東豊雄からのイメージがかなりあつたし、それを香港の建築家J氏が見事に咀嚼してくれたが、偶然にもその伊東師が来港とのことで今日のトーク拝聴。建築家がデベロッパーや土建政治のためでなく、住民のため、モダニズムで破壊された集落の集ひの場の再生といつたものが三一一震災のあと、やはり考えさせられ建築家は社会のために何が出来るのか、と伊東師。自然の中でなら人間は野原や木陰や自然に自分の居場所をもてるが都市の建築空間で建物は人に居場所を強制しがちで、それに抗して建物のなかでも自由に居場所を決められるやうなものを目指したい、と。但し我々はすでに自然の中の人でなく情報で鍛えられた身体であり、その身体に応えるだけの建物の環境が要求される、といつたお話。またNHKで一月だつたか「希望の街のデザイン」と題して放映された伊東師が釜石の復興計画にどう関わるか、神戸の復興計画での反省、行政主導で堤防だけ高くして海の見えない沿岸の町があるのか、堤防より緑の山のやうな高台を築き、いつもそこで町の人々が海と町を見渡し、つぎに津波が来たときはどこに逃げるのが安全なのか、をみわたせるやうな、さういふ考え方が必要なのだ、と。示唆されること多し。モダニズムの否定というとポストモダンになりがちだが<個>があつてその個を超える集団社会の、それをさらに包むやうな個が活きる社会空間……ほとんど禅問答だけど大切なこと。ところで紹介(中文)に「代謝派」とあり何だ?と思ったら「メタボリスト」。確かに何も間違っていないが「代謝派」はなかなか妙。トーク終はつて鳴り止まぬ拍手。約二百人の聴衆が伊東師に敬意表すばかり。